釜山日報(昭和8年3月15日付)惡鬼の如き海上ギヤング
密航船舶の運営者たちが密航者から金品所持品を強奪したため、密航者は密航の容疑者であり強盗監禁事件の被害者でもあるという事件。密航者の募集、斡旋した側の関与は不明。
吉母は下関市の西部、響灘に面した場所で漁港がある。記事中に「吉母海岸に寄港後一同を上陸させ」とあるので、身ぐるみ剥いだあと、遠浅の砂浜、海に放り出したのではなく、港湾施設に接岸して下ろしたのであろう。契約通り密航自体は遂行しているが、午後二時の上陸であり、船賃ももらったし金品所持品も巻き上げたし、もう密航者が発見されようが知ったことではない、という「急ぎ働き」のような刹那的な姿勢が見える。
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- 釜山日報
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密航者を乾干とし所持品全部を强奪散々の目に遭った蔚山の鮮人
【下闗電報】
下闗市外吉母海岸に十一日午後二時、密航上陸した鮮人朴時奎等二十三名は目下處下闗署に留致中であるが、彼等の密航の經路に就て同署が調取中。端なくも、該密航者二十三名を乘船せしめた右發動船の船長、機闗長、乘組員等四名が團結して、九日夜釜山出帆後吉母海岸に寄港するまで乘船者二十三名に實に善後三回に亘ってギャングを働いた事判明。目下、慶南警察部と連絡して巖重右發動船の行方を厳探中である が、聞く處に依れば、被害者一同は慶南蔚山郡の山奥育ちの質朴な農民であるが、彼等は惡周旋人から内地の華な生活狀態を聞かされて、家財道具一切を賣り拂って内地に渡航を企て、九日夜前記二十頓前後餘の發動船に釜山から乘船したが、乘組員等は彼等が乘船するや僅に三畳餘の眞暗な室に押し込んだのみが、密航三日間さらに湯水を與へず全くひぼしにした上、所持品一切を剥奪せん爲め、玄海の荒浪の上で船員の要求に應じなければ船を沈没させてしまふと、前後三回に亘って威圧して所持品一切を奪った上、吉母海岸に寄港後一同を上陸させ、其まゝ行方をくらましたものであ る。
