在京朝鮮人労務者の現状

発行年:1929年

東京府学務部社会課

 昭和4(1929)年、東京府学務部社会課が編集発行した、東京府下に於ける朝鮮人労働者の実態などについての調査報告。第一次世界大戦後の戦後恐慌の続いていた昭和初期には、安価な賃金と劣悪な環境で労働、生活していた内地在留朝鮮人にも日本人にも失業問題が起き、また抑制されていた内地への渡航を企てる朝鮮人も増加し、社会的に大きな問題となっていた。そして、大阪府社会課のようにこれらの社会問題の解決改善のための調査報告、当時の言葉でいうところの「社会学」が隆聖を迎えた時期であった。本報告もその例に漏れず東京府の出したものであり、労働状況だけでなく、生活の実態や、内地渡航の沿革などについても調査しており、この時期の内地に於ける朝鮮人労働者について見るうえで重要な史料となっている。

 

著作者:
東京府学務部社会課
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在京朝鮮人労働者の現状

 

序言

 日韓併合後吾々は国民的任務として、誠心誠意朝鮮の同胞と共存共栄の実を納むべく最善の努力を払つて来た。けれども、産業上の問題や、経済上の関係が歴史的に、更に区域的に相異し、又人情風俗をも異にするところから、併合二十星霜を経たる今日に至るまで、未だその生活状態が同一レベルに達することが出来なかつた。之は吾々の等しく遺憾に感ずるところではあるが、また止むを得ない事柄である。

 斯様に両者の経済的生活標準が同一ならざる以上、朝鮮に於ける無産労働者が、漸次内地の労働市場に向つて渡航を企てるやうになるのは、自然の趨勢であり、従つてその間に種々困難なる社会問題が醸成せられるのも亦已むを得ない。現在吾々は各方面に於て該問題のために数多き悩みを感じてゐるのである。

しかし経済生活に於て、より高き階梯へ進まんとするのは人間欲望の自然であり、より有利なる条件の下に労働に従事せむとするのは何人も望む所である。之は恰も水の低きに着くのと同じ理法であらう。けれども、朝鮮人労働者が斯く無制限に内地に渡航を企て、その結果内地に於ける労働市場を攪乱するのみならず、一般社会まで問題を波及することは社会共同生活の理想からしても、また社会平和保持の上からしても、決して等閑に附すべき事柄ではない。即ち、朝鮮人労働者は、労働賃銀が内地人労働者に比し低廉なるため、労力需要者の歓迎する処となり、之がため内地人労働者の失業率を高め、且つ、無制限に渡航を企てたる結果に依り、彼等自らの中に於ても労働問題が発生するであらうと予想せられ、現在已にこの傾向が事実として現はれてゐるのである。

斯る問題を事前に防止し、一方その激化を防がんため、現在当局は可成渡航者を制限し、朝鮮本土内に職業を斡旋しつゝある状態であるが、この対策は一面国内旅行の自由を拘束するが如くに思はれ、彼等の不平と、不満を誘致せずにはをかないやうである。即ち、内地渡航を企てる朝鮮人労働者の大部分は、赤貧の無産階級に属する人々で、飢へと、寒さとを目前に控えへてゐる。而して、彼等が住み馴れた郷里を離れ、無けなしの金を持つて釜山港の埠頭に集中する理由たるや、より良き生活と、住みよき地を希望し、憧憬する人々の群であることが明かである。然るに、国内旅行の自由を拘束され、その目的を阻止されたる場合、彼等はこの差別待遇を潔しとせず、民族的感情の激発を、誘致せずには居られないやうに見受けられるのである。

 朝鮮人労働者内地移住の事実が、如何なる動機と、事情に依るものであるかは、他の機会に於て之を明にせんとするものであるが、目下の状勢たるや、之を国家的に観ても、社会的に観ても、我が国内政問題乃至社会問題の一つとして、決して等閑に附すべき事柄でなきことは明である。従つて、該問題の発生の責任及びその解決の担当者は、彼等自身ではなく、実に吾々の共同的任務であることを自覚せねばならないと思ふものである。即ち、現今彼等が中心となり、彼等が原因となつて、発生する処の数々の社会的諸問題の責任は、彼等自身の力に依りて解決を望むより、むしろ吾々と共同的努力に依つて、之が解決を待たなければならないと思ふのである。

 吾々は、該問題のために過去に於て数々の失敗と、苦き経験を持ち、更に将来に於ても多くの難問題が予想されるのである。けれども、吾々は絶望を感ずるものではなく、むしろ之等の尊き経験を土台とし、一致共力して該問題の解決のために邁進せねばならぬ。これこそ日韓併合の大精神を現実する吾々の任務であり、東洋平和のために是非共必要な事である。

 吾々は、朝鮮人労働者が、労働者としてまた国民として、あらゆる場合生活上の機会を均等にし、働く権利をより以上に伸張し、以て彼等の実力を益々発揮せしむることに努めなければならないと思ふものである。このことは単に、彼等自身のみにとつての幸福であるばかりではなく、むしろ国家自体の平和を期する唯一の途である。

 吾々は、斯る抱負と、反省と、自覚とを以て将来殊に多難を予想される該問題に接することが最も

肝要であらう。

 

 

第一章 朝鮮人労働者の調査に就て

 

一、調査の目的

 輓近朝鮮人労働者の内地移住は、年々急激の勢を以て増加し、大都市は勿論如何なる山間僻地に於ても彼等の姿を見るのである。従つて、之がために数々の社会問題を惹起し、特に近時に於ける彼等の失業問題、住居の問題等は憂慮せざるを得ない大問題と化してゐるのである。殊に、我が国の政治的中心地であり経済、文化、思想の発源地である我が東京府管下に於ては、近来著るしく彼等の来住する処となり、失業問題其他に於て特に注意せねばならないほど、多くの社会問題を惹起してゐる。この状勢に鑑み府下に於ける朝鮮人労働者の分布状態、生活並生計、住居、雇傭関係、失業問題の諸状態を調査し、一般の参考に供せんとするのが本調査の目的である。

 

二、調査の経過

           1 調査の範囲

 本調査は東京府下在住の朝鮮人労働者に就て調査したるものであるが、他府県との比較対照其他の参考のため、全国的状態に就ても、必要に応じ文書照会若くは文献により資料を蒐集整理したのである。

2 朝鮮人労働者の概念

 本調査に於て労働者と認めたものは、自由労働者、昼間労働に従事する苦学生、行商(外交員を含む)、工場労働者、人夫請負等を包含するものである。

3 調査の方法

 朝鮮人労働者は住居其他の関係でその移動甚だしく之が調査は極めて困難な仕事である。そればかりでなく、その全部に対する調査は到底期し難い。従つて、本調査に於ては、調査に比較的便利なる対象を選択して左の方法に依る標本的調査を行つたものである。

            イ、準備調査

 府下各朝鮮人保護施設又は簡易宿泊所内に生活するものに対しては、各施設に就て、分散的のもの並に朝鮮人在宿人夫部屋に就ては警視庁並びに各警察署長に対し、所要事項の照会を発し其の回答に基きて調査対象を確定した。

            ロ、実際調査

 右準備調査に依り対象を確定し、別項二種の調査票に依頼記入又は直接尋問記入を行つた結果、世帯票四九〇、単独票一、一七の回収があつた。

 けれども、之が集計に当り、記入の不備其他の都合に依り、統計資料としては世帯票四〇〇、単独票一、六〇〇、合計二、〇〇〇の調査票しか採用が出来なかつた。いま採用した調査票を地区別に例記せば左の通りである。

 

地     区

単独票

世帯票

合計

麹町区

神田区

五八

一二

七〇

京橋区

二五

二五

芝区

二一

二一

麻布区

一四

四谷区

一七

一九

小石川区

一八

一〇

二八

本郷区

浅草区

三九

四七

本所区

一五九

七九

二三八

深川区

七六

三一

一〇七

四三二

一五〇

五八二

八王子市

荏原郡

一一五

一〇

一二五

豊多摩郡

一二八

五〇

一七八

北豊島郡

二九〇

六一

三五一

南葛飾郡

一一五

一七

一三二

西多摩郡

二七二

二五

二九七

南多摩郡

四三

一五

五八

北多摩郡

二〇五

六七

二七二

一、一六八

二四五

一、四一三

総計

一、六〇〇

四〇〇

二、〇〇〇

 

4 調査の時期と手続

 前述の如く朝鮮人労働者は、その移動甚だしく、且つ冬期に於ては失業率多きが故に、調査時期の如何により、調査内容の確実性に直接影響する処が多きは云ふまでもない。仍て、本調査に於ては、調査の時期に付ては特に注意を払ひ、種々の事状を考慮した結果五月を最も適当なる調査時期として選択したる次第である。併して、本調査に於て収入、支出、失業の如きは、五月三十一日を現在として調査したるものである。

 尚ほ、本調査は、調査対象の性質上、その施行に付て、調査員は被調査者に反感を起さしめざるやう注意を要し、且つ言語、作法、習慣等を諒解し、可成鄭重なる態度を以て接し、懇談的に対問する必要があるが故に、吾々はこの点に留意し、集団的のもの若くは同一屋内に共同生活を営んで居るものに対しては、之が監督の任に当れる者を主任として調査を委嘱し、分散的生活者に対しては、其の地区的情勢に応じ警察官の如き被調査者の信頼を受くるに足るべき人々を選定して之を委嘱したのである。今当時の直接調査のために多大の労苦を煩はした団体と、人名を挙げれば左の如くである。

相愛会

鄭寅華氏

 

在日本朝鮮労働一心会

金潤秀氏

野方汗愛寮

尾形栄造氏

 

力行社

姜昌基氏

東昌会

趙東一氏

 

一善労働会

崔鍾煥氏

共和団

金瓊権氏

 

府下各簡易宿泊所長諸氏

 及び、警視庁内鮮係長、府下各警察署長の諸氏である。

 数百枚の調査票を短時日の中に調査し了るために、前記の諸氏は幾多の労苦を経験されたに相違ない。けれども、あらゆる熱情と、共鳴を本調査に寄せられて「朝鮮人労働者問題の解決のため」にはと、力瘤を入れられたのは感謝の至りである。

 茲に、重ねて感謝の意を表してをく。

            イ、調査票

 本調査に用ひた調査票は、左の雛形の如き世帯(ヽヽ)票(ヽ)並び単独票(ヽヽヽ)の二種である。

 

(調査票は省略)

 

 

第二章 朝鮮人労働者移住の過去と現在

 

一、移住の沿革と現状

朝鮮人の内地渡航の沿革に就て之を年次的に見る時には左の数字を示してゐる。

 

年           次

人員

大正二年十二月末現在

三、六三五

大正三年十二月末現在

三。五四二

九三

大正四年十二月末現在

三、九一七

三七五

大正五年十二月末現在

五、六二四

一、七〇七

大正六年十二月末現在

一四、五〇二

八、八七八

大正七年十二月末現在

二二、四一一

七、九〇九

大正八年十二月末現在

二六、六〇五

四、一九四

大正九年十二月末現在

三〇、一八九

三、五八四

大正十年十二月末現在

三八、六五一

八、四六二

大正十一年十二月末現在

五九、七二二

二一、〇七一

大正十二年十二月末現在

八〇、四一五

二〇、六九三

大正十三年十二月末現在

一一八、一五二

三七、七三七

大正十四年十二月末現在

一二九、八七〇

一一、七一八

大正十五年六月末現在

一四八、〇一五

一八、一四五

昭和元年十二月末現在

一四三、七九六

四、二一九

昭和二年十二月末現在

一七一、二七五

二七、四七九

(警視庁調)

 

右の数字が示す如く、大正二年の末に僅か三、六三五人しかなかつた在留朝鮮人が昭和二年の末には一七一、二七五人に増加してゐる状態で、丁度十五年の間四十七倍の増加を来出したことになる。

なほその渡航及び帰還状況に就て見ると左の数字を示してゐる。

 

朝鮮人内地渡航帰還年別調

年 別

渡 航

帰 還

差引残留

差引累計

月平均

渡航

帰還

差引

大正六年

一四、〇一二

四、九二七

一〇、〇八五

一〇、〇八五

一、一六七

三二七

八四〇

同 七年

一七、九一〇

九、三〇五

八、六〇五

一八、六九〇

一、四九二

七七五

七一七

同 八年

二〇、九六八

一二、七三九

八、二二九

二六、九一九

一、七四七

一、〇六一

六八六

同 九年

二七、四九七

二〇、九四七

六、五五〇

三三、四六九

二、二九一

一、七四五

五四六

同 十年

三八、一一八

二五、五三六

一二、五八二

四六、〇五一

三、一七六

二、一二八

一、〇四八

同 十一年

七〇、四六二

四六、三二六

二四、一三六

七〇、一八七

三、八七一

三、八六〇

二、〇一一

同 十二年

九七、三九五

八、七四五

七、六五〇

七七、八三七

八、一一六

七、四七八

六三八

同 十三年

一二二、二一五

七五、四三〇

四六、七八五

一二四、六二二

一〇、一八四

六、二八五

三、八九九

同 十四年

一三一、二七三

一一二、四七一

一八、八〇二

一四三、四二四

一〇、九三九

九、三七三

一、五六六

同 十五年

九一、〇九一

八二、七〇九

七、三八三

一五〇、八〇七

七、五九一

六、九七六

六一五

昭和二年

一三八、〇一六

九二、九九一

四四、〇二五

一九四、八三二

二、五〇一

七、八三三

四、六六八

(朝鮮総督府調査)

 

而して、昭和二年末現在に依る内地在留の朝鮮人の数は、一七一、二七五人の多数に上つて居り、之を府県別に分布数を示せば左の如くである。

 

道府県別

北海道

四、二八三

七八三

五、〇六六

東京

一四、一三三

一、九五〇

一六、〇八三

京都

九、四二八

一、六八三

一一、一一一

大阪

三一、二五九

九、七〇一

四〇、九六〇

神奈川

六、一九八

一、〇五九

七、二五七

兵庫

八、〇四一

三、〇〇一

一一、〇四二

長崎

二、五三〇

五一五

三、〇四五

新潟

八八〇

一八一

一、〇六一

埼玉

三〇一

八七

三八八

群馬

一、〇四一

一五三

一、一九四

千葉

八五八

一〇三

九六一

茨城

三〇七

六一

三六八

栃木

二四七

三〇

二七七

奈良

八八九

三〇一

一、一九〇

三重

一、五七〇

四六七

二、〇三七

愛知

九、五三二

四、四四一

一三、九七三

静岡

一、八八五

七一五

二、六〇〇

山梨

一、三七七

二三九

一、六一六

滋賀

一、〇〇六

二七九

一、二八五

岐阜

二、四〇五

五二三

二、九二八

長野

三、三三五

七五〇

四、〇八五

宮城

五七八

八三

六六一

福島

九七八

一七三

一、一五一

岩手

二一九

三二

二五一

青森

五三

六一

山形

七〇

七四

秋田

二七

三六

福井

五二一

一四五

六六六

石川

六〇〇

一〇八

七〇八

富山

一、三二五

二四五

一、五七〇

鳥取

一六六

三三

一九九

島根

八八四

一〇一

九八五

岡山

一、二〇六

二三四

一、四四〇

広島

三、五三八

四七三

四、〇一一

山口

五、四八三

一、三五八

六、八四一

和歌山

一、七四三

一、三四八

三、〇九一

徳島

一一四

二三

一三七

香川

二五六

四〇

二九六

愛媛

四五四

一一三

五六七

高知

三三三

四九

三八二

福岡

一二、九四一

三、一三二

一六、〇七三

大分

七八一

四〇八

一、一八九

佐賀

七九六

九七

八九三

熊本

六五九

一八三

八四二

宮崎

二七七

八七

三六四

鹿児島

一九七

五三

二五〇

沖縄

一〇

一〇

合   計

一三五、七一四

三五、五六一

一七一、二七五

――昭和二年十二月末現在警保局調――

 

以上の表に依ると、第一位を占めてゐるのが大阪府に於ける四〇、九六〇人で、次位の東京府が一六、〇八三人である。之を全国的に百分比すると大阪府の二三・九一%に、次ぐ東京府九・三九%の割合は該当してゐる。

更に、之を職業別に分類すれば左の通りである。

 

内地在留朝鮮人職業調

道府県

官公吏

軍人

通訳

医師薬剤師

新聞記者

僧侶牧師

事務員

学生

商業

農業

雇人

水上労働者

職工

坑夫

各種人夫

交通運輸

客商売

芸娼妓

無職

在監者

其他

北海道

一〇

-

-

一八

八七

六五

七五

二九

二八

三、三二二

九一二

-

二三七

-

二六二

五、〇六六

東京

一三

-

三〇

二、四八三

三九

--

八四

-

二、〇二一

-

八、九〇七

-

二三

二、一五二

五八

二五一

一六、〇八三

京都

-

-

-

-

-

-

二二四

二二

-

二八七

-

四三一九

四、三八七

-

-

-

一、三四九

-

五一五

一一、一一一

大阪

-

-

-

二八

一、五一五

一、四二五

-

一、九四八

一、〇六三

一五〇六二

-

四、五二四

-

-

-

九、〇六七

五二一

五、七九七

四〇、九六〇

神奈川

-

-

-

-

-

一五

五六

一〇

一一六

一八四

-

五、三九五

-

-

一三〇一

四二

一二五

七、二五七

兵庫

-

-

-

八七

一七七

-

三〇六

五七

二二七〇

五九

四、五三八

一六

-

三、一七九

五三

二八〇

一一、〇四二

長崎

-

-

-

-

-

五八

四六

四九

一二三

一八九7

一、〇二七

八九三

-

七四

-

四八九

二九

五九

五、〇四五

新潟

-

-

-

-

-

-

-

五六

-

-

-

-

-

九一三

-

-

-

-

八七

一、〇六一

埼玉

-

-

-

-

-

-

-

三九

-

二九

-

三九

-

一九三

-

-

六一

-

二二

三八八

群馬

-

-

-

-

-

-

-

五一

-

五二

-

五一

二七

八四一

-

-

-

一六七

-

一、一九四

千葉

-

-

-

-

-

-

-

二二

三二

-

二八

-

七七〇

-

-

五五

-

三四

九六一

茨城

-

-

-

-

-

-

-

四一

-

二七

-

一九

一九

一四六

-

-

六六

-

四七

三六八

栃木

-

-

-

-

-

-

-

一四

-

三二

-

二一一

-

-

-

-

二七七

奈良

-

-

-

-

-

-

-

三九

一一

-

三〇三

-

三二六

-

三五九

-

-

-

一〇五

-

二一

一、一九〇

三重

-

-

-

-

-

-

-

三二

一八

-

一三三

-

-

-

一、三六三

-

-

三五八

-

一二九

二、〇三七

愛知

-

-

-

-

-

一六

四七

一七一

一九五

二三二

一三

六、二三六

-

四、八九九

-

一、三五〇

-

七二四

一、三九七三

静岡

-

-

-

-

-

六〇

五八

一三六

三一

二三

四三五

六六

一、一一七

-

-

五七三

-

八四

二、六〇〇

山梨

-

-

-

-

-

-

-

一一

-

四二八

-

二六

-

九一三

-

-

-

-

-

二三四

一、六一六

滋賀

-

-

-

-

-

-

-

五六

八三

-

二八六

-

七四二

-

-

-

四八

-

六二

一、二八五

岐阜

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

-

-

五四〇

-

二、〇三一

-

-

二四一

-

一〇三

二、九二八

長野

-

-

-

-

-

-

-

二二

三〇

-

二三七

-

五三四

二、七七九

-

-

三八六

-

八〇

四、〇八五

宮城

-

-

-

-

-

-

-

一七

三五

-

四六一

-

一三

-

八五

-

三二

六六一

福島

-

-

-

-

-

-

-

三〇

一二

-

二四

-

九四〇

-

-

一三三

-

一、一五一

岩手

-

-

-

-

-

-

-

一一

一七

-

-

二七

一五八

-

-

二四

-

二五一

青森

-

-

-

-

-

-

-

-

一六

-

-

-

二三

-

-

-

六一

山形

-

-

-

-

-

-

-

二〇

一二

-

-

-

-

三二

-

-

-

-

-

七四

秋田

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇

-

-

-

一四

-

-

-

-

三六

福井

-

-

-

-

-

-

-

一五

-

-

一四五

-

三三一

-

-

一一九

-

四〇

六六六

石川

-

-

-

-

-

-

-

二一

-

一八

-

一三

-

五二九

-

-

四五

-

七八

七〇八

富山

-

-

-

-

-

-

-

一八

一五

-

九四

-

九四四

-

一四

三三六

-

一四二

一五七〇

鳥取

-

-

-

-

-

-

-

三四

三〇

一〇

一〇四

-

-

-

-

一九九

島根

-

-

-

-

-

-

一七

二八

四八

一〇八

五九二

-

-

一〇五

-

七三

九八五

岡山

-

-

-

-

-

-

-

二三

二六

一一七

一七七

一九

一八〇

二八

四五三

-

-

一九三

-

二二一

一、四四〇

広島

-

-

-

-

-

-

-

二五

一二七

四一

七二

二四

三八九

-

二、九五七

一八

-

-

-

三五六

四、〇一一

山口

-

-

-

-

-

-

一一三

七四

一四一

一、〇八九

四六二

一八八

八三九

一、五八六

-

一〇

一三

一、四一二

-

九一三

六、八四一

和歌山

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二、七〇五

-

-

-

-

-

三七八

四、〇九一

徳島

-

-

-

-

-

一二

三六

一八

-

-

一八

-

二九

一三七

香川

-

-

-

-

-

-

-

一〇

一九

二六

一六

三一

-

一二五

-

-

四八

-

一九

二九六

愛媛

-

-

-

-

-

一四

三二

二五

一三

二二

九一

一一

一七〇

-

-

八四

-

一〇二

五六七

高知

-

-

-

-

-

-

-

-

六四

一二

-

二三五

-

-

二六

-

二二

三八二

福岡

-

-

-

一〇六

二〇五

四〇八

三一七

二二

六一二

五、〇九〇

五、一四七

-

七〇

八五

四、八八七

-

一〇九

一六、〇七五

大分

-

-

-

-

-

-

-

四四

九九

二九一

-

一九八

-

一四〇

-

-

二六八

-

一四七

一、一八九

佐賀

-

-

-

-

-

-

-

一〇

二〇

三二一

一〇八

二二

-

五九

六五

-

-

五九

-

二二八

八九三

熊本

-

-

-

-

-

-

-

一〇

五二

-

一二七

四〇

三四五

-

八八

-

一六六

八四二

宮崎

-

-

-

-

-

-

-

一二

四三

-

-

二一九

-

三九

三四

三六四

鹿児島

-

-

-

-

-

-

-

一四

三三

一九

二七

-

八三

-

-

-

四七

-

一六

二五〇

沖縄

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

 

-

-

-

一〇

合計

二七

一五

一五

一五

一七

一二六

五、〇一五

三、二四三

一、八一二

六、九九三

二、〇〇〇

三、四五〇五

一〇、七四四

六五、二〇九

一九

五二九

一二四

二七、九八五

八二三

一二、〇五七

一七一、二七五

道府県

官公吏

軍人

通訳

医師薬剤師

新聞記者

僧侶牧師

事務員

学生

商業

農業

雇人

水上労働者

職工

坑夫

各種人夫

交通運輸

客商売

芸娼妓

無職

在監者

其他

――昭和二年十二月末警保局調――

 

二、来住期間の調

然らば、来住朝鮮人労働者は、どの程度の期間来住してゐるであらうか? この問題は、彼等の生活を知るのに、最も必要なる知識でなければならないのである。本調査に依る左掲表(ヽ)の(ヽ)一(ヽ)世帯員の内地在住期間に就て見るに二四・二五%が最高で三年未満在住者であり、一六・七五%の四年が次位を占めてゐる。而して、〇・二五%十四年未満が最低である。更に、之を表(ヽ)の(ヽ)二(ヽ)独身者に就て見ると、矢張り三年未満が最高で一八・七五%であり、十三年未満が〇・一九%で最低を示してゐる。之に依り、朝鮮人労働者内地在住期間は、概して、三ヶ年乃至四ヶ年が最高を占め、十三ヶ年乃至十四ヶ年が最低であるやうに観察されるのである。

 

表(・)の(・)一(・)

内地在住期間調(世帯員)

現職業

一年未満

二年同

三年同

四年同

五年同

六年同

七年同

八年同

九年同

十年同

十一年同

十二年同

十三年同

十四年同

十五年以上

自由労働

三五

二四

一三

-

-

-

-

-

-

一〇七

人夫頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

土工

一五

一七

-

-

-

七六

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

倉庫人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

工場雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂利採掘

一〇

-

-

-

-

-

二八

荷物運送

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

左官

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

工場機関係

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

理髪業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

市電運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

墓番

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

人夫請負

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自動車運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

糞尿汲取

-

-

-

 一

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

広告注文取

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一二

鉄工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一四

印刷工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

天井板磨工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

スレート職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ブロマイド職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

硝子職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

寒暖計職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ボール画職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

肥料職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

金属職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

アンチモニー職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

瓦職工

-

-

-

-

-

-

-

一-

-

-

-

-

-

-

-

労働者飯場

一一

一〇

-

-

 一

-

五〇

行商

-

-

-

-

-

-

-

-

露店商人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

役所工夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一五

役所工事人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

役所衛生人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

水道局人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

不明

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一九

二二

九七

六七

四五

四四

二六

二二

二九

一〇

四〇〇

百分比

四・七五

五・五〇

二四・二五

一六・七五

一一・二五

一一・〇〇

六・五〇

五・五〇

七・二五

〇・七五

二・五〇

一・五〇

一・〇〇

〇・二五

一・二五

一〇〇・〇〇

 

表(・)の(・)二(・)

内地在住期間調(独身者)

現職業

一年未満

二年同

三年同

四年同

五年同

六年同

七年同

八年同

九年同

十年同

十一年同

十二年同

十三年同

十四年同

十五年以上

鉄工場職工

一〇

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇

鉄網張職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

バリカン職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

工場雑役

一七

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三五

木工職

一二

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一九

売薬行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

電線工夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

外交員

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

電気機械工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

伸銅職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製鑵職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

綿職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

バケツ製工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

理髪見習

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

洋服裁縫工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自由労働

二九

三七

六七

八四

四三

二九

一三

一四

三四二

土工

六四

六八

一三九

七三

四四

五八

三四

一〇八

一五

一五

一八

二〇

六六八

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

官庁人夫

-

-

-

-

-

-

-

三二

砂利採掘

一六

一八

一〇二

二七

一四

一八

-

-

-

-

二二三

商店雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

弁当配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

晒職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

建築用具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

牧場使用人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

鞄製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

帽子製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

飛行工場職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂糖職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

コツク

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製材職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

靴修繕工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

納豆行商

一九

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二九

飴行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

青物行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷物配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二七

牛乳配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自転車職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

印刷職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製図工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

スリツパ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

石工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

蜜豆行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自働車運転手並助手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞取次店

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

玄米パン売り

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

左官手伝

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂利積込人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇

製管職人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

紙加工職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

郵便集配人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ニツケル工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

パイプ職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

大理石仕上職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

メリヤス職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製氷雇人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

靴下製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ネヂ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

玩具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

天井板磨職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

 六

ブリキ工

一三

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三

鋳物工

一二

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一七

鍍金工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

カマボコ行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇六

一六九

三〇〇

二四四

二一六

一二一

六六

一二一

四二

二九

三〇

一三

二一

一九

一、六〇〇

百分比

一二・八八

一〇・五六

八・七五

一五・二五

一三・五〇

七・五六

四・一三

七・五六

二・六三

一・八一

一・八八

〇・八一

〇・一九

一・三一

一・一九

一〇〇・〇〇

 

 更に、之を東京府下に於ける状態に就て見ても同一現象を呈し、左掲表(・)の(・)三(・)世帯員三年未満二九・五%、表(・)の(・)四(・)独身者三年未満二四・二五%が、共に最高位を占めて居り、最低が両者共十三年未満前後になつてゐるのは興味深き現象と云はねばならない。

 

表(・)の(・)三(・)

在京期間調(世帯員)

現職業

一年未満

二年同

三年同

四年同

五年同

六年同

七年同

八年同

九年同

十年同

十一年同

十二年同

十三年同

十四年同

十五年以上

自由労働

一四

四三

二四

一三

六-

-

-

-

-

-

-

-

一〇七

人夫頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

土工

一〇

一二

二九

一六

-

-

-

-

-

七六

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

倉庫人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

工場雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂利採掘

一一

-

-

-

-

-

-

二八

荷物運送

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

左官

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

工場機関係

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

理髪業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

市電運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

墓番

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

人夫請負

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自動車運転手

-

二-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

糞尿汲取

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

広告注文取

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二(ママ)

鉄工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一四

印刷工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

天井板磨工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

スレート職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ブロマイド職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

硝子職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

寒暖計職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ボール画職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

肥料職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

金属職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

アンチモニー職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

瓦職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

労働者飯場

一〇

一三

-

-

-

-

-

五〇

行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

露店商人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

役所工夫

-

-

-

-

-

-

-

-

一五

役所工事人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

役所衛生人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

水道局人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

不明

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三二

五八

一一八

七六

三五

三六

一一

一七

四〇〇

百分比

八・二五

一四・五〇

二九・五〇

一九・〇〇

八・七五

九・〇〇

二・七五

四・二五

〇・五〇

〇・五〇

一・〇〇

〇・七五

〇・二五

〇・五〇

〇・五〇

 一〇〇・〇〇

 

表(・)の(・)四(・)

在京期間調(独身者)

現職業

一年未満

二年同

三年同

四年同

五年同

六年同

七年同

八年同

九年同

十年同

十一年同

十二年同

十三年同

十四年同

十五年以上

鉄工場職工

一二

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇

鉄網張職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

バリカン職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

工場雑役

一八

一〇

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三五

木工職

十六

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

十九

売薬行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

電線工夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

外交員

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

電気機械工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

伸銅職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製鑵職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

綿職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

バケツ製工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

理髪見習

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

洋服裁縫工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自由労働

四七

五一

一二八

五六

三一

-

-

-

三四二

土工

一〇六

一八〇

一六六

八三

四二

四〇

一三

一七

一一

-

-

-

六六八

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

官庁人夫

一一

-

-

-

-

-

-

-

-

三二

砂利採掘

一八

三六

五六

七三

一六

一七

-

-

-

-

-

-

二二三

商店雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

弁当配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

晒職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

建築用具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

牧場使用人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

鞄製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

帽子製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

飛行工場職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂糖職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

コツク

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製材職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

靴修繕工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

納豆行商

一六

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二九

飴行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

青物行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷物配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二七

牛乳配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自転車職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

印刷職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製図工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

スリツパ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

石工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

密(ママ)豆行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自働車運転手並助手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞取次店

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

玄米パン売り

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

左官職手伝

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂利積込人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇

製管職人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

紙加工職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

郵便集配人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ニツケル工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

パイプ職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

大理石仕上職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

メリヤス職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓工

-

-

-

二-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製氷雇人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

靴下製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ネヂ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

玩具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

天井板磨職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ブリキ工

一二

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三

鋳物工

一四

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一七

鍍金工

一〇

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

カマボコ行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二九二

三三四

三八八

二四五

一六五

七三

二四

三八

一七

-

一、六〇〇

百分比

一八・二五

二〇・八八

二四・二五

一五・三一

一〇・三一

四・五六

一・五〇

二・三八

一・〇六

〇・五〇

〇・四四

〇・一三

-

〇・〇六

〇・三八

一〇〇・〇〇

 

 

三、出生地別と渡航当時の所持金調

已に二項に於て論述したるが如く、本調査に於ても、出生地別に調査人員を分類すると、矢張り慶(ヽ)尚(ヽ)南北(ヽヽ)の両道が首位であり、その原因とする処は云ふまでもなく該両道が、地理的に内地と接近してゐる関係と、当地方が朝鮮内に於ても比較的経済的に恵まれてゐない点にある。いまその実際を左表に就て窺へば、即ち、表(ヽ)の(ヽ)五(ヽ)世帯員に於ては、慶尚南道の三九・五八%、慶尚北道の二三・三二%が最高であり、両道は総数の約六割を占めて居る状態である。尚ほ、表(ヽ)の(ヽ)六(ヽ)独身者の場合に於ても同じく慶尚南北の両道が最高位を占めて居り、矢張り総数の約六割に該当してゐる状態である。

 

表(・)の(・)五(・)

原籍地調査人員(世帯員)

原籍地

京畿道

忠清北道

忠清南道

全羅北道

全羅南道

慶尚北道

慶尚南道

黄海道

平安北道

平安南道

江原道

咸鏡北道

咸鏡南道

百分比

世帯主

二一

一〇

一四

一三

五一

九一

一五九

一〇

一二

三〇〇

三〇・八六

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

其他ノ家族

一四

一一

一三

三一

五八

一一八

一一

二八一

-

三四

一八

二七

二二

六九

一五二

二三六

一一

一五

一六

六一五

-

四八

二九

三三

三五

一〇〇

二一〇

三五四

一四

二〇

二七

一六

八九六

六九・一四

合計

三五

二一

二〇

二六

八二

一四九

二七七

一〇

一五

二三

一四

六八一

-

三四

一八

二七

二二

六九

一五二

二三六

一一

一五

一六

六一五

-

六九

三九

四七

四八

一五一

三〇一

五一三

一〇

二一

三〇

三九

二二

一、二九六

一〇〇・〇〇

百分比

五・三二

三・〇一

三・六五

三・七〇

一一・六五

二三・二三

三九・五八

〇・七七

一・六二

二・三一

三・〇一

〇・四六

一・七〇

一〇〇・〇〇

-

 

表(・)の(・)六(・)

原籍地調査人員(独身)

原籍地

京畿道

忠清北道

忠清南道

全羅北道

全羅南道

慶尚北道

慶尚南道

黄海道

平安北道

平安南道

江原道

咸鏡北道

咸鏡南道

人員数

七五

三九

四七

一二五

二二二

四七〇

三八六

三三

一八

六七

五九

二一

三八

一、六〇〇

百分比

四・六九

二・四四

二・九四

七・八一

一三・八八

二九・三八

二四・一二

二・〇六

一・一二

四・一九

三・六九

一・三一

二・三八

一〇〇・〇〇

 

更に、彼等が最初内地に向つて渡航する時分、汽車及び汽船の賃金を除いた以外の所持金に就て調査するに表(ヽ)の(ヽ)七(ヽ)世帯員が三十一円八十一銭の平均で、最高三百三十四円五十五銭、最低二円五十銭で、表(ヽ)の(ヽ)八(ヽ)独身者が平均二十八円十七銭、最高百八十円、最低一円九十六銭の数字を示してゐる。

 斯の数字は、被調査者の記憶が不充分であつた関係から、勿論正確を期する訳には行かないが、兎に角彼等の所持金が予想以上に高率なることに一驚せざるを得ない。

 しかしながら、その内容に就て一層深く分析して見ると、比較的多額の所持金を有する者は、世帯員の場合に於ても、独身者の場合に於ても同じく、主として商業資金として若干の用意を為して来たもので、後者の場合は、飴売、行商等の資金であり、前者は、人夫部屋若くは飯場等の経営資金に用意して来たものらしい。更に一歩進んでこの所持金の出所を調べて見れば尚ほ驚かざるを得ない。

 即ち、ある者は、祖先伝来の家作、田地等を売飛ばした者もあり、高利を顧みず借り受けて来たものもあると云つた状態で、彼等の斯る企ては、二度と故郷の土地を踏まぬ悲壮なる決意の結果であるらしく見受けられるのである。

 

 表(・)の(・)七(・)

             渡航当時旅費以外の所持金調べ(世帯員)

所持金

京畿

忠北

忠南

全北

全南

慶北

慶南

黄海

平北

平南

江原

咸北

咸南

一人当平均所持額円

二円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一・四〇

三円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二・五〇

四円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三・八〇

五円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

一三

四・九二

八円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

七・〇七

一〇円以下

-

-

-

-

-

二〇

九・九五

一五円以下

-

-

-

-

-

-

-

二二

一四・四五

二〇円以下

二一

-

-

四一

一九・八三

二五円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三

二四・六二

三〇円以下

-

-

-

一〇

-

-

-

-

-

一九

三〇・〇〇

三五円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三四・二五

四〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四〇・〇〇

五〇円以下

-

一一

-

-

-

-

二六

四二・八九

六〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五八・五三

七〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

七〇・〇〇

八〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

八〇・〇〇

九〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

八二・〇〇

一〇〇円以下

-

-

-

-

二四

九五・八二

一五〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三六・八七

二〇〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

一-

一八四・三四

二〇〇円以上

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

三四四・五五

二二

四六

六五

-

-

一六〇

-

二一

一〇

一四

一三

五一

九一

一五九

一〇

一二

四〇〇

三一・八一

 

 表(・)の(・)八(・)

             渡航当時旅費以外の所持金調べ(独身者)

所持金

京畿

忠北

忠南

全北

全南

慶北

慶南

黄海

平北

平南

江原

咸北

咸      南

一人当平均所持額円

二円以下

-

-

二二

-

-

-

四八

一・九六

三円以下

-

-

-

三三

二・九三

四円以下

-

-

-

-

-

-

-

一一

三・五九

五円以下

一八

一五

-

-

五八

四・九七

八円以下

-

-

一〇

-

-

三二

七・〇二

一〇円以下

三四

二六

一〇〇

九・九八

一五円以下

二七

二九

-

八六

一四・六〇

二〇円以下

二六

二一

-

八二

一九・七三

二五円以下

-

一〇

-

-

一一

五三

二四・七四

三〇円以下

-

二二

一六

-

-

-

五七

二九・九五

三五円以下

-

-

-

-

-

-

-

一六

三四・三八

四〇円以下

一〇

三〇

二六

-

-

-

-

八四

三九・九二

五〇円以下

-

二九

二九

-

九一

四七・七五

六〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

一三

五九・五四

七〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇

六八・七〇

八〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

七九・四四

九〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

八九・四四

一〇〇円以下

-

-

-

-

-

-

一八

九九・七二

一五〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三〇・八三

二〇〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

 

-

-

一八〇・〇〇

二〇〇円以上

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三〇〇・二五

三八

一八

一三

九九

一四一

二〇八

一六七

二三

二一

二五

一一

七七七

-

七五

三九

四七

一二五

二二二

四七〇

三八六

三三

一八

六七

五九

二一

三八

一、六〇〇

二八・一七

 

 

四、東京における朝鮮人労働者の現状

元来東京と云へば、朝鮮人労働者にとつては縁の遠い地方のやうにされて来た感がある。その主なる原因は、地理的に見て東京は、大阪、神戸等の大都市に比して、遠隔なる地でもあり、更に商工業の旺盛さに於ても、労力の需要の点に於ても、彼等が進んで東京地方を選択なる必要はなかつたものである。

 朝鮮人労働者の渡航の動機が、概して金儲け、若しくは生活苦を逃れやうとするやうなものにある以上、彼等にとつてはその欲望を満足せしめる地でありさへすれば、敢て如何なる地方であつても好い訳である。可成旅行里程の近いほど時間と、旅費を空費せずに済む訳である関係上、初期に於ける朝鮮人労働者は、地理上比較的手近き地方即ち、九州若くは関西の諸都市に向つて渡航を企てた感がある。

 之は現在に於ても、矢張り同一なる現象を呈してゐるのが事実であるが、彼等が未だに労働者として、また一般市民として一定の生活レベルに到達してゐない関係から、彼等が渡航前に描いてゐた一握(ママ)千金の夢を現実することは、所詮儚い幻に過ぎないことが判ると、彼等は、更に〳〵、他の地方に夢の所在を求めて流れて行く。その結果、先渡者や、人夫請負者等の甘言に誘はれて、奥へ〳〵へと、渡航当時夢にも描いたことのない奥日本の各地方へ旅立つて行かざるを得なくなるのである。

 東京地方に、彼等が居住するやうになつた最初の動機は、恐らく之が原因となつて、東京地方に来住することになつたのであらう。

 東京と云へば朝鮮人の多くの者は、金持ち階級の若息子共が留学する文化の都で、到底労働者階級の居住には不向であるらしく感じて来たのであるが、大正八年朝鮮に独立騒擾が突発し、それと前後して朝鮮青年の頭の中には、学問熱が燃るやうに湧き立つやうになり、元来無産者階級に属する彼等としては苦学の方法に依り、その欲望を満足する外、他に途はなかつた。従つて、学業に志す若き朝鮮人労働者の群は、禁断の園と云はれゐる花の都東京へ〳〵と、急激に来往するやうになり、その数は極めて多く、学生の約六割、労働者の四割は実にこの苦学生が占領する盛況を呈したのである。

 けれども、これ等の苦学生が労働の方法に依り学業を完成することは、極めて困難な事でもあり、加ふるに専問(ママ)教育を受るには、彼等の中に基礎的教育を修めたる者極めて少数であつた関係から、苦学の年限が長期に亘るために、所期の目的を貫徹する者は甚だ少数に過ぎない。

 斯る状態に依り、在京朝鮮人労働者は、従来真に労働者としては、実力の保持者極めて少つたけれども、智識の程度に於ては相当なる水準を保持して来たのが事実である。けれども労働者は労働者としての資格か(ママ)必要であり、ろうどうしゃの武器たる労働者自身の体力がなければならない。而して、之を備へたるものこそ労働市場に於ては有利である。

 斯る自然的方(ママ)則から、近時に於ける在京朝鮮人は、その勢力が漸次労働本位、即ち純労働者に集中するやうになり、一時旺盛を極めた苦学生は、漸次その姿を労働市場から隠すやうになつた。

 扨て、しからば在京朝鮮人は如何なる状勢を以て増加を来してゐるか、之を年次別に比較して見れば左の如くである。

 

 (在京朝鮮人労働者増減調)

年別

総数

大正二年

不明

不明

五七二

同三年

五四二

同四年

五七二

同五年

六四七

同六年

九一八

同七年

一、二二九

同八年

一、一四六

八二

一、二二八

同九年

一、九三〇

一三三

二、〇五三

同十年

三、〇二二

二一二

三、二三四

同十一年

四、二八一

二三二

四、六三三

同十二年

五、一一七

二三〇

五、三四七

同十三年

七、八六五

五二〇

八、三八五

同十四年

一〇、〇一二

八〇六

一〇、八一八

昭和元年

一一、八九一

一、三四〇

一三、二三一

同二年

一四、一三三

一、九五〇

一六、〇八三

同 三年八月

一六、〇四六

二、一七八

一八、二二四

――警視庁調――

 

 右の数字が示す如く、東京府下に於ける朝鮮人労働者の年次別増減の数は、矢張り全国的のそれと同一歩調にあることが明である。即ち、大正二年に僅か五百七十二人しか居なかつた彼等が、昭和三年八月末現在には、一万八千二百二十四人に増加し、丁度十六年間に約三十一倍の増加を来したことになる。

 しからば、現在東京府下に於ける朝鮮人は、如何なる状態に於て分布し、その生活の位置を定めてゐるかを左に挙げてをく。

 

(在京朝鮮人地区的分布数)

地区

戸数

学生

職工

労働者

其他

合計

麹町区

三一

三四

-

一二一

-

一二一

一一

一四

一五九

一四

一七三

神田区

一四

六七

六九

六六

-

六六

一六〇

-

一六〇

一三

二六

三九

三〇六

二八

三三四

日本橋区

-

一一一

-

一一一

一三

一二

二五

一三五

一三

一四八

京橋区

八八

三三

三六

一四二

-

一四二

四四一

-

四四一

一〇

六六

七六

六二六

六九

六九五

芝区

四七

二二

二八

五八

六一

三八五

二」

三八七

四六

三七

七三(ママ)

五〇一

四八

五四九

麻布区

一七

一五

一九

一八

-

一八

五〇

-

五〇

一二

一九

三一

九五

二三

一一八

赤坂区

-

-

-

-

二〇

二一

二一

四六

四〇

四谷区

一六

-

一二五

一三〇

一四

一三

二七

一四九

一九

一六八

牛込区

二〇

一四〇

一四七

二一

-

二一

一三四

-

一三四

二六

二五

五一

三二一

三二

三五三

小石川区

三七

六五

六九

三四

三六

一三一

一三五

一七

二七

四四

二四七

三七

二八四

本郷区

二七三

一〇

二八三

一七

-

一七

八三

-

八三

一五

一二

二七

五八八

二二

四一〇

下谷区

一六

一五

一七

一一

-

一一

一六〇

一六四

二〇

一六

三六

二〇六

二二

二二八

浅草区

二四

一四

-

一四

四一

四三

二三二

二三四

二〇

二六

二九三

二四

三一七

本所区

一二七

五三

五九

三七八

三八〇

六一九

六二四

六五

九五

一六〇

一、一一五

一〇八

一、二二三

深川区

二〇九

四四

五一

一六四

一六六

一、五五四

一、五六〇

一五四

二四四

三九八

一、九一六

二五九

二、一七五

市部計

六三七

七九一

五六

八四七

九六四

一一

六七五

四、三二六

二九

四、三五五

四一二

六二六

一、〇三八

六、四九三

七二三

七、二一五

荏原郡

三八〇

二二五

三〇

二五五

二一六

二二一

一、八三〇

二四

一、八五四

二四一

四二八

五六九

二、五一二

三八七

二、八九九

豊多摩郡

二四一

四六一

三六

四九七

一五三

一五

一六八

九〇三

一四

九一七

二一七

一八二

三九九

一、七三四

二四七

一、九八一

北豊島郡

三二〇

二六二

一六

二七八

四二六

三六

四六二

一、六二〇

一六

一、六三六

二一五

三二六

五四一

二、五二三

三九四

二、九一七

南足立郡

四七

 八

一〇

一一

一二

一四六

一四八

二四

三三

一七四

二九

二〇三

南葛飾郡

一七七

七六

一一

八七

四〇二

-

四〇二

九九八

一、〇〇一

五三

一九〇

二四三

一、五二九

二〇四

一、七〇三

西多摩郡

三九

-

三二六

三二八

一三

六〇

七三

三四三

六六

四〇九

南多摩郡

-

-

-

-

-

-

一七

-

一七

-

一七

一九

北多摩郡

七四

二七

一五

四二

-

四八四

四五

五二九

五二

五五

一〇七

五六六

一一五

六八一

郡部計

一、二八〇

一、〇六一

一一〇

一、一七一

一、二一三

六一

一、二七四

六、三二四

一〇六

六、四三〇

八〇〇

一、一六七

一、九六七

九、三九八

一、四四四

一〇、八四二

八王子市

二二

-

-

-

一五

-

一五

一二八

-

一二八

一二

一二

一四

一五五

一二

一六七

総計

一、九三九

一、八五二

一六六

二、〇一八

二、一九二

七二

二、二六四

一〇、七七八

一三五

一〇、九一三

一、二二四

一、八〇五

三、〇二九

一六、〇三六

二、一七八

一八、二 一四

百分比

 

 

 

一一・〇七

 

 

一二・四二

 

 

五九・八九

 

 

一六・六二

 

 

一〇〇・〇〇

 

更に、また在京朝鮮人が現在に於て、如何なる方法を以てその生活を支持してゐるか、即ち朝鮮人の職業に就て之を見るに、自己の労力を以て生活の糧を得つつある純労働階級は、八八・九三%の大多数を占め、他の力に依り生活を支へて行く階級即ち学生の如きは、僅か一一・七〇%を占めてゐるに過ぎない。

 之を職業別に、分類すれば左の如くである。

 

 (在京朝鮮人職業別人員数)

職業別

五月

六月

七月

八月

 

学生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生

一、四四八

一七一

一、六一九

一、四二〇

一九一

一、六一一

一、〇三一

一一二

一、一四三

九七一

一〇七

一、〇七九

小学生

一四七

六一

二〇八

二三九

五五

二九四

一九六

五一

二四七

一三七

五一

一八八

苦学生

七一九

七二三

六二〇

六二七

七〇八

七一一

六二一

六二四

学校未定

一五九

一六四

一二一

一二八

一〇六

一一二

一二二

一二七

小計

二、四七三

二四一

二、七一四

二、四〇〇

二六〇

二、六六〇

二、〇四一

一七二

二、二一三

一、八五二

一六六

二、〇一八

職工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金属工業職工

四四九

-

四四九

四七六

四七七

五〇二

五〇三

四五一

四五二

機械工業製造工

二九五

-

二九五

三四五

三四六

三一六

-

三一六

三一一

三一二

化学工業職工

一九三

一一

二〇四

二一六

二二三

二一六

三二三

二二三

一〇

二四二(ママ)

窯業工業職工

三二六

三二七

三〇九

-

三〇九

三二五

-

三二五

三六三

-

三六三

裁縫工業職工

一〇八

二二

一三一

一四五

二七

一七二

一一七

三〇

一四七

一〇九

三四

一四三

紙工業職工

七五

七六

六五

六六

七七

七九

六〇

六三

皮革骨角羽毛器製造職工

四一

-

四一

四二

-

四二

三七

-

三七

四五

-

四五

飲食料嗜好品製造職工

五五

-

五五

四四

-

四四

八一

八三

七二

七四

木竹類製造工

七二

七三

七二

七四

六二

-

六二

七五

-

七五

被覆身廻品製造職工

一四八

三九

一八七

二四一

一九

二六〇

一七八

一六

一九四

一八五

一七

二〇二

製版製本印刷職工

一六八

一六九

一四三

-

一四三

一八一

一八二

一八三

一八六

学芸品娯楽品製造職工

三〇

三一

三四

-

三四

四一

四二

六八

-

六八

瓦斯電気及天然物利用ニ干スル職工

四六

-

四六

二一

一二

三三

三七

一三

五〇

四八

四九

小計

二、〇〇六

七七

二、〇八二

二、一五三

七〇

二、二二三

二、一七〇

七三

二、二四三

二、一九二

七二

二、二六四

労働者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

農業

一一

-

一一

一〇

-

一〇

一一

-

一一

-

農夫

一二

-

一二

一二

-

一二

一一

-

一一

一五

-

一五

土石砂利採取夫

九〇六

四三

九四九

九七七

六三

一、〇四〇

一、一七六

五三

一、二二九

一、二一六

六二

一、二七九

常備道路工夫

-

-

-

一三

-

一三

逓信省常備人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

常備市区町村道路人夫

八七

-

八七

九〇

-

九〇

一〇七

-

一〇七

九一

-

九一

同掃除撒水人夫

一〇一

-

一〇一

九九

-

九九

一三一

-

一三一

一〇一

-

一〇一

同水道局人夫

三九

-

三九

三四

-

三四

四四

-

四四

四三

-

四三

河港課常備人夫

-

-

-

-

清掃課常備人夫

三七

-

三七

三七

-

三七

三七

-

三七

三五

-

三五

荷揚人夫

一八二

-

一八二

二〇一

-

二〇一

二三二

-

二三二

二一八

-

二一八

諸会社土場雑役夫

四九七

四九八

四三八

四三九

四九九

-

四九九

五一九

-

五一九

日稼人夫

五、二八六

五、二九二

五、六〇九

五、六一〇

五、五九〇

五、五九三

六、四五三

六、四五四

自動車運転手

六一

-

六一

六八

-

六八

六八

六九

七一

-

七一

同助手

四八

  一

四九

四八

四九

五四

-

五四

五六

五七

飛行士

 一

人力車夫

二五

-

二五

二六

-

二六

二六

-

二六

二八

-

二八

荷馬車挽

九〇

-

九〇

七六

-

七六

七八

-

七八

六九

-

六九

荷車輓

二二

-

二二

二七

-

二七

二六

-

二六

二八

-

二八

船夫

二六

-

二六

二一

-

二一

二〇

-

二〇

三〇

-

三〇

市電従業員

一一

-

一一

一一

-

一一

一〇

-

一〇

一〇

-

一〇

鉄道従業員

-

-

-

-

駅夫

-

-

-

-

新聞配達夫

四九九

-

四九九

四八三

-

四八三

五一〇

-

五一〇

五四〇

-

五四〇

郵便配達夫

二二

-

二二

五一

-

五一

二一

-

二一

二四

-

二四

牛乳配達夫

八五

-

八五

八一

-

八一

七八

-

七八

八一

-

八一

其他配達夫

二三

-

二三

一五

-

一五

一九

-

一九

二一

-

二一

納豆行商

一二七

-

一二七

九九

-

九九

一一八

-

一一八

一二四

-

一二四

人参行商

一五

-

一五

一九

-

一九

一五

-

一五

一一

-

一一

玄米パン行商

一八

-

一八

一七

-

一七

一七

-

一七

一九

-

一九

飴行商

一〇七

三七

一四四

一〇四

三八

一四二

九三

三三

一二六

九一

三九

一三〇

文房具行商

一四

一五

一六

-

一六

一九

-

一九

二二

-

二二

其他行商

四六

四七

五二

-

五二

四三

-

四三

六一

-

六一

大工

-

一〇

-

一〇

一一

-

一一

二七

-

二七

左官

二六

-

二六

一六

-

一六

一八

-

一八

一九

-

一九

石工

-

-

-

一八

-

一八

理髪職

三四

-

三四

三八

-

三八

三五

-

三五

三三

-

三三

諸料理人

一一

-

一一

一〇

一三

一二

一五

一五

一九

雑業

一〇九

一二

一二一

一一六

一一九

一三七

一四三

一四一

一四九

ペンキ塗工

一二

-

一二

一〇

-

一〇

一五

-

一五

一四

-

一四

被雇人

五八九

二〇

六〇九

五九一

五九四

五〇八

 一八

五二六

五〇三

一八

五二一

小計

九、〇二八

一二三

九、三三一

九、五三四

一一四

九、六四八

九、八一八

一一八

九、九三六

一〇、七七八

一三五

一〇、九一三

其ノ他

 

-

 

 

-

 

 

-

 

 

-

 

陸軍将校

-

-

-

-

官公吏

-

-

-

-

官衙雇人

五三

五七

五一

五五

四九

五三

五六

六〇

医師

-

-

-

-

歯科医(同技工)

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

薬剤師

-

-

-

-

写真師(見習)

-

-

-

-

-

-

音楽教師(楽手)

-

-

-

-

牧師

-

-

-

 一

-

 一

僧侶

-

-

-

-

弁護士

-

-

-

-

新聞雑誌記者

-

-

-

-

著述者

-

-

-

-

銀行員

-

-

-

-

会社員

一六

-

一六

一六

-

一六

一五

-

一五

一四

-

一四

事務員

二六

-

二六

一五

一六

二五

二六

二五

二六

書画家

-

一〇

-

一〇

 一一

-

 一一

-

俳優

-

-

-

-

金貸業

-

-

-

-

-

-

印刷業

-

-

-

-

新聞取次店

一八

-

一八

二〇

-

二〇

一七

-

一七

一九

-

一九

牛乳搾取販売

-

-

-

-

下宿業(貸家)

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

土工部屋

一七八

-

一七八

一七二

-

一七二

一九八

-

一九八

二〇五

二〇七

土工

七七〇

-

七七〇

三四七

-

三四七

四〇四

-

四〇四

四二八

-

四二八

飲食店

二二

二七

一九

二四

一八

二二

一七

二二

人参商

-

-

-

-

飴商

 一

其他商店

二七

二八

二六

二八

一四

-

一四

二一

二四

外交員

一五

-

一五

一九

-

一九

一六

-

一六

一六

一九

商店員

二五

-

二五

二五

-

二五

二九

三三

二八

三二

看護婦

-

-

-

三-

-

芸妓

-

-

-

二-

-

酌婦女給

-

三二

三二

-

三〇

三〇

-

二六-

二六

-

二三

二三

精神養療法医業

-

-

-

-

-

-

-

養育院収容者

一〇

-

一〇

一〇

-

一〇

一一

-

一一

一一

-

一一

精神病院入院患者

-

-

-

一一

-

一一

癩患者入院患者

-

-

-

-

-

-

入監者

七〇

-

七〇

五八

-

五八

五九

-

五九

六〇

-

六〇

無職

四六八

一、六二四

二、〇九二

二七四

一、六三一

一、九〇五

二、四六

一、六九四

一、九五〇

二六〇

一、七五二

二、〇一二

小計

一、七七六

一、六七四

三、四五〇

一、一三二

一、六七九

二、八一一

一、一七四

一、七九〇

二、九一七

一、二二四

一、八〇五

三、〇二九

合計

一五、四六三

二、一一五

一七、五七八

一五、二一九

二、一二三

一七、三四二

一五、二〇五

二、一〇三

一七、三〇六

一六、〇四六

二、一七八

一八、二三四

(同上調)

(在京朝鮮人出身地別調査表は省略)

 

 尚ほ、最後に吾々は、現在東京府下に於ける朝鮮人労働者の出身道別に就て、その分類を観、彼等に対する概念を更に深くすることにしやう。

 左表に示す如く、首位の慶尚南道の五、〇二六人、次位の慶尚北道の三、八四八人、三位の全羅南道の三、三一六人の如きは、前述せるが如く、該地方が地理的に内地と接近してゐる関係であることは云ふまでもないが、また該地方(但し全羅南道はその一部ではある)が朝鮮内に於ても、経済的に概して恵まれてゐないことも原因の一つに数へられる。

 

道別

学生

職工

労働者

其ノ他

合計

 

京畿道

二〇五

三九

二四四

一六八

一七〇

四〇〇

一三

四一三

一〇八

一〇八

二一六

八八一

一六二

一、〇四三

忠清北道

六二

六九

五七

-

五七

二八〇

二八八

三八

三九

七七

四三七

五四

四九一

忠清南道

八七

九二

一〇四

一〇七

三六五

三七二

七一

六八

一三九

六二七

八三

七一〇

全羅北道

一二四

一三一

二一〇

二一三

四七二

四七九

七二

一〇六

一七八

八七八

一二三

一〇〇一

全羅南道

二一〇

二一

二三一

五四二

三七

五七九

一、九六八

二一

一、九八九

一七二

三四五

五一七

二八九二

四二四

三、三一六

慶尚北道

一七二

二二

一九四

三二五

一〇

三三五

二、六七一

一七

二、六八八

二四九

三九二

六三一

三四〇七

四四一

三八四八

慶尚南道

二四九

二一

二七〇

四六六

一〇

四七六

二、三九八

五二

三、四五〇

二八五

五四五

八三〇

四三九八

六二八

五〇二六

黄海道

八三

一〇

九二

九二

九三

二六三

二六五

五二

五一

一〇三

四九〇

六四

五五四

平安北道

一一七

一二五

五二

-

五二

一五九

一六一

三八

三〇

六八

三六六

四〇

四〇六

平安南道

一三一

一〇

一四一

八六

八八

二四三

二四四

四四

四二

八六

五〇四

五五

五五九

江原道

七〇

七六

三六

-

三六

二〇一

二〇二

三三

三七

七〇

三四〇

四四

三八四

咸鏡北道

八八

九二

一五

-

一五

一二三

一二五

二一

一三

三四

二四七

一九

二六六

咸鏡南道

一五四

二六〇

三九

四三

二三五

二三七

五一

二九

八〇

五七九

四一

六二〇

合計

一、八五二

一六六

二、〇一八

二、一九二

七二

二、二六四

一〇、七七八

一三五

一〇、九一三

一、三二四

一、八〇五

三、〇二九

一六、〇四六

二、一七八

一八、二二四

(同上調)

 

五、渡航理由の調査

 なほ序に彼等の内地渡航の理由に就て調査したものを参考のため左に附記してをく。

 

 表(・)の(・)九(・)

              渡航理由の調査(世帯員)

年齢階級別

勉学

生活難

労働

金儲

二十五歳以下

一九

二十六歳以上三十歳以下

一二

四八

一八

一六

九四

三十一歳以上三十五歳以下

一〇

七六

三八

一八

一四二

三十六歳以上四十歳以下

四三

一四

二七

八五

四十一歳以上四十五歳以下

-

二八

三九

四十六歳以上五十歳以下

五十一歳以上五十五歳以下

-

-

-

五十六歳以上六十歳以下

-

二九

二一三

八三

七五

四〇〇

百分比

七・二五

五三・二五

二〇・七五

一八・七五

一〇〇・〇〇

 

表(・)の(・)一〇(・・)

              渡航理由の調査(世帯員)

年齢階級別

生活難

労働

金儲

習(ママ)業

勉学

不明

十五歳以下

-

-

-

-

十六歳以上二十歳以下

三七

一二

一八

一〇

三八

一一六

二十一歳以上二十五歳以下

一七六

五四

六三

二六

九七

四二三

二十六歳以上三十歳以下

二六〇

五九

七九

三五

一四

四五二

三十一歳以上三十五歳以下

二〇三

四二

三一

二九七

三十六歳以上四十歳以下

一三一

二五

二二

一八八

四十一歳以上四十五歳以下

五三

一一

-

-

七一

四十六歳以上五十歳以下

二五

-

-

三五

五十一歳以上五十五歳以下

-

-

-

一一

五十六歳以上六十歳以下

-

-

-

-

-

九〇〇

二〇五

二二六

五〇

一八〇

三九

一六〇〇

百分比

五六・二五

一二・八一

一四・一三

三・一三

一一・二五

二・四四

一〇〇・〇〇

 

 表(ヽ)の(ヽ)九(ヽ)世帯員四〇〇人に就ての調査に依ると、勉学の目的が七・二五%、生活難が五三・二五%、労働が二〇・七五%、金儲が一八・七五%の割合を占め、表(ヽ)の(ヽ)一〇(ヽヽ)独身者の場合に於ては、全員数の五六・二五%が生活難であり、一二・八一%が労働、一四・一三%が金儲、三・一三%が修業、一一・二五%が勉学、二・四四%が不明といふ状態であり、この数字に依つて見ても、彼等の生活苦が如何に深刻であるかゞほゞ窺はれるのである。即ち、表(ヽ)の(ヽ)九(ヽ)世帯員の場合、勉学の目的七・二五を除いた、九二・七五%が生活苦若くは労働、金儲等の直接経済的原因から来た理由であり、表(ヽ)の(ヽ)一〇(ヽヽ)独身者の場合に於ても、修業、勉学の一四・三八%を除いた八五・六二%が矢張り同一事情であるのである。

 之等の数字を目撃する時、吾々は彼等の渡航に対する凡ゆる非難と、攻撃が一蹴されねばならない感慨に打たれるものである。即ち、云ふ処の彼等(ヽヽ)の(ヽ)漫然(ヽヽ)、無定見(ヽヽヽ)に(ヽ)一攫千金(ヽヽヽヽ)の(ヽ)夢(ヽ)を見乍ら渡航するのも、底を洗つて見れば斯様に真剣な生存に対する努力の現はれであることを知るのである。

 

 

第三章 労働市場と朝鮮人労働者

 

一、労働者としての朝鮮人

元来朝鮮は農業国であり、その人口の八割までが農業に従事してゐる人々である。従つて、在京朝鮮人労働者も、その殆んど全部が矢張り農業を元業として居る関係から、彼等は、内地の労働市場に於ても、特殊なる技術を要する方面には、到底就職が不可能であるばかりでなく、来住の年月が未だ浅いので熟練労働者の数も甚だ僅少である。加ふるに彼等は、言語、風俗、習慣等に於て、内地生活と共通性が欠けてゐる関係から、雇傭者側の余り歓迎せざる状態にあり、その就職状況に於ても想外の困難を感ずるのが現況である。

労働者の武器は、云ふまでもなく労働の技術であり、労働者の資格は、労働の能力を有することである。然るに、朝鮮人労働者に於ては、その資格に於て、且つその武器とする技術的方面に於て、共に内地人労務者と、優劣を競ふべき程度に達せず、熟練労働の方面には、別に影響を及ぼすほどの状態でもないのである。

 けれども、以上は彼等を単に、時間的に、量的に観たる範囲のもので.教等が若し一定の生活レベルまでに到達したる暁には、労働者としての質的方面に於ては如何であるだらうか?  之は甚だ少数ではあるが、現在に於ける彼等の中の熟錬労働者に就て之を考察すると.その生活の量的方面に於て、勤続状態に於て.共に.決して内地人労働者に劣るものでないばかりか、労働の耐久力即ち労働時間の点に於ては、遥かに優良であることが事実である。

現在彼等が、自由労働方面に於て.全国的に掃討需要せられつゝあるのは.彼等が、炭坑夫として.士方.人夫、農業労働者として、驚くべき良き方面の要素を多分に有してゐるからである。

被等の労働態度こそ、ノロ(ヽヽ)〳〵として、一向働いて居るやうな気もせず、労働成績が比較的挙らないといふ非難もあるが、しかし彼等こそ、世界的不毛の曠原満洲、西伯利亜地方の開墾者として、賛評せられてゐる歴史上の殊勲者ではないか。

賤待の下に英雄出でずで、吾々が持つ朝鮮人労働者に対する賤視的観念こそ、当に、彼等を労働者として一定のレベルに達せんとする努力を妨害する、誤つた観念ではなからうか。之を内地人労働者の場合にとつて兌ても、農閑期を利用して都会に出稼ぎに来る地方の労働者は、矢張り朝鮮人労働と秋毫も異なる処がないのではないか。

しかして、彼等が特殊的技術を要する熟練労働者としての能力を所持せぎることは、決して恥辱でも、賤観を受る理由のものでもない事で、それは彼等がたゞその境遇と.環境の如何に依つて、斯る状態を免れないものに過ぎないのである。

吾々は、朝鮮人労働が真に労働者としての能力と、技術に対する良き要素を有して居ることを信じて疑はぬものであるけれども、彼等が何故に落着いて業務に従事し、内地人労働者の如くに、向上発展に努力し.其の生活の内容を整へやうとはしないのであらうか。吾々は常に彼等のためにそれを遺憾に思うのである。彼等は常に、浮浪的意識の下に、一銭一厘の私欲のために、その職場や、雇主を換へることは、決して彼等のために利益ではないのである。而してまた、彼等が若し斯かる状態と、その意識を、持続すれば持続する限り、彼等は労働者としての武器と資格を獲得することは不可能であらう。

そのためには、吾々はまづ彼等に、住めぱ都だ、何れの土地に於ても、仮へ明日国へ帰ることがあっても、その日までは住んでゐる処に愛着を持ち、落着いて職務に従事し、一時的出稼意識を捨てゝ、一個の市民として、公民として、内地人労働者と同様に、生活機会に参与する理想の下に進むやう誘導せねばならないと思ふものである。

扨て、吾々は更に深く、彼等の労働者としての地位を闡明にするため、彼等の原籍地に於ける職業状態に就て考察して見やう。

 

表(・)の(・)一一(・・)

              郷里に於ける職業調査(世帯員)

職業

京畿

忠北

忠南

全北

全南

慶北

慶南

黄海

平北

平南

江原

咸北

咸南

農業

一三

一二

一一

四五

七六

一三一

一〇

三二八

労働

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇

商業

-

-

-

-

-

二五

測量

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

代書業

-

-

-

-

-

 一

-

-

-

-

-

-

大工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

学生

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

そばや

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

通弁

-

-

-

-

-

-

 一

-

-

-

-

-

-

土地仲介業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

鉄工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

鉱夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

下宿業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

土工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製靴職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

銀行員

 一

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

事務員

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

印刷工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

漢文教師

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

居酒屋

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

左官職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

公吏

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

会社員

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

 一

自動車運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

巡査

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

無職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二一

一〇

一四

一三

五一

九一

一五九

一〇

一二

四〇〇

 

 

表(・)の(・)一二(・・)

              郷里に於ける職業調査(独身者)

職業

京畿

忠北

忠南

全北

全南

慶北

慶南

黄海

平北

平南

江原

咸北

咸南

農業

五八

三二

四四

一一一

一八八

四〇一

三四四

二七

一一

五〇

五六

一三

二九

一、五六四

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

労働

一二

-

-

-

-

-

-

二二

旅館雇入

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

商業

一一

二四

一二

-

九四

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三

薬行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

 一

官吏

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

書生

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

小学校教員

-

-

-

-

-一

-

-

-

-

-

-

-

自転車職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

メリヤス工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

養蜂業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

 一

土工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

鍛治屋

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

金銀細工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

牧師

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

事務員

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

 一

学生

-

二二

一八

-

六三

無職

-

-

-

-

-

-

一八

七五

三九

四七

一二五

二二二

四七〇

三八六

三三

一八

六七

五九

二一

五八

一、六〇〇

 

 右の表が示す如く、彼等は世帯員の場合に於ても、独身者の場合に於ても。共に農業がその大部分を占めて居り、元来彼等は百姓であることが明瞭である。

 然らば彼等が、渡航後は如何なる方面に就職してゐるかに就て、其の間の関係を見やう。

 

 表(・)の(・)一三(・・)

              職業別調査人員(世帯員)

職業

人員

備考

自由労働

一〇七

(人夫、日傭、労働)

人夫職

 

土工

七六

(土木、土工)

土工頭

 

倉庫人夫

 

荷揚人夫

 

荷馬車挽

 

工場雑役

 

砂利採掘

二八

 

荷物運送

 

左官

 

工場機関係

 

理髪職

 

市電運転手

 

墓番

 

人夫請負

 

自動車運転手

 

糞尿汲取

 

広告注文取

 

新聞配達

 

職工

一二

 

鉄工

一四

 

印刷工

 

ゴム職工

 

製菓職工

 

天井板磨工

 

スレート職工

 

ブロマイド職工

 

硝子職工

 

寒暖計職工

 

ボール画職工

 

肥料職工

 

金属職工

 

アンチモニー職工

 

瓦職工

 

労働者飯場

五〇

(労働の傍行ふ向もあり)

行商

 

露店商人

 

空壜買

 

役所工夫

一五

(市役所、区役所、町村)

役所工事人夫

役所衛生人夫

水道局人夫

 

撒水夫

 

不明

 

四〇〇

 

 

 表(・)の(・)一四(・・)

              職業別調査人員(独身者)

現職業

人員

備考

鉄工場職工

二〇

 

鉄網張職工

 

バリカン職工

 

ゴム職工

 

職工

一一

 

工場雑役

三五

 

木工職

一九

 

売薬行商

 

電線工夫

 

外交員

 

電気機械工

 

伸銅職工

 

製鑵職工

 

綿職工

 

バケツ製工

 

理髪見習

 

洋服裁縫工

 

自由労働

三四二

(人夫、日傭、労働)

土工

六六八

(土木、土工)

土工頭

 

官庁人夫

三二

(市役所、区役所、町村)

砂利採掘

二二三

 

商店雑役

 

弁当配達

一一

 

晒職工

 

建築用具工

 

牧場使用人

 

鞄製造工

 

帽子製造工

 

飛行工場職工

 

砂糖職

 

コツク

 

製材職工

 

靴修繕工

 

納豆行商

二九

 

飴行商

 

青物行商

 

荷物配達

 

新聞配達

二七

 

牛乳配達

 

自転車職工

 

印刷職工

 

製図工

 

スリツパ製造工

 

石工

 

蜜豆行商

 

空壜買

 

荷揚人夫

 

自働車運転手並助手

 

撒水夫

 

新聞取次店

 

荷馬車挽

 

玄米パン売り

 

左官手伝

 

砂利積込人夫

一〇

 

製管職人

 

紙加工職

 

郵便集配人

 

ニツケル工

 

パイプ職

 

大理石仕上職

 

メリヤス職工

 

製菓工

 

製氷雇人

 

靴下製造工

 

ネヂ製造工

 

玩具工

 

天井板磨職

 六

 

ブリキ工

一三

 

鋳物工

一七

 

鍍金工

一一

 

カマボコ行商

 

一、六〇〇

 

 

(在京朝鮮人郷里ニ於ケル職業現在職業比較表は省略)

 

 右の表(ヽ)一三(ヽヽ)及び一四(ヽヽ)が示す如く、元来農民であつた彼等は、殆んど全部が、現在に於ては土工、人夫等の自由労働方面に転職し、比較的技術を要する熟練労働方面と、内地語の自由を要する職業の方面とは稀れである。

 いまその転職状況を表に依つて示せば左の通りで、即ち、表(ヽ)の(ヽ)一五(ヽヽ)世帯員の場合、郷里に於ける職業は、総数の八一・二五%が農林業に属するもので、それが現在に於ては六八・二五%の最高率を以て、土木建築方面に転じ、表(ヽ)の(ヽ)一六(ヽヽ)独身者の場合も、総数の八五・二五%が郷里に於ての農林業者であつたものが、現在に於ては総数の八一・〇〇%が土木建築方面に転じて居り、彼等の労働者としての地位と、その方向を明かにして居る。

 

表(・)の(・)一五(・・)

              現在に於ける職業と郷里に於ける職業の大別比較(世帯員)

現在\郷里

工業及鉱業

土木建築

商業

農林業

水産業

通信運輸

戸内使用人

雑業

百分比

工業及鉱業

-

三五

-

-

-

四三

一〇・七五

土木建築

一七

一八

二三二

-

-

-

二七三

六八・二五

商業

-

一二

四一

-

-

-

六二

一三・七五

農林業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

水産業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

通信運輸

-

-

-

一四

-

-

-

-

一四

三・五〇

戸内使用人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

雑業

-

-

-

-

-

-

〇・七五

不明

-

-

-

-

-

-

一・〇〇

一七

三三

三二五

-

-

-

一八

四〇〇

一〇〇・〇〇

百分比

一・七五

四・二五

八・二五

八一・二五

-

-

-

四・五〇

一〇〇・〇〇

-

 

表(・)の(・)一六(ヽヽ)

              現在に於ける職業と郷里に於ける職業の大別比較(独身者)

現在\郷里

工業及鉱業

土木建築

商業

農林業

水産業

通信運輸

戸内使用人

雑業

百分比

工業及鉱業

-

一七

一五五

-

-

一二

一八九

一一・八一

土木建築

一五

五七

一、一三六

-

-

七九

一、二九六

八一・〇〇

商業

-

-

一六

三七

-

-

-

五八

三・六五

農林業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

水産業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

通信運輸

-

-

-

一四

-

-

-

一七

一・〇六

戸内使用人

-

-

-

-

一一

〇・六九

雑業

-

-

一五

-

-

-

一〇

二九

一・八一

一八

九五

一、三六四

-

-

一一二

一、六〇〇

一〇〇・〇〇

百分比

一・一三

〇・五六

五・九四

八五・二五

-

-

〇・一二

七・〇〇

一〇〇・〇〇

-

 

 

二、雇傭関係

            1 就職機会

何等頼る所もない朝鮮人労働者が、はる〴〵内地に渡航して来て、如何なる方法に依り就職機会を得ることが出来るであらうか? 之は甚だ興味ある問題であるばかりでなく、該問題を明にすることは、彼等に対する政策を立つる上に考慮せざるべからざる事項である。

初期に於ける内地移住の朝鮮人労働者は、彼等が渡航する前、已に一定の職業が定つて居り、且つ渡航前に於て選択の自由さへあつた。即ち、当時内地に於ける企業界の好景気は、之が朝鮮にまで波及するやうになり、鉱山、炭坑、開墾事業方面の労働者需要の範囲は、極めて広く、企業当事者は朝鮮にも手を延ばして、労働条件の比較的悪くてもよい朝鮮人労働者の移入に没頭したのである。然るに之等のブローカー式労働者募集の結果は、労働者自身に不利なる点多く、甚だしきは監獄部屋の如きに叩き込まれて、その生死の如何でさへ判明しなくなつた者さへ多く出すやうになつた。爾後朝鮮人労働者は、漸次之等のブローカーの甘言を斥けて、自分自ら内地渡航を企てるやうになり、従つてその職業の如きも渡航後自ら発見せねばならぬやうになつたのである。其の方法の一般的なものとしては、先渡朝鮮同胞に依頼するか、または労働者募集の広告に応じて、大胆に単独の交渉をやるとか。人夫部屋の頭の世話とか、最近に於ては公益職業紹介所の紹介に依ると云つた風で、其の数が増加するにつれて就職の方法もまた新らたに発見されて来るやうになつた。

而して、初期に於ける彼等は、一般内地人労働者と同様に、内地人の親方の下に居り、その生活を支持して来たのであるが、段々其の数が殖へるに従つて、同類意識の喚起と、同類集団の必要と、便利に依り、最近に至つては彼等のみの自治的生活、若くは朝鮮人のみの部屋又は飯場が相当に多くなつて来た。従つて彼等の職業の如きも、之等の部屋頭、人夫頭の世話に依つて就職の機会を得るやうになつて来た。

吾々の調査する処に依ればその就職方法は、左に掲げる表の如き状態であるが、特に注意すべき点は、表(ヽ)の(ヽ)一七(ヽヽ)保護団体の四五・二五%及び表(ヽ)の(ヽ)一八(ヽヽ)保護団体の五一・二五%は、所謂朝鮮人労働者の保護施設の利用を意味するものである。しかし之は一般性のものではなく、本調査が主に之等保護団体を通じて施行したものである関係上一種の特殊的現象であることを断つてをく。

 

表(・)の(・)一七(・・)

               就職機会の調査(世帯員)

職業

保護団体

知人ノ紹介

友人ノ紹介

自分直接

職業紹介所

飯場

親分

募集

前雇主

請負

官庁紹介

兄ノ紹介

自由労働

八〇

一〇

-

-

-

-

-

一〇七

人夫頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

土工

五二

 一

-

-

-

-

-

-

七六

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

倉庫人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

工場雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂利採掘

一二

-

-

-

-

-

-

-

二八

荷物運送

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

左官

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

工場機関係

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

理髪業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

市電運転手

-

-

-

-

-

-

-

 一

-

-

-

-

墓番

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

人夫請負

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自動車運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

糞尿汲取

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

広告注文取

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

一二

鉄工

-

-

-

-

-

-

-

一四

-

-

-

-

一四

印刷工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

天井板磨工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

スレート職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ブロマイド職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

硝子職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

寒暖計職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ボール画職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

肥料職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

金属職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

アンチモニー職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

瓦職人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

労働者飯場

二七

-

二一

-

-

-

-

-

-

-

五〇

行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

露店商人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

役所工夫

一〇

 -

-

-

-

-

-

-

-

一五

役所工事人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

役所衛生人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

水道局人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

不明

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一八一

三九

四六

七九

一〇

一七

一九

四〇〇

百分比

四五・二五

九・七五

一一・五〇

一九・七五

二・五〇

〇・二五

四・二五

四・七五

〇・二五

一・二五

〇・二五

〇・二五

 一〇〇・〇〇

 

表(・)の(・)一八(・・)

               就職機会の調査(独身者)

職業

保護団体

知人ノ紹介

友人ノ紹介

自分直接

職業紹介所

親分

募集

親族ノ紹介

飯場

請負

新聞広告

学校ノ先生

不明

鉄工場職工

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇

鉄網張職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

バリカン職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

工場雑役

-

二八

-

-

-

-

-

-

-

三五

木工職

一七

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

十九

売薬行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

電線工夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

外交員

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

電気機械工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

伸銅職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製鑵職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

綿職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

バケツ製工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

理髪見習

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

洋服裁縫工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自由労働

二五六

三二

一三

一〇

一六

-

-

-

-

-

-

三四二

土工

四一八

五二

二五

五五

四六

-

-

一九

一八

-

-

三二

六六八

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

官庁人夫

一五

-

-

-

-

-

-

三二

砂利採掘

一〇二

一一一

-

-

-

-

-

-

-

-

二二三

商店雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

弁当配達

一〇

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

晒職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

建築用具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

牧場使用人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

鞄製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

帽子製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

飛行工場職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂糖職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

コツク

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製材職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

靴修繕工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

納豆行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二九

二九

飴行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

青物行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷物配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

一七

-

-

-

-

-

-

二七

牛乳配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自転車職工

-

 一

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

印刷職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製図工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

スリツパ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

石工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

密(ママ)豆行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

自働車運転手並助手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞取次店

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

玄米パン売り

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

左官職手伝

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

砂利積込人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇

製管職人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

紙加工職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

郵便集配人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ニツケル工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

パイプ職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

大理石仕上職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

メリヤス職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

製氷雇人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

靴下製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ネヂ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

玩具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

天井板磨職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

ブリキ工

-

一三

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三

鋳物工

-

一七

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一七

鍍金工

-

一一

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

カマボコ行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

八二〇

二五五

九六

二〇四

二四

七三

一九

一九

七七

一、六〇〇

百分比

五一・二五

一五・九四

六・〇〇

一二・七五

一・五〇

四・五六

〇・三八

〇・二五

一・一九

一・一九

〇・〇六

〇・一三

四・八一

一〇〇・〇〇

 

 

            2 労働条件

何等の技術と、熟練を有せざる朝鮮人労働者が一般内地人労働者と自由競争を行ふ上には、自然的に低い労働条件を以て甘ぜねばならぬ。

然らば、彼等がその就職のため、余儀なく強制される労働条件が如何なるものであらうか。

之を例記すれば、即ち、

1.一般に内地人のそれよりも賃金の低廉なること

2.労働時間の他より長きこと

3.危険の伴ふ仕事、穢い仕事、労苦の多き仕事なること

之を実際に就て調査すると、在京朝鮮人労働者は、前説の如く殆んど全部が自由労働者であるが故に、日々にその職を求め、且つ異つた仕事と、新らたなる雇主を探さなければならない。之は日傭労働者として已むを得ない性質のものであるが、その関係から彼等の収入は常に一定せず、また固定的であり得ない。而して、彼等の労働賃銀は、一般に、内地人労働者のそれに比して二割乃至三割少ないのである。思ふにその為に労働市場に於て彼等に対する需要が継続される訳でもある。

また、彼等が主に土木、建築、炭砿業等の麹方面に多く需要されてゐるのは、その労働の危険性と、労苦のより多く随伴するからであらう。又運搬、掃除夫方面に歓迎されてゐるのは穢い方面の仕事であるから他に競争者が比較的僅少なる所以のものであらう。

 

            3 朝鮮人労働者の長所と短所

朝鮮人労働者の、労働者としての長所と短所に就ては、場所と、仕事の方面に依つて雑多なる見解があるやうに思考されるものであるが、左にその代表的なるものを載せて参考に供せんとするものである。

            イ、勤続状態

一、大正九年以降一般ニ職工ノ雇入レヲナササリシヲ以テ、現在者ハ同年ノ在職者三百余名中ヨリノ勤続者ナリ。盛ンニ欠員補充ヲナセシ頃ノ成績ニ徴スレバ、団体的ニ去就スルノ弊アルヲ認ム(A造船所)。

二、内地人ニ比シ勤続状態ハ不良ナルカ如シ、現ニ真面目ニ働クモノト雖モ長キハ二年、普通一年間位ニシテ一旦帰郷シ、数月若シクハ一年間位ヲ超過スレバ、再ヒ帰来スルト云フ状態ナルヲ以テ内地人ニ比シ勤続年限ハ短シ(B製肥合資会社)。

三、一概ニ言ヒ難キモ鮮人ニシテ、一人ノ親方ニ従ツテ四年五年ト行動ヲ共ニスルモノ少ナク、賃銀ノ高低ノミニヨラス仲間ノ勧誘ニ依リ移動スルノ傾向亦尠シトセス(C土木株式会社出張所)。

四、僅少ニテモ自己ノ利益ヲ見ル時ハ他ニ走リ、永続的ニ勤務スルノ意思ニ乏シ(D土木出張所)。

五、内地人ニ比シヤヽ勤続性ヲ欠クノ状態ニテ、短キハ数日ヲ出テスシテ退職スルモノアリ(E製鋼所)。

六、内地人ト大差ナシ、但当社鮮人使用ハ大正六年以来ニシテ、其後引ツツキ今日迄勤続シ居ルモノ相当ニ多シ(F倉庫株式会社神戸支店)。

七、良好(Gホテル)。

八、勤続状態ハ内地人ヨリモ良(Hレストラント)。

 

            ロ、生産量

一、当工場在籍鮮人ノ大部分ハ運搬職工及雑工ニ使役セラル為メ、内地人ニ比シ適確ナル生産量ノ比較ヲナシ得ヘキ標準ヲ得難キモ概シテ著シキ差等ヲ認メス、他ノ穴明取付工ノ例ヲ見ルニ個々別々ニシテ甚シク劣レルモノ、或ハ優良ナルモノアリテ一概ニ生産力ヲ比較シ得サルモ、平均シテ差等ヲ認メス、機械工ハ熟練ノ結果、現在ニテハ其ノ生産量増加スルモ減少スルコトナシ。火造工ハ稍劣ル、要之単純ナル労働及比較的工夫ヲ要セサル職業ニ於テハ内地人ニ比シ差等ヲ認メサルモ、精密ナル職業ニ対シテハ勤続的生産量ヲ増加セントスル、工夫ニ欠クルモノアルが如シ(I造船所)。

二、比較的人物ノ選択ニ努ムル結果トシテ、或場合ニ於テハ鮮人ノ成績良好ナルヲ認ム(J製肥合資会社)。

三、主トシテ職工ノ補充又ハ運搬ニ従事セシメ、其ノ成績ハ内地人ノ中位程度トス(K神戸造船所)。

四、複雑ナル作業ニ従事セシメ居ラサルモ、簡単ナル作業ニ就テハ内地人ニ比シ遜色ヲ認メス(L官業工場)。

五、敏活ナル身体ノ動作ヲナスモノ少ク、且細心注意力乏シキコト、仕事ニ忠実ナル精神少ナキ為労働能率ハ少キモ、力量ヲ主トスル労働ニ於テハ内地人ニ優ル点アリ(M土木出張所)。

六、肩荷役ニ依ル貨物ノ運搬ニ鮮人ノ方優レリ、従ツテ最高収入額モ多シ(N倉庫神戸支店)。

七、普通(Pホテル)。

八、内地人ニ比シ頭ノ鈍キ傾向アルハ免レス、従ツテ或ル一定ノ仕事ヲ反覆スル等ニハ適スル様ナリ、総ジテ重キモノヲ背又ハ肩ノ力ニ依リテ運搬スル等ノ仕事ハ、彼等ノ最モ得意トスル所ナリ(Q土木株式会社出張所)。

 

            ハ、労働ノ耐久力

一、勤務時間中ニ於ケル労働ノ持続力ニ就テ、特ニ内地人ニ比シ早ク疲労スルモノト認メス、従ツテ甲乙ナシ(R造船所)。

二、内地人ト大差ナケレトモ、肩荷役ニヨル貨物ノ運搬ニ就テハ鮮人ノ方遥ニ耐久力強シ(S倉庫神戸支店)。

三、内地人ニ比シ遜色ヲ認メス(T官業工場)。

四、内地人ヨリモ良(Uレストラント及Vホテル)。

五、労働ノ持続力ハ内地人ニ劣ル、内地人ニ比シ耐久力乏シク当工場直接使役者ノ言ニ依レバ、空腹時ニ至レバ全ク意気地ナキ事ハ、忍耐力或ハ意思ノ力乏シキニヨルナラン(W土木株式会社出張所)。

六、労働ノ持続力ハ内地人ニ劣ル(X土木出張所)。

七、略同一ニ近キモ鮮人ノ方受取労働ニ於テ、比較的勤務力強シ、常備ニ於テハ巡視ナキ時ハ鮮人ノ方油ヲ売ルモノ多キ様ニ思ハル(Yゴム工業所)。

 

            ニ、就働中ノ状態

一、能ク内地化シ言語動作ニ於テ一見内地人ト異ル点ナク、使役上著シキ等差ヲ認メズ(Z電気局)。

二、少数ノ優良ナル者ハ凡テ内地人ニ比シ遜色ナク、工場成績モ亦佳良ニシテ監督上顧慮ヲ要セサルモ、一般ハ作業上内地人以上指導監督ヲ要スルモノ多シ(A造船所)。

三、大体ニ於テ真面目ニ勤務スルモノ多ク、従ツテ鮮人ハ使用ノ方面ニヨツテ内地人ヨリ遥ニ便宜ト成績ヲ挙ゲ得ルモノト認ム然ルニ概シテ鮮人ハ監督ノ当否ガ大ニ彼等ノ勤怠ノ上ニ、影響アルハ否定シ難シ(B製肥株式会社)。

四、内地人に比し責任観念ニ乏シク、且聊カ怠惰ノ風アリ、就働中ハ特ニ注意監督スルヲ要ス(G倉庫神戸支店)。

五、監督上格別不具合ヲ感セヌ(D官業工場)。

六、動作不活溌ニシテ勤労内地人ニ劣ル、絶ヘス監督ヲ附スルノ必要ヲ認ム(E土木出張所)。

七、概シテ情動者多ク、監督者ナクハ熱心ニ作業セサルモノアリ(F製鋼所)。

八、怠惰性ノモノアリ従ツテ監督上注意ヲ要ス(G造船所)。

 

            ホ、鮮人労働者ノ美点

一、イ、如何ナル作業モ意トセサルコト、比較的少額ノ給料ニテ格別不平ヲ違ヘサルコト。

ロ、質素ニシテ粗食ニ甘ンズルコト(H造船所)。

二、イ、主人ヲ思フ点ハ内地人ニ優ル。

ロ、命セラレタコトハ取捨スルコトナク正直ニ之ヲ行フ。

ハ、全市ノ鮮人毎月自己ノ給料ヨリ拾円乃至弐拾円ヲ、郷里ナル父母妻子ノ許ニ送金シ居ルハ内地人ノ比ニ非ス。

二(ママ)、父母ニ対スル孝心ノ深キコト、其安否ハ毎月一、二回欠クルモノナシ(I製肥合資会社)。

三、性概シテ朴直ナルヲ以テ監督宜シキヲ得バ、内地人ヨリ使用シ易シ(J倉庫神戸支店)。

四、従順ナルヲ美点トス(K官業工場)。

五、内地人ノ忌ミ嫌ウ仕事モ甘ンジテ就業スル点(L土木出張所)。

六、不潔ナル作業ニ於テモ別ニ意トスルコトナク、従事シ簡単ナル作業ハ寧ロ内地人ニ比シ優ル感アリ(M製鋼所)。

七、目下当工場ニ使役スルモノ内地人ニ比シ、身体ノ汚ルヽ等意ニ介セス、従ツテ其ノ方面ノ仕事ニ従事セシ者ハ尚月々収入ノ内ヨリ貯金ヲナスカ、国元ニ送金スルカ概シテ心懸ケ感心スベキモノ多ク、煙草、酒ヲ好ム傾向アレトモ収入ノ関係アランモ自ラ単独ニ賄等ノ事ヲセス、三度ノ食事ヲ唯一ノ慰安トスルモノヽ如ク、遊里ニ行クモノ尠シ(N土木株式会社出張所)。

 

            ヘ、鮮人労働者ノ短所

一、イ、一見従事(ママ)ニ似タレドモ、偏見ノ為甚シク表裏アリ、言語ノ関係上充分意思ノ疎通ヲ図リ難シ。

  コ(ママ)、怠惰ノ傾向アリ、而モ物事ニ雷同シ易シ。

  ハ、敏活ヲ欠クコト、愛嬌ニ乏シキコト、欠勤率ノ多キコト、勤続者ノ少キコト、不潔ナルコト(A造船所)。

二、イ、自己ノ失態ヲモ決シテ謝罪セサルコト。

ロ、性頑強ニシテ一旦思ヒツキタルコトハ、更ニ猶予ヲ与ヘス、例ヘハ一旦帰郷セント思ヒ立チ又休養セント思ヒ立テシ場合ニ、雇主ガ如何ニ人員ノ都合上之ガ延期ヲ懇望スル場合アルモ之ニ応セス。

ハ、狡イ性質ヲ有シ、日本語ニ通スル鮮人ト雖モ自己ニ不利ト見ルヤ、鮮語ヲ以テ之ニ対シ全々日本語ニ通セサル装ヒヲナス(B製肥合資会社)。

三、短気ナリ(Cカフエーバウリスタ)。

四、敏活ヲ欠ク(D鉄道局鷹取工場)。

五、忠実ヲ欠ク、而モ雇傭主ガ如何ニ自己ヲ信用シ居レルカヲ知ルノ明ナシ(E土木出張所)。

六、殊更ニ怠惰ト認メサルモ、能力低キ結果ヨリ来ル自然ノ傾向ト認ム(F土木出張所)。

七、イ、思慮周密ナラス、表裏アリ、監督者ナキトキハ怠惰ニ流レ易シ、大ニ注意ヲ要ス。

ロ、嘘飾ノ言ヲ弄シ、盗癖ヲ有シ、金銭ニ対シ、頗ル執着心強烈ナリ(G製鋼所)。

 

            ト、健康状態

一、大概ニ於テ内地人ト同様良好テアル。

と言ふ一致した回答に接することを得たので個々の掲出を省略する。

 

            チ、衛生状態

一、内地人ニ比シ稍劣ル(A電気局)。

一、一概ニ衛生思想ニ乏シ、現在着衣ノ如キ常ニ一種ノ臭気ヲ放テル者往々アリ(B造船所)。

一、衛生思想ハ多ク無関心ナルガ如シト雖モ、一■病気等ニ罹ル時ハ非常ニ用心深ク、養生スル点ニ於テハ意想外ナリ(C製肥株式会社)。

一、永住セルヲ以テ内地人ニ同比シ特記スル事ナシ(D造船神戸支店)。

一、衛生思想ニ乏シ(E倉庫神戸支店)。

一、内地人ニ比シ稍衛生的観念ヲ欠ケルモノヽ如シ(F官業工場)。

一、衛生思想ナシ(G土木出張所)。

一、内地人ト異ラス、尤モ直接使役者側ニ於テ絶ヘス監督ト注意ヲ怠ラサルニ依ル(H土木株式会社出張所)。

一、内地人ニ比シ衛生思想甚ダ少シ(Iゴム工業所)。

一、衛生思想ニ乏シキガ如ク、内地人トハ其点ニ於テ異ル点アリ(Jゴム株式会社)。

一、衛生思想ノ如キハ殆ド皆無ト言フモ過言ニ非スト信ス(K製鋼所)。

一、衛生思想ニ乏シ(L漂白工場)。

一、衛生思想ニ乏シ(M造船所)。

一、衛生思想ハ稍良好(N料理店)。

一、一般良好ナリ(Oホテル)。

一、普通(Pパツキング株式会社)。

 

            リ、団体又ハ共同生活ニ関シテ

一、言語動作人情等翌内地化シ、性温順ニシテ常ニ内地人ニ接シ、鮮人トハ多ク交際セサル様見受ケラル(A電気局)。

二、イ、言語風俗ヲ異ニスル出稼地ニ於テ、郷■相集リ合宿等ヲナスハ自然ノ人情ニシテ、団結シ易キモ、亦当然ナルガ当社従業員中ニ特別ノ団体アルヲ聞カス。

ロ、生活上、作業上、慣習、性質、環境等ノ関係上、内地人トノ共同一致ハ期シ難シ(B造船所)。

三、鮮人ハ至ツテ団結心ニ富ミ、善悪共ニ一致シテ当ル風アリト雖モ、共同生活ニ至ツテハ余リ認ムベキモノナシ、全ク自己主義ニ属ス(C製肥株式会社)。

四、内地人ニ比シ共同生活持続ノ点ニハ遜色アリ(Dレストラント)。

五、仲ヨシ(Eホテル)。

六、団結力相当ニ強シ(F倉庫株式会社)。

七、鮮人間ノ団結力ハ強キモ、内地人トノ団結及共同生活ハ困難ナルガ如シ(G官業工場)。

八、団結力極メテ強ク仲間ノ一人内地人ヨリ侮辱ヲ受クル等ノコトアル場合、直接事件ニ関係ナキモ直チニ同情的態度ヲ以テ之ト同一行動ニ出ヅルハ、常ニ見ル所、鮮人同志ノ共同生活ハ却テ能ク之ヲ行フモノノ如シ、即チ内地人ニ屡見ル所ノ他ノ讒侮中傷、己レ一人立場ヲヨクセントスル等ノ性癖尠キハトツテ以テ内地人ノ学ベ(ママ)ベキ所ナラザルカ(H土木株式会社出張所)。

九、イ、団結力殊ニ強シ。

ロ、言語不通ノ為メ相互間ニ誤解ヲ生シ易キ感アルモ、未タ嘗テ喧嘩口論セシコトナシ(I製鋼所)。

十、或ル鮮人ヲ傭役セハ他ノ鮮人ハ之ヲ手蔓ニ運動ヲナシ、紹介者トシテ就職ノ申込ニ来ル、而シテ彼等ハ少数ノ間ハ極メテ従順風ヲ装フモ、多数トナルニ従ツテ結束シテ各種ノ要求ヲナス弊アリ、而モ自己ノ地位ト価値ヲ考ヘズニ、内地人ノ技能優秀ナルモノモ、自己ノ低級ナルモノモ一律ニ考ヘ、賃銀ノ増額、等級ノ撤廃ヲ強要セントス、各人ノ技能ニ応ジ支給スル賃銀ノ等差等ハ、恰モ差別的待遇ノ如ク疑ヒ、仮令増額シテモ当然ノ待遇ナルカノ如クニ考ヘ敢テ之ニ対シ、満足ノ意ヲ表スルコトナシ、更ニ次カラ次ヘ増額ヲ要求ス、要スルニ団結的ニ結束シ、不合理ナル要求ヲナサントスル傾向アルカ為メ、使役上困難ナル点ヲ尠イシトセス(某ホテル某氏談)。

――「以上在神半島民族の現状」(神戸市調)に依る――

 

            4 失業問題其他

 保護施設、人夫部屋、労働飯場等に居住する朝鮮人労働者は、比較的失業率が少いけれども、単独に居住し労働市場に於て自由競争的に職業を求めつゝある人々に於ては、相当に高い失業率を示して居る。

 東京府職業紹介所の調査する処に依ると、同所に於ける已往五ヶ年間の朝鮮人労働者取扱成績に就て之を見ても其間の消息を知ることが出来る。仍ち

 

 

求人数

求職数

就職数

大正十三年

一八五

八〇九

一四六

大正十四年

二八七

一、三四七

一五四

大正十五年

昭和元年

二九三

一、五〇三

一七五

昭和二年

二二七

一、五三七

一四五

昭和三年(九月九日迄)

二四七

九三五

九四

一、二三九

六、一三一

七一四

 

右の数字が物語るが如く、求職者の計六、一三一人に対して、求人が一、二三九人しか無かつたことは、一般に彼等に対する需要が僅少であることを示すものであり、また七一四人の就職しか見ないといふことは、彼等の失業率の如何に大なるものであるかを推測するに足る好材料である。

 更に左の表に就て見るならば、即ち表(ヽ)の(ヽ)一九(ヽヽ)世帯員の場合、五月中に一日以上失業をしたる者が総数の五六・二五%で、失業日の無きものが四三・七五%である。而して之を更に分析すれば六日以上八日以下が最高で総数の一七・五〇%を占めて居り、十六日以上が最低の一・七五%である。而して、之を職業別に見るなら工場労働者の如き固定的職業方面に割合に少く、日傭労働者方面が遥かに失業率が高い状態にある。即ち、職工が四日休めば、自由労働者が六日、荷揚人夫が九日以下職業を失ふといふ割合で彼等の五月中に於ける平均失業日数は六日に該当してゐる。

 

表(・)の(・)一九(・・)

               失業状況(世帯員)

職業

一日

三日以下

五日同

八日同

十日同

十五日同

十六日以上

失業日ナシ

平均失業日数

自由労働

二四

二一

一九

一四

一四

一〇七

六・二九

人夫頭

-

-

-

-

-

六・五〇

土工

一二

一九

一九

-

一七

七六

五・五四

土工頭

-

-

-

-

-

六・六三

倉庫人夫

-

-

-

-

-

-

五・〇〇

荷揚人夫

-

-

-

-

-

九・〇〇

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

七・〇〇

工場雑役

-

-

-

-

-

七・〇〇

砂利採掘

-

一二

二八

六・七五

荷物運送

-

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

左官

-

-

-

-

-

-

-

四・〇〇

工場機関係

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

理髪業

-

-

-

-

-

-

-

-

市電運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

墓番

-

-

-

-

-

-

-

-

人夫請負

-

-

-

-

-

五・五〇

自動車運転手

-

--

-

-

-

-

一・〇〇

糞尿汲取

-

-

-

-

-

-

-

-

広告注文取

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

一二

四・三三

鉄工

-

-

-

-

-

-

-

一四

一四

-

印刷工

-

-

-

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓職工

-

-

-

-

-

-

-

五・〇〇

天井板磨工

-

-

-

-

-

-

-

-

スレート職工

-

-

-

-

-

-

-

-

ブロマイド職工

-

-

-

-

-

-

-

-

硝子職工

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

寒暖計職工

-

-

-

-

-

-

-

-

ボール画職工

-

-

-

-

-

-

-

-

肥料職工

-

-

-

-

-

-

-

-

金属職工

-

-

-

-

-

-

-

-

アンチモニー職工

-

-

-

-

-

-

-

-

瓦職工

-

-

-

-

-

-

-

五・〇〇

労働者飯場

-

-

四四

五〇

五・五〇

行商

-

-

-

-

-

-

-

-

露店商人

-

-

-

-

-

-

一四・〇〇

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

役所工夫

-

-

-

-

-

一二

一五

六・〇〇

役所工事人夫

-

-

-

-

-

-

六・三三

役所衛生人夫

-

-

-

-

-

五・五〇

水道局人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

-

-

三・〇〇

不明

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

四四

五八

七〇

一八

一七

一七五

四〇〇

六・〇〇

百分比

二・七五

一一・〇〇

一四・五〇

一七・五〇

四・五〇

四・二五

一・七五

四三・七五

一〇〇・〇〇

-

 

表(・)の(・)二〇(・・)

               失業状況(独身者)

職業

一日

三日以下

五日同

八日同

十日同

十五日同

十六日以上

失業日ナシ

平均失業日数

鉄工場職工

-

-

-

-

-

一八

二〇

八・〇〇

鉄網張職工

-

-

-

-

-

-

-

一一・七五

バリカン職工

-

-

-

-

-

-

一〇・〇〇

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

-

-

一一

五・三三

工場雑役

一〇

-

三五

七・二四

木工職

-

-

-

-

-

-

一八

十九

五・〇〇

売薬行商

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

電線工夫

-

-

-

-

-

-

一五・六七

外交員

-

-

-

-

-

-

-

-

電気機械工

-

-

-

-

-

-

一・〇〇

伸銅職工

-

-

-

-

-

-

-

-

製鑵職工

-

-

-

-

-

-

-

-

綿職工

-

-

-

-

-

-

-

-

バケツ製工

-

-

-

-

-

-

-

-

理髪見習

-

-

-

-

-

-

-

二・〇〇

洋服裁縫工

-

-

-

-

-

-

-

三・〇〇

自由労働

二〇

六五

四一

六九

四八

五五

二八

一六

三四二

七・九六

土工

四七

四八

八八

一〇二

九二

五七

二五

二三九

六六八

六・八八

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

官庁人夫

-

-

一七

三二

九・八七

砂利採掘

-

三五

八一

四〇

一五

四六

二二三

五・四五

商店雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

弁当配達

-

-

-

-

-

-

-

一一

一一

-

晒職工

-

-

-

-

-

-

-

-

建築用具工

-

-

-

-

-

-

-

-

牧場使用人

-

-

-

-

-

-

-

-

鞄製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

帽子製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

飛行工場職工

-

-

-

-

-

-

-

-

砂糖職

-

-

-

-

-

-

-

-

コツク

-

-

-

-

-

-

-

-

製材職工

-

-

-

-

-

-

二・〇〇

靴修繕工

-

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

納豆行商

-

-

-

-

二一

二九

一七・四六

飴行商

-

-

-

-

-

-

三・〇〇

青物行商

-

-

-

-

-

-

-

-

荷物配達

-

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

二七

二七

-

牛乳配達

-

-

-

-

-

-

-

-

自転車職工

-

-

-

-

-

-

二・〇〇

印刷職工

-

-

-

-

-

-

-

-

製図工

-

-

-

-

-

-

-

-

スリツパ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

石工

-

-

-

-

-

-

-

-

密(ママ)豆行商

-

-

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

五・〇〇

荷揚人夫

-

-

-

-

七・六七

自働車運転手並助手

-

-

-

-

三・六〇

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

新聞取次店

-

-

-

-

-

-

一(ママ)

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

玄米パン売り

-

-

-

-

-

-

-

一七・〇〇

左官職手伝

-

-

-

-

-

-

-

三・〇〇

砂利積込人夫

-

-

-

一〇

六・八九

製管職人

-

-

-

-

-

-

-

三・〇〇

紙加工職

-

-

-

-

-

-

一・五〇

郵便集配人

-

-

-

-

-

-

-

二・〇〇

ニツケル工

-

-

-

-

-

-

-

-

パイプ職

-

-

-

-

-

-

-

-

大理石仕上職

-

-

-

-

-

-

-

四・〇〇

メリヤス職工

-

-

-

-

-

-

-

-

製菓工

-

-

-

-

-

-

三・〇〇

製氷雇人

-

-

-

-

-

-

-

二・〇〇

靴下製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

ネヂ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

玩具工

-

-

-

-

-

-

-

-

天井板磨職

-

-

-

-

-

-

-

五・〇〇

ブリキ工

-

-

-

-

-

-

-

一三

一三

-

鋳物工

-

-

-

-

-

-

-

一七

一七

-

鍍金工

-

-

-

-

-

-

-

一一

一一

-

カマボコ行商

-

-

-

-

-

-

-

-

七二

一七〇

二三一

二三一

一七三

一一〇

八四

五二八

一、六〇〇

四・八六

百分比

四・五六

一〇・六三

一四・四四

一四・四四

一〇・八一

六・八八

五・二五

三三・〇〇

一〇〇・〇〇

-

 

 更に、表(ヽ)の(ヽ)二〇(ヽヽ)独身者に就て之を観てもほゞ状態で、五月中に失業したる者は総数の六七・〇〇%に該当し矢張り工場労働者の如き比較的固定的職業の方面が少く、日傭労働者に多い状態である。

 

 

第四章 朝鮮人労働者の生活状況

 

一、総論

内地に在住する多くの朝鮮人労働者は、郷里より内地の方が、生活に楽で暮し易いと云つてゐる。しかしながら吾々が彼等の外的生活を見るに、決して以上の彼等の述懐が肯定出来ないほど悲惨なやうでならない。

 彼等自らが楽で暮し易いと云へば、第三者にとつてそれが如何に認識されやうとも、それまでの事ではあるが吾々はこの疑問を解く必要があらうと思ふ。これこそ一種の老婆心であり、余計なおせつ(ヽヽヽ)かい(ヽヽ)であるかもしれないが、しかしその疑問を解くことは、吾々が彼等に近付く第一歩であり、彼等に対する熱愛の表明であると思ふものである。

 彼等の内地に於ける生活は事実に於て、郷里のそれよりは楽である。しかしながらこの楽であると云ふことは便利とか、不便であると云つた意味を含んだ楽ではなくて、生存に必要な食物を得るために楽であるといふことに過ぎない。即ち、如何なる手段と、方法を構(ママ)じても一家眷属を扶養し、自分の腹をふくらます(ヽヽヽヽヽ)ことは到底不可能である郷里の土地よりは、働きさえすれば喰へるし、一家眷属が満腹が出来る内地の方が遥かに楽であるといふのである。

 けれどもその云ふ処の楽を得るためには、如何なる辛苦があらうとも、周囲が如何に自分を卑見し、蔑視しやうとも、それは問題の外で彼等にとつては喰ふことのみが人生の第一次的な意義なのである。彼等は、真に喰はんがために働き、喰んがためにのみ身に襤褸を纏ひ、喰はんがためにのみ侮辱と、卑見を甘受してゐるのである。その意味に於て生活が楽であるといふのである。

 けれども吾々は、彼等のこの言葉が決して自然であり、本意であると速断してはならない。その楽であるといふ言葉の奥には、云ひ知れぬ生活に対する絶望と、諦めと、人生の光明に対する熱意が已に薄らいでゐる悲愴な感慨が含まれてゐることを悟らねばならぬ。仮りにそれが無意識的に云ふ処の言葉にしても如何にそれは悲しき事実であらう。

 彼等が若し現代文明の潮流を意識し、生存競争の真只中に登場すべき勇気と、実力と、自負心があるものなら彼等は決して現在の自分の生活が人間の生活として幸福であり、楽であるとは云へないであらう。

 吾々は、彼等の生活が決して楽であるとは思はない。またそればかりでなく、未だに都会労働者の一人前の生活レベルにも到達してゐない。巷のどん底に蠢く最下級の生活群であり、極めて恵まれざる悲惨なる社会群であることを肯定せずにはゐられないのである。

 吾々は朝鮮人労働者が四人乃至五人の家族を持つて、月収六十三円七十一銭(平均収入)に依り一ヶ月の生計を立てなければならないし、また独身者に於ても月収僅かに四十四円二十一銭(平均収入)を以て、若き時代に文化の波を泳ぎ廻り、青雲の志を遂げんとするに充分なるものとは考へられない。

 彼等のあるものは、赤児を背負つた妻を夜の街道に行商を行はしめ、学齢に達した児女に行商のバスケツトを持たせて、やはり淫楽の夜の街に彷徨せしめなければならない状態にあるのが事実である。寒天に夜露に濡れながら「人参飴買つて頂戴・・・・」と執拗に付き纏ふ彼等の姿を観た自分の感慨は、むしろ悲惨そのものゝやうでならない。

 彼等の経済的生活に就ては、別に之を考察するであらうが、概して彼等の生活は、砂で小川の流れを防ぐやうなもので、一方を防げば一方が乱れると云つた様なもので転手固舞ひのやりくりに他ならない。斯様な状態で一攫千金の夢も到底実現しさうもなければ、アフリカの成金のやうな好い工合の生活も到底望めないのである。彼等は、たゞ一心にその日〳〵のお腹を満すために、あらゆる屈辱の下に、辛苦を続けて働かなければならない運命の定めに過ぎないのだ。

「稼ぐに追付く貧乏なし」とは、もはや時代的な追憶ではなからうか? 彼等の中には、已に頭上に白髪を頂き、その気力ももはや漏水しきつてゐるものが多い。彼等は、最早老の身を処置する用意を必要とせられてゐる。異境に彷徨ふ、彼等の蒼ざめた面や、衰へた姿が吾々には人生の敗残の悲哀そのものゝやうに考へられてならないのだ。

 吾々は、次ぎに彼等の生活状況の実際に就て少しばかり窺ふことにしやう。

 

1 年齢調査

 朝鮮人労働者の年齢に就て調査するに在京朝鮮人労働者は世帯員の場合は総数の三五・五〇%の三十一歳乃至三十五歳の階級が最高であり、独身者の場合は、総数の二八・一九%の二十六歳乃至三十歳が最高で、次位が二六・六三%で二十七歳乃至三十歳までの階級である。之に依つても世帯員はその年齢に於て独身者に比し高齢であることが明確である。いまそれを職業別の表にして現はせば仍ち左の通りである。

 

表(・)の(・)二一(・・)

               職業別年齢階級調(世帯員)

職業

一〇歳-二〇歳

二一歳-二五歳

二六歳-三〇歳

三一歳-三五歳

三六歳-四〇歳

四一歳-五〇歳

五一歳以上

自由労働

-

二八

三四

二二

一七

一〇七

人夫頭

-

-

-

-

-

土工

-

一七

三二

一五

七六

土工頭

-

-

-

-

倉庫人夫

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

工場雑役

-

-

-

-

-

砂利採掘

-

一六

二八

荷物運送

-

-

-

-

-

-

左官

-

-

-

-

-

-

工場機関係

-

-

-

-

-

理髪業

-

-

-

-

-

-

市電運転手

-

-

-

-

-

-

墓番

-

-

-

-

-

-

人夫請負

-

-

-

自動車運転手

-

-

-

-

糞尿汲取

-

-

-

-

-

-

広告注文取

-

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

-

職工

-

-

一二

鉄工

-

-

一四

印刷工

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

製菓職工

-

-

-

-

-

-

天井板磨工

-

-

-

-

-

スレート職工

-

-

-

-

-

-

ブロマイド職工

-

-

-

-

-

-

硝子職工

-

-

-

-

-

-

寒暖計職工

-

-

-

-

-

-

-

ボール画職工

-

-

-

-

-

-

肥料職工

-

-

-

-

-

-

金属職工

-

-

-

-

-

-

アンチモニー職工

-

-

-

-

-

-

瓦職人

-

-

-

-

-

-

労働者飯場

-

-

一〇

一六

一三

五〇

行商

-

-

露店商人

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

役所工夫

-

-

一五

役所工事人夫

-

-

-

-

役所衛生人夫

-

-

-

-

水道局人夫

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

-

不明

-

-

-

-

一九

九四

一四二

八三

四九

一三

四〇〇

百分比

-

五・一五

二三・一〇

三五・五〇

二〇・七五

一二・二五

三・二五

一〇〇・〇〇

 

表(・)の(・)二二(・・)

職業別年齢階級調(独身者)

職業

一〇歳-二〇歳

二一歳-二五歳

二六歳-三〇歳

三一歳-三五歳

三六歳-四〇歳

四一歳-五〇歳

五一歳以上

鉄工場職工

-

-

二〇

鉄網張職工

-

-

-

-

-

バリカン職工

-

-

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

一一

工場雑役

一一

三五

木工職

-

-

-

十九

売薬行商

-

-

-

-

-

電線工夫

-

-

-

-

-

外交員

-

-

-

-

-

-

電気機械工

-

-

-

-

伸銅職工

-

-

-

-

-

-

製鑵職工

-

-

-

-

綿職工

-

-

-

-

-

-

バケツ製工

-

-

-

-

-

-

理髪見習

-

-

-

-

-

-

洋服裁縫工

-

-

-

-

-

-

自由労働

一七

一一一

一〇〇

五七

三五

二二

-

三四二

土工

三四

一四八

二〇五

一二五

九八

四九

六六八

土工頭

-

-

-

官庁人夫

-

三二

砂利採掘

二七

五六

八〇

三三

二二

二二三

商店雑役

-

-

-

-

-

弁当配達

-

-

-

一一

晒職工

-

-

-

-

-

-

建築用具工

-

-

-

-

-

-

牧場使用人

-

-

-

-

-

-

鞄製造工

-

-

-

-

-

-

帽子製造工

-

-

-

-

-

飛行工場職工

-

-

-

-

-

-

砂糖職

-

-

-

コツク

-

-

-

-

-

-

製材職工

-

-

-

-

-

靴修繕工

-

-

-

-

-

-

納豆行商

二一

-

-

-

-

-

二九

飴行商

-

-

-

青物行商

-

-

-

-

-

-

荷物配達

-

-

-

-

-

新聞配達

一六

-

-

-

二七

牛乳配達

-

-

-

-

-

-

自転車職工

-

-

-

-

-

印刷職工

-

-

-

-

-

-

製図工

-

-

-

-

-

-

スリツパ製造工

-

-

-

-

-

-

石工

-

-

-

-

-

-

蜜豆行商

-

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

-

自働車運転手並助手

-

-

-

-

撒水夫

-

-

-

新聞取次店

-

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

玄米パン売り

-

-

-

-

-

-

左官職手伝

-

-

-

-

-

-

砂利積込人夫

-

-

-

-

-

一〇

製管職人

-

-

-

-

-

-

紙加工職

 

-

-

-

-

-

郵便集配人

-

-

-

-

-

-

ニツケル工

-

-

-

-

-

パイプ職

-

-

-

-

大理石仕上職

-

-

-

-

-

-

メリヤス職工

-

-

-

-

-

-

製菓工

-

-

-

-

-

-

製氷雇人

-

-

-

-

-

-

靴下製造工

-

-

-

-

-

-

ネヂ製造工

-

-

-

玩具工

-

-

-

-

天井板磨職

-

-

ブリキ工

-

-

-

一三

鋳物工

-

一七

鍍金工

-

-

-

-

一一

カマボコ行商

-

-

-

-

-

-

一一八

四二六

四五一

二九七

一八七

一〇六

一五

一、六〇〇

百分比

七・三八

二六・六三

二八・一九

一八・五六

一一・六九

六・六三

〇・九四

一〇〇・〇〇

 

 

2 住居状況調査

イ 世帯持ち

 在京朝鮮人労働者の住居状況に就て調査すると、一戸を持ち世帯を構成せるものゝ数は僅か一、六六五戸にして、その世帯人員数は男が四千八十五人、女が千四百六十六人に過ぎない。

 彼等の多くは、府下に於ける細民住居地帯である、三河島町、日暮里町、千住町、南千住町、寺島町、吾嬬町、亀戸町、大井町、淀橋町、高田町、立川町等に住居し、市内としては本所区、深川区、芝区、小石川区、神田区、等に多く居住してゐる。而して彼等は、その殆んど全部がバラツク同様の長屋に住居するもので、中には震災当時の焼トタンや、板を買ひ集めて自らバラツクのやうな仮小屋を架設して一家のものが雨露をしのぐものもあり保護施設の内部等に共同住居若くは雑居するものも尠くない。現在彼等の住宅難は非常なるものである、朝鮮人と云へば貸家を借りることも不可能な状態で内地人の偽名を使つて借りる等実際彼等の住居には多くの悲喜劇が常に演じられるのである。

 彼等の住居してゐる状況に就て之を調べて見ると、その多くは夫婦又は夫婦児の家族の外に気心の知れた同居人を宿泊せしめて、共同的の生活を営むと同時に、就職其他不時の災難に際しては互に相助けあつてゐる様である。

 本調査に依ると、彼等の一世帯当りの平均人員は三・二四人であり、一世帯が使用しつゝある部屋の平均畳数は九・二二畳に該当してゐる。彼等が寝起きしてゐる一人当りの平均畳数は二・八五畳である。

 一人当り二・八五畳の平均畳数は、府下の細民窟に於けるそれに比較して決して劣るものではないが、本調査に於ては生計上の収入支出の複雑性を防ぐため同居は之を別表に調査記入せしめたるため、自然実際上のそれとは多少相違がある。彼等の中のあるものは、一畳にも当らないほどのものも尠くないのである。いまそれを畳数別の表に依つて示せば左の如くである。

 

表(・)の(・)二三(・・)

住居状況調(世帯員)

畳数別

世帯数

人員

一世帯当平均畳数

 畳

一人当平均畳数

 畳

三畳以下

一七

二・五八

〇・九一

四畳半以下

三二

八九

四・〇三

一・四五

六畳以下

一〇二

三二四

五・四七

一・七二

八畳以下

七九

二四六

七・九二

二・五四

一〇畳以下

七五

二二八

七・二〇

三・〇三

一二畳以下

二七

九〇

一一・七二

三・五二

十五畳以下

三一

九五

一三・九五

四・五五

二〇畳以下

三六

一五一

一七・九九

四・二九

三〇畳以上

一二

五六

二二・八三

四・八九

計平均

四〇〇

一、二九六

九・二二

二・八五

 

 

ロ 独身者

 屡々論述したるが如く、在京朝鮮人労働者の約九割は独身者である。

彼等の約一割を占めてゐる借間或ひは借家の生活者を除いた後は殆んど全部が保護施設、人夫部屋、飯場、木賃宿、簡易宿泊所等に住居するもので、就中朝鮮人経営の労働現場に居住するものが近時に至り特に多くなつた。

 而して、この住居状況を職業的に考察すると、工場労働者の如き比較的固定的方面の仕事に従事してゐる労働者は、主に借家、借間等に独居若くは共同に住居してゐるものが多く、飯場、人夫部屋等に居住する者は、その殆半が日傭労働者の群である。

 独身者の住居状況を分類すれば左の通りである。

 

表(・)の(・)二四(・・)

住居状況調(独身者)

住居別

人員

百分比

借家独居

〇・三一

借家同居

一八

一・一三

借間独居

三六

二・二五

借間同居

七三

四・五六

寄宿舎

〇・〇六

宿泊所

五四四

三四・〇〇

木賃宿

-

-

部屋

九〇七

五六・六九

飯場

-

-

主人持住込

一六

一・〇〇

   計

一、六〇〇

一〇〇・〇〇4

 

 更に、彼等単身者が已婚者であるか、未婚者であるかに就て調査するに彼等の六割りが未婚者に属し、その四割が已婚者である。この四割りを占めてゐる已婚者は現在こそ単身者であるが、その経済生活の内容は世帯持ち同様の「仕送り」といふ負担を持つてゐることを見逃してはならない。即ち、彼等は故郷若くは若くは其他の地方に妻子を有するもので、妻子又は両親のために、毎月幾何かの送金を為しつゝあるのである。

 

 

表(・)の(・)二五(・・)

配偶者有無調

年齢階級別

実数

百分比

 

有%

無%

計%

一〇歳-二〇歳

三九

八〇

一一九

三二・七七

六七・二三

一〇〇・〇〇

二一歳-二五歳

一〇三

三二〇

四二三

二・三五

七五・六五

一〇〇・〇〇

二六歳-三〇歳

一七六

二七六

四五二

三八・九四

六一・〇六

一〇〇・〇〇

三一歳-三五歳

一三九

一五八

二九七

四六・八〇

五三・二〇

一〇〇・〇〇

三六歳-四〇歳

八三

一〇五

一八八

四四・一五

五五・八五

一〇〇・〇〇

四一歳-五〇歳

五三

五三

一〇六

五〇・〇〇

五〇・〇〇

一〇〇・〇〇

五一歳以上

一五

四六・六七

五三・三三

一〇〇・〇〇

  計

六〇〇

一、〇〇〇

一、六〇〇

三七・五〇

六二・五〇

一〇〇・〇〇

 

 

二 経済生活の内容概観

1 収入

労働賃銀は、労働者生活の標準を規定し、その全部を支配するもので、彼等の実生活は常に之に依つて牽制されるのである。一攫千金の夢を抱いて単身他郷の労働市場に乗込んだ朝鮮人労働者も、洩れなくこの法則に支配されるのは言を俟たない。

勿論吾々は、経済上の所得に依つて、人間生活の幸福を評価せんとするものではないけれども、彼等の移住原因と、その理由が総体的に、経済生活の伸張に存する限ぎり、現在の生活は決して幸福であるとは云ひ難いのである。彼等は、労働者階級に於ても、最下級に属するものでその生活の貧苦なる点は想像の外である。

 いま吾々は、本調査の結果に依り彼等の経済的生活の内容を管見せう。

 左に示す表(ヽ)の(ヽ)二六(ヽヽ)世帯員の月収に就て見るに、技術的労働者は、その数に於て甚だ僅少ではあるが比較的高率の賃金を取り、また固定的でもある。理髪業の百五十円が最高であり、百二十三円の市電運転手が次位を占めてゐる状態で、彼等は、在京年数も相当に古く、技術的に云つても一人前の腕を以てゐるやうである。けれども日傭労働者の方面に就て見ると、前者とは遥かに相違を来し、労働者飯場の如き相当に収入が高率でなければならないものでさへ百一円十二銭が最高である状態で、平の土方が五十二円三十四銭、自由労働者が五十四円七十五銭である。

 然して、この両者の平均月収は六十三円七十一銭であり、収入階級別に之を観ると五十円未満の階級が最高で総数の二七・〇〇%であり、二十五円未満の階級が最低の〇・五〇%を示してゐるから、実質的に云つて彼等の平均収入は五十円前後にしか該当してゐない状態である。

 しかるにこの世帯持ちの月収には、世帯主以外の家族収入も混入してゐるから、これを分析して見ることは極めて必要な事柄である。即ち本調査に於ける、世帯持ちの約六割は家族及び其他の収入を有する世帯で、之を例記すれば仍ち

配偶者の収入を有する世帯

四二

子女の収入を有する世帯

二一

其他の収入(賄所得、部屋、借金、貯金引出、国本其他よりの送金等)を有する世帯

五一

の如くで、その収入の平均高は、配偶者の収入が一人当二十三円四十二銭、子女の収入が二十八円、其他の収入が三十五円八十六銭である。

 斯くの如く、左表に表はれる処の所得の中には之等世帯主の収入以外の家族収入を含有してゐることを記憶すべきである。

 

表(・)の(・)二六(・・)

職業別月収調査(世帯員)

職業

二〇円以下

二五円同

三〇円同

三五円同

四〇円同

四五円同

五〇円同

五五円同

六〇円同

六五円同

七〇円同

八〇円同

九〇円同

一〇〇円同

一二〇円同

一五〇円同

一五〇円以上

一世帯当

平均収入

自由労働

-

三二

一四

二八-

-

-

-

一〇七-

五四・七五

人夫頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

八六・〇〇

土工

-

-

-

三九

一七

一〇

-

-

-

-

-

七六

五二・三四

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

八五・六二

倉庫人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

九三・三三

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四六・六三

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六五・七五

工場雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六三・一〇

砂利採掘

-

一三

-

-

-

-

-

-

-

二八

四四・〇七

荷物運送

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六〇・〇〇

左官

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五八・〇〇

工場機関係

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇二・五〇

理髪業

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

1一五〇・〇〇

市電運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一二三・〇〇

墓番

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇・〇〇

人夫請負

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五九・一六

   自動車運転手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

九五・〇〇

糞尿汲取

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

八五・〇〇

広告注文取

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五〇・〇〇

新聞配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二五・〇〇

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一二

七三・二九

鉄工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一四

五五・三六

印刷工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五四.七五

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六八・二〇

製菓職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五二・〇〇

天井板磨工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六五・〇〇

スレート職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六〇・〇〇

ブロマイド職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三五・〇〇

硝子職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

九五.・〇〇

寒暖計職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

八〇〇〇

ボール画職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五五・〇〇

肥料職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

九二・五〇

金属職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六〇・〇〇

アンチモニー職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六〇・〇〇

瓦職人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六五・〇〇

労働者飯場

-

-

-

-

-

-

一五

一〇

-

五〇

一〇一・一二

行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

七〇・〇〇

露店商人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六二・五〇

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六二・五〇

役所工夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一五

五八・二七

役所工事人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

七七・五〇

役所衛生人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六六・一五

水道局人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六三・一〇

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五六・五〇

不明

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五〇・〇〇

二四

一二

一〇八

四四

六一

一三

一二

二三

一八

二七

 

 

 

四〇〇

六三・七一

百分比

一・〇〇

〇・五〇

二・〇〇

二・二五

六・〇〇

三・〇〇

二七・〇〇

一一・〇〇

一五・二五

三・二五

三・〇〇

五・七五

四・五〇

六・七五

 

 

 

一〇〇・〇〇

 

 

 

 更に表(ヽ)の(ヽ)二七(ヽヽ)独身者に就て見るに、その平均収入に於て前者が後者より二十余円多きは、独身者より世帯員の方が生活状態が真剣で、真面目であることを意味し、また一方に世帯主以外の家族収入が包含されてゐるものと見なければならない。

 後者の場合に於ても、その収入階級別に之を見ると、やはり五十円未満の階級が三六・一九%の最高を占めて居り、彼等の実質的方面の月収はやはり五十円以下に該当してゐるのである。

 

表(・)の(・)二七(・・)

職業別月収調査(独身者)

職業

二〇円以下

二五円同

三〇円同

三五円同

四〇円同

四五円同

五〇円同

五五円同

六〇円同

六五円同

七〇円同

八〇円同

九〇円同

一〇〇円同

一二〇円同

一五〇円同

一五〇円以上

一世帯当

平均収入

鉄工場職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇

四三・七七

鉄網張職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二三・三八

バリカン職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六二・七五

ゴム職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三八・・〇〇

職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

四三・五九

工場雑役

一六

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三五

三六・七五

木工職

-

-

一一

-

-

-

-

-

-

-

-

-

十九

三〇・六二

売薬行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三五・〇〇

電線工夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一四・九〇

外交員

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四五・〇〇

電気機械工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六三・五〇

伸銅職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五一・〇〇

製鑵職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四七・一八

綿職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二三・四〇

バケツ製工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四八・〇〇

理髪見習

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六・〇〇

洋服裁縫工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五六・〇〇

自由労働

一一

二〇

二二

六〇

五一

九二

三七

三九

-

-

-

-

三四二

四四・一二

土工

二三

二〇

一〇三

八五

三六七

三二

一八

-

-

-

-

-

六六八

四六・一四

土工頭

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

七六・〇〇

官庁人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

三二

四五六・〇

砂利採掘

一八

二四

六一

八四

一八

一三

-

-

-

-

-

-

-

二二三

四六・五一

商店雑役

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三〇・〇〇

弁当配達

一〇

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

二〇・九一

晒職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三〇・〇〇

建築用具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五八・〇〇

牧場使用人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四五・〇〇

鞄製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一五・〇〇

帽子製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三〇・〇〇

飛行工場職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四三・〇〇

砂糖職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四八・七五

コツク

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一二・〇〇

製材職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五〇・〇〇

靴修繕工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一二〇・〇〇

納豆行商

二四

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二九

一三・九三

飴行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

七四・四四

青物行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

七五・〇〇

荷物配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二四・〇〇

新聞配達

-

一六

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二七

二八・八二

牛乳配達

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四〇・〇〇

自転車職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三七・八〇

印刷職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一八・〇〇

製図工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇・〇〇

スリツパ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇・〇〇

石工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一五・〇〇

蜜豆行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二四・〇〇

空壜買

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二〇・〇〇

荷揚人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五六・。八八

自働車ノ運転手並助手

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六六・四三

撒水夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四四・二九

新聞取次店

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇・五〇〇

荷馬車挽

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

六〇・〇〇

玄米パン売り

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

九一・〇

左官職手伝

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五二・〇〇

砂利積込人夫

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一〇

五一・〇〇

製管職人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五〇・四〇

紙加工職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四一・〇〇

郵便集配人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

五〇・〇〇4

ニツケル工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三二・一〇

パイプ職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四一・〇〇

大理石仕上職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四五・〇〇

メリヤス職工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四二・〇〇

製菓工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

二七・〇〇

製氷雇人

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四五・〇〇

靴下製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一八・〇〇

ネヂ製造工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三七・五八

玩具工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

三五・五〇

天井板磨職

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四七・八三

ブリキ工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一三

四一・〇八

鋳物工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一七

四六・八八

鍍金工

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

一一

四二・三六

カマボコ行商

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

四〇・〇〇

七九

四一

七〇

八八

二二六

二七三

五七九

一一〇

九三

一二

一〇

一一

-

-

一、六〇〇

四四・二一

百分比

四・九四

二・五六

四・三八

五・五〇

一四・一三

一七・〇六

三六・一九

六・八八

五・八一

〇・七五

〇・二五

〇・六三

〇・六九

〇・一三

〇・一三

-

-

一〇〇・〇〇

 

 

 上述の表に依る時、吾々は在京朝鮮人労働者が予想外に比較的良い月収を持つてゐるのに一驚せざるを得ないであらうが、前項に於ても已に述べた通り本調査の対象は概ね保護施設若くは朝鮮人経営の比較的有力なる飯場に止宿する人々の階級であり、生活方面にはかなり真面目な人々である関係から失業率が極めて少く、月収方面も在京朝鮮人労働者の一般から見て相当に好い地位にある人々であることを附記してをく。

