朝鮮人労働者募集要綱

分類コード:I-02-01-003

発表年:1939年

 

朝鮮人労働者内地移住に関する方針で示された朝鮮人労務者の募集について、内地事業主に対して募集の際に申請、告知すべき条項、渡航の手順、渡航後の措置を規定している。内容としては朝鮮人労働者募集並渡航取扱要綱とほぼ同じ。

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(三)朝鮮人労働者募集要綱(内地側)

第一 方針

 朝鮮人労働者を募集に依り朝鮮より内地に移住せしめて使用する事業は時局産業(労務動員実施計画に依る産業を謂ふ)に限るものとし其の取扱は凡そ本要綱に依るものとす。

第二 申請

 一、朝鮮より労働者を募集雇入せんとする雇傭主は左記事項を記載したる朝鮮人労働者募集雇入願正副五通を就業地を管轄する職業紹介所を経由して地方長官に提出するものとす。

(一)募集せんとする者の本籍・住所・氏名・年齢、法人なるときは、其の名簿。主たる事務所の所在地及理事其の他の法人の業務を執行する役員の氏名。

(二)朝鮮人労働者を募集せんとする理由(事業の繁忙の事情、労働者の不足状況其の対策として探りたる方法 内地労働者を募集し所期の目的を達成せざりし事情等の詳細)

(三)移住労働者の従事すべき事業の種類並に事業場の所在地方及名簿

(四)移住労働者の従事すべき事業に現に従事する従業者数(性別及内地人・朝鮮人別)

(五)移住労働者の従事すべき作業の内容

(六)移住労働者の数(独身者家族特別希望数)

(七)朝鮮に於ける募集区域及募集期間並に募集方法

(八)引率及保護方法

(九)移住労働者の就業時間・休憩時間・休日及夜間作業に関する事項

(十)賃金其の他の給与及其の支給方法並に賄科・入浴料・寝具其の他日常生活に要する費用の負担方法

(十一)制裁の定あるときは之に関する事項

(十二)住宅及訓練所設備の状況

(十三)福利施設及輔導方法

(十四)雇傭期間及解雇に関する事項並に帰郷旅費の負担方法

(十五)負傷・疾病又は死亡の場合に於ける扶助救済の方法並に父母兄其の他の者の往復に要する旅費の負担方法

二、前項願書を受理したる職業紹介所は其の内容を審査し関係警察署に副本一通を送付して協議し支障なしと認め且つ内地労働者を以て要員を充足すること困難なりと認むるときは副申一通を附して正副三通を庁府県に進達するものとす。

三、庁府県に於ては外務部に於て労務需給調整及協和事業の見地より警察部に於て保安の見地より夫々之を審査し支障なしと認むるときは厚生省に稟議したる上募集雇人を承認するものとし同時に朝鮮総督府に対し願書副本一通を添附して其の旨通報するものとす。

四、地方長官必要ありと認むるときは移住朝鮮人の保護の為所定の誓書を徴し又は必要なる金額を雇用主をして供託せしむることを得るものとす。

第三 渡航

一、募集に依る移住朝鮮人労働者思想堅実・身元確実・身体頑健にして成る可く国語を解し且朝鮮の居住岫を管轄する警察署長に於て内地渡航支障なしと認定したる者に限るものとす。

二、渡航に付ては集団的に之を行はしめ。必ず雇用主又は其の責任ある代理者をして引率せしむるものとし且移住すべき朝鮮人の居住地より就業地までの渡航の費用は雇傭主をして負担せしむるものとす。

三、雇傭主又は引率者は乗船地所轄警察署長に朝鮮総督府令労働者募集取締規則に依る応募者名簿を提示し渡航の査証を受くるものとす。

四、雇用主又は引率者は予め移住朝鮮人名簿を下船地及就業地を管轄する各警察署長・職業紹介所長及関係協和事業団体に夫々提出し置くものとす。

五、内地下船地及就業地を管轄する警察署及職業紹介所は朝鮮に於ける乗船地を管轄する警察署と渡航に関し十分の連絡を採るものとす。

六、内地下船地及就業地を管轄する警察署、職業紹介所及関係協和事業団体は密接なる連絡を探り移住に関し必要なる保護方法を講ずるものとす。

第四 到着後の措置

一、移住朝鮮人就業地に到着したるときは雇傭主は速に其の就業地を管轄する警察署長・職業紹介所長及関係協和事業団体に移住労働者の本籍・氏名・年齢並に其の家族の氏名・続柄及年齢を報告するものとす。

二、移住朝鮮人に付ては雇傭主は其の就業地を管轄する警察署・職業紹介所及関係協和事業団体の指示に従ひ特に作業指導・訓練・生活輔導、其の他の保護方法を講ずるものとす。

三、雇傭主は移住朝鮮人の移動、重大なる負傷・疾病又は死亡等の事実に付其の事情を即刻就業地を管轄する警察暑長・職業紹介所長及関係協和事業団体に報告するものとし解雇に付ては警察署長の承認を要するものとす。

四、雇用主恚は毎月末現在を以て移住朝鮮人の労働状況・賃金の状態・生活状況を地方長官に報告するものとす。

五、移住朝鮮人に対しては関係協和事団体より直に会員章を交付し常時之を携帯せしむるものとす。

 会員章記載事項及交付手帳に付ては別に関係協和事業団体に於て之を定むるものとす。

六、雇傭主関係官憲の指示する所に違背したるときは事情に依り爾今朝鮮人労働者の新規募集を認めざることを得るものとす。