 

2 支出

彼等の収入に就て、一先づ窺明したる吾々は、更にその支出の方面に就いて研究する必要がある。即ち左の表(ヽ)の(ヽ)二八(ヽヽ)世帯員に就て之を見ると、その職業に依つて内容が種々異るが、概して支出の大半は飲食費である。之を総体的に考察すれば、総数を百分した一七・三七%が住居費であり、四八・八九%が飲食費、一三・五四%が被服費、八・三六%が薪炭灯火費であり、其他の費用(交際費、修養費、享楽費等々)が一一・八四%を占めて居る状態である。

この比率に依つて見ても、彼等の生活が如何に食ふ以外の何物でもないことかが判然するのである。

更に之を職業別に考察すると、市電運転手の百五円が最高で、寺墓番の二十円が最低である。而して、彼等総数の平均月支出額は五十六円九十四銭に該当してゐるのである。

 

表(・)の(・)二八(・・)

              月支出額内訳(世帯員)

職業

世帯数

住居費

飲食費

被服費

薪炭灯火費

其他ノ費用

一世帯当平均生活費

 

 

 % 

% 

% 

% 

% 

% 

円 

自由労働

一〇七-

一四・八六

五六・七三

一三・七二

八・四五

六・二四

一〇〇・〇〇

四八・六一

人夫頭

九・二五

五一・六〇

一三・八八

六・〇五

一九・二二

一〇〇・〇〇

七〇・二五

土工

七六

一七・九八

四八・四〇

一四・〇一

九・〇六

一〇五・六

一〇〇・〇〇

四七・四三

土工頭

二一・七五

四六・〇四

一一・八九

三・一七

一七・一六

一〇〇・〇〇

七三・五八

倉庫人夫

三〇・八〇

三八・二二

一〇・七六

七・二四

一二・九九

一〇〇・〇〇

八九・八三

荷揚人夫

二四・二三

四三・八二

一〇・八二

八・二五

一二・八九

一〇〇・〇〇

六四・六七

荷馬車挽

一七・八八

四二・」四一

一二・四八

七・六九

一九・五四

一〇〇・〇〇

六〇・一二

工場雑役

二三・六四

四四・〇九

八・六四

一〇・〇〇

一三・六四

一〇〇・〇〇

七三・三三

砂利採掘

二八

一二・一七

五五・三八

一七・四七

八・三九

六・六一

一〇〇・〇〇

四六・九五

荷物運送

二五・〇〇

四一・六七

一六・六七

八・三三

八・三三

一〇〇・〇〇

六〇・〇〇

左官

二三・〇八

三八・四六

九・六二

九六二

一九・二三

一〇〇・〇〇

五二・〇〇

工場機関係

二八・一一

二七・〇三

一〇・八一

一三・五一

二〇・五四

一〇〇・〇〇

九二・五〇

理髪業

八・〇〇

四八・〇〇

一六・〇〇

二〇・〇〇

八・〇〇

一〇〇・〇〇

一二五・〇〇

市電運転手

三三・三三

三八・一〇

一四・二九

四・七六

九・五二

一〇〇・〇〇

一〇五・〇〇

墓番

二〇・〇〇

五〇・〇〇

一〇・〇〇

-

二〇・〇〇

一〇〇・〇〇

二〇・〇〇

人夫請負

一五・〇一

四九・〇六

一二・八七

一三・一五

九・九二

一〇〇・〇〇

六二・一七

自動車運転手

一六・七四

三八・六三

一二・八八

一〇・三〇

二一・四六

一〇〇・〇〇

七七・六七

糞尿汲取

四一・二三

四二・四二

四・八五

五・四五

六・〇六

一〇〇・〇〇

八二・五〇

広告注文取

一五・四四

二六・八五

二〇・一三

四・〇三

三三・五六

一〇〇・〇〇

七四・五〇

新聞配達

九・三八

七五・〇〇

一五・六三

-

-

一〇〇・〇〇

三二・〇〇

職工

一二

二〇・〇八

四六・九二

一三・九一

八・四七

一〇・六四

一〇〇・〇〇

六八・九二

鉄工

一四

二五・八七

四六・四三

一〇・七六

八・一一

八・八六

一〇〇・〇〇

五二・四六

印刷工

三二・七一

四六・七三

九・三五

六・七三

四・四九

一〇〇・〇〇

五三・五〇

ゴム職工

三一・三〇

四二・二一

二・四八

八・〇一

一六・〇一

一〇〇・〇〇

六八・七〇

製菓職工

一〇・六二

五三・二〇

一〇・六四

八・五二

一七・〇二

一〇〇・〇〇

四七・〇〇

天井板磨工

三八・五二

三八・五二

八・二〇

六・五七

八・二〇

一〇〇・〇〇

六一・〇〇

スレート職工

三八・六〇

三五・一〇

八・七六

八・七六

八・七六

一〇〇・〇〇

五七・〇〇

ブロマイド職工

一五・〇〇

四五・〇〇

七・五〇

七・五〇

二五・〇〇

一〇〇・〇〇

四〇・〇〇

硝子職工

一五・一五

四五・四四

一〇・一〇

九・一〇

二〇・二〇

一〇〇・〇〇

四九・五〇

寒暖計職工

三一・八一

三四・一〇

一一・四〇

五・六一

一七・〇八

一〇〇・〇〇

八八・〇〇

ボール画職工

二八・四二

五二・六三

一〇・五三

三・一六

五・二六

一〇〇・〇〇

九五・〇〇

肥料職工

二九・六三

四〇・七四

一一・一一

七・四一

一一・一一

一〇〇・〇〇

六七・五〇

金属職工

二八・五七

四一・二七

一一・一一

七・九四

一一・一一

一〇〇・〇〇

六三・〇〇

アンチモニー職工

二五・四〇

四二・三七

一六・九三

六・八〇

八・五〇

一〇〇・〇〇

五九・〇〇

瓦職人

三二・一一

三五・七〇

一四・二三

八・九八

八・九八

一〇〇・〇〇

五六・〇〇

労働者飯場

五〇

一〇・三三

四八・一四

一五・九八

九・四九

一六・〇六

一〇〇・〇〇

七五・七〇

行商

一二・二九

五三・一一

一八・四四

八・〇四

八・一三

一〇〇・〇〇

七〇・五〇

露店商人

二四・三七

三八・六六

八・四〇

一五・九七

一二・六一

一〇〇・〇〇

五九・五〇

空壜買

二二・四二

四四・八四

四・四八

五・八三

二二・四二

一〇〇・〇〇

六六・九〇

役所工夫

一五

二三・一一

四五・九八

八・六七

一一・八一

一〇・四五

一〇〇・〇〇

五七・四二

役所工事人夫

一七・一一

四五・六二

八・一七

九・一四

一九・九六

一〇〇・〇〇

六五・七六

役所衛生人夫

二・〇六

四四・〇五

七・四六

八・六二

一九・六一

一〇〇・〇〇

六二・二〇

水道局人夫

一四・五四

四一・三九

一・六六七

六・一五

二一・二五

一〇〇・〇〇

五九・六〇

撒水夫

三四・〇三

四〇・八四

九・四二

三・六六

一二・〇四

一〇〇・〇〇

四七・七五

不明

二四・〇九

四一・六一

一〇・九五

九・六六

一三・六九

一〇〇・〇〇

四五六・六

四〇〇

一七・三七

四八・八九

一三・五四

八・三六

一一・八四

一〇〇・〇〇

五六・九四

 

更に表(ヽ)の(ヽ)二九(ヽヽ)独身者に就て之を観ると、矢張り彼等も世帯員の場合の如く、飲食費に収入の殆ど半分を費してゐるが前者に比して其他の費用が超過してゐる点は、誠に注意に値する。

 之は、彼等が未だ年若く、修養の方面に、歓楽の方面に、知識欲のために、交際のために、世帯持ちに比してより多くの支出を為してゐることを物語るものである。

 即ち、之を各費目に就て百分比を示せば、住居費が七・三〇%、飲食費が五三・五二%、被服費が一五・五二%、薪炭灯火費が〇・三二%、其他の費用(交際費、修養費、享楽費等)が二三・一四%を占めて居り、彼等総体の平均月支出額は三十五円二銭といふ状態である。

 

表(・)の(・)二九(・・)

              月支出額内訳(独身者)

職業

人員数

住居費

飲食費

被服費

薪炭灯火費

其他ノ費用

一人当平均生活費

 

 

% 

% 

% 

% 

% 

% 

円 

鉄工場職工

二〇

一一・八三

五六・五五

一七・〇六

一・八〇

一二・七七

一〇〇・〇〇

三四・六六

鉄網張職工

-

二八・五七

二一・四三

-

五〇・〇〇

一〇〇・〇〇

二一・〇〇

バリカン職工

一九・六九

三七・八二

一二・四四

一・五五

二八・五〇

一〇〇・〇〇

四八・二五

ゴム職工

-

六一・五四

二三・〇八

-

一五・三八

一〇〇・〇〇

三二・五〇

職工

一一

七・六四

五七・四一

一七・二〇

-

一七・七四

一〇〇・〇〇

三三・三〇

工場雑役

三五

二・八〇

六五・一〇

一〇・五三

〇・一九

二一・三九

一〇〇・〇〇

三〇・六一

木工職

十九

-

七三・七八

二二・五一

-

三・七一

一〇〇・〇〇

二二・六八

売薬行商

二七・二七

四・五四五

九・〇九

-

一七・一八

一〇〇・〇〇

二七・五〇

電線工夫

一三・三六

五二・三四

一一・一四

二・二三

二〇・九四

一〇〇・〇〇

一四・九七

外交員

-

四二・八六

二八・五七

-

二八・五七

一〇〇・〇〇

三五・〇〇

電気機械工

七・九二

五七・五九

六・〇〇

-

二八・四九

一〇〇・〇〇

四一・六八

伸銅職工

一四・九八

四四・九三

一〇・一四

-

二九・九五

一〇〇・〇〇

四一・四〇

製鑵職工

-

七二・五八

九・六八

-

一七・七四

一〇〇・〇〇

二〇・六七

綿職工

二八・二五

七〇・〇六

-

-

一・六九

一〇〇・〇〇

一七・七〇

バケツ製工

-(ママ)

-

七八・二六

二一・七四

-

-

一〇〇・〇〇

二三・〇〇

理髪見習

-

-

-

-

一〇〇・〇〇

一〇〇・〇〇

三・〇〇

洋服裁縫工

一六・〇〇

四二・〇〇

一〇・〇〇

四・〇〇

二八・〇〇

一〇〇・〇〇

五〇・〇〇

自由労働

三四二

一二・三三

五七・四一

一〇・八二

〇・五四

一八・九〇

一〇〇・〇〇

三二・五三

土工

六六八

三・〇七

五六・三三

一七・二九

〇・〇八

二三・二三

一〇〇・〇〇

三七・四七

土工頭

-

五二・〇五

一五・五三

六・八五

二五五・七

一〇〇・〇〇

四三・八〇

官庁人夫

三二

一二・〇七

五〇・三四

一二・七四

〇・一一

二四・七四

一〇〇・〇〇

三四・三八

砂利採掘

二二三

一三・〇四

四二・三三

一九・三一

〇・〇六

二五・二六

一〇〇・〇〇

三七・八六

商店雑役

-

八〇・〇〇

一三・三三

-

六・六七

一〇〇・〇〇

一八・七五

弁当配達

一一

-

二七・二七

二二・七三

-

五〇・〇〇

一〇〇・〇〇

二〇・〇〇

晒職工

-

七五・〇〇

-

-

二五・〇〇

一〇〇・〇〇

二〇・〇〇

建築用具工

一三・二六

五七・五六

七・九六

-

二一・二二

一〇〇・〇〇

三七・七〇

牧場使用人

-

-

-

-

一〇〇・〇〇

一〇〇・〇〇

四五・〇〇

鞄製造工

-

-

三五・二九

-

六四・七一

一〇〇・〇〇

一八・五〇

帽子製造工

六八・一八

九・〇九

--

-

二二・七三

一〇〇・〇〇

二二・〇〇

飛行工場職工

-

六九・二三

三〇・七七

-

-

一〇〇・〇〇

二六・〇〇

砂糖職

-

七四・二三

二五・七七

-

-

一〇〇・〇〇

二四・二五

コツク

-

-

-

-

一〇〇・〇〇

一〇〇・〇〇

一二・〇〇

製材職工

五・三三

五四・六七

一〇・六七

二・六七

二六・六七

一〇〇・〇〇

三七・五〇

靴修繕工

一〇・一一

六七・八二

二二・〇七

-

-

一〇〇・〇〇

六一・三〇

納豆行商

二九

一・六五

五三・七五

一一・七五

四・四六

二八・三九

一〇〇・〇〇

一三・八二

飴行商

〇・九九

四四・二八

二五・〇〇

-

二九・七三

一〇〇・〇〇

五〇・六七

青物行商

二六・六七

三三・三三

一一・一一

六・六七

二二・二二

一〇〇・〇〇

四五・〇〇

荷物配達

-

二八・五七

二三・八一

-

四七・八二

一〇〇・〇〇

二一・〇〇

新聞配達

二七

七・二一

四九・三四

八・六六

一・一八

三三・六一

 一〇〇・〇〇

二六・七一

牛乳配達

三三・三三

一六・六七

二〇・八二

八・三三

二〇・八二

一〇〇・〇〇

二四・〇〇

自転車職工

一二・五五

六二・七六

一四・二三

-

一〇・四六

一〇〇・〇〇

二三・九〇

印刷職工

-

-

四四・四四

-

五五・五六

一〇〇・〇〇

九・〇〇

製図工

-

六〇・〇〇

-

-

四〇・〇〇

一〇〇・〇〇

二〇・〇〇

スリツパ製造工

-

-

二五・〇〇

-

七五・〇〇

一〇〇・〇〇

八・〇〇

石工

-

-

一三・三三

-

八六・六七

一〇〇・〇〇

一五・〇〇

蜜豆行商

二五・〇〇

四一・六七

-

-

三三・三三

一〇〇・〇〇

二四・〇〇

空壜買

二五・〇〇

五〇・〇〇

-

-

二五・〇〇

一〇〇・〇〇

二〇・〇〇

荷揚人夫

九・八九

五三・六一

九・五一

二・二八

二四・七一

一〇〇・〇〇

三七・五七

自動車ノ運転手並助手

六・一六

二六・八九

四・七五

-

六三・二〇

一〇〇・〇〇

二〇・一九

撒水夫

一四・二〇

五六・三一

一四・一一

-

一五・三七

一〇〇・〇〇

四四・九二

新聞取次店

四一・二四

三〇・九五

八・二五

 

一〇・三一

一〇〇・〇〇

四八・五〇

荷馬車挽

二三・三三

六六・六七

-

-

-

一〇〇・〇〇

一八・〇〇

玄米パン売り

-

三五・一六

二一・九八

七・六九

三五・一六

一〇〇・〇〇

九・一〇

左官職手伝

一五・三八

四六・一五

-

-

三八・四六

一〇〇・〇〇

二六・〇〇

砂利積込人夫

一〇

三八・九二

三五・五一

一二・七八

-

一二・七八

一〇〇・〇〇

三五・二〇

製管職人

一六・二五

四三・三四

一三・三三

-

二七・〇九

一〇〇・〇〇

三六・九二

紙加工職

八・三三

四五・〇〇

八・三三

五・〇〇

三三・三三

一〇〇・〇〇

三〇・〇〇

郵便集配人

-

-

-

-

一〇〇・〇〇

一〇〇・〇〇

五・〇〇

ニツケル工

-

八五・七一

一四・二九

-

-

一〇〇・〇〇

二一・〇〇

パイプ職

-

七九・一二

二〇・八八

-

-

一〇〇・〇〇

二二・七五

大理石仕上職

一七・六七

六六・五〇

-

-

一五・八三

一〇〇・〇〇

三一・五八

メリヤス職工

-

八一・八二

一八・一八

-

-

一〇〇・〇〇

二二・〇〇

製菓工

-

六一・五四

一二・八二

-

八五・六四

一〇〇・〇〇

一九・五〇

製氷雇人

一三・三三

六四・四四

六・六七

四・四四

一一・一一

一〇〇・〇〇

四五・〇〇

靴下製造工

-

-

四〇・九八

-

五九・〇二

一〇〇・〇〇

一〇・一七

ネヂ製造工

-

八一・〇八

一八・九二

-

-

一〇〇・〇〇

二二・二〇

玩具工

-

八三・九六

一六・〇四

-

-

一〇〇・〇〇

一八・七〇

天井板磨職

一五・二一

六四・二一

九・八八

-

一〇・七〇

一〇〇・〇〇

二九・五九

ブリキ工

一三

-

七八・五〇

二一・五〇

-

-

一〇〇・〇〇

二四・六九

鋳物工

一七

-

七七・〇八

二二・九二

-

-

一〇〇・〇〇

二一・三六

鍍金工

一一

-

七八・七二

一五・七四

-

五・五三

一〇〇・〇〇

二一・三六

カマボコ行商

二三・四六

五一・六〇

四・四七

-

二〇・四七

一〇〇・〇〇

二九・〇七

一、六〇〇

七・三〇

五三・七三

一五・五一

〇・三一

二三・一四

一〇〇・〇〇

三五・〇二

 

 前述表(ヽ)の(ヽ)二八(ヽヽ)世帯員及び、表(ヽ)の(ヽ)二九(ヽヽ)独身者の生計費の内容と、その比獲(ママ)をより明確に説明するため左に之を比較して見やう。

 

 

住居費

飲食費

被服費

薪炭灯火費

其他の費用

世帯員

一七・三七

四八・八九

一三・五四

八・三六

一一・八四

一〇〇・〇〇

独身者

七・三〇

五三・七三

一五・五二

〇・三一

二三・一四

一〇〇・〇〇

 

右の比較に依り独身者の場合と、世帯員の場合の生活内容がほゞ窺はれるであらうが、更にまた

階級別に依る支出内容の比率を調べて見る必要のために、左に月収階級別月支出額の内訳を掲げてをく。

 

(収入階級別人員調査表(世帯主・独身者)は省略)

 

イ、月収階級別月支出内訳

 表(・)の(・)三〇(・・)

月収階級別月支出額内訳比例(世帯員)

収入

世帯数

住居費

飲食費

被服費

薪炭灯火費

其他ノ費用

二〇円以下

一二・四〇

四八・五〇

一三・二六

四・七九

二〇・九八

一〇〇・〇〇

二五円以下

一二・七三

五三・四四

五・〇九

三・三一

二五・四五

一〇〇・〇〇

三〇円以下

二八・五〇

四二・四一

一二・五二

九・二四

七・三六

一〇〇・〇〇

三五円以下

一八・三二

四九・七五

一三・四八

九・五一

八・九九

一〇〇・〇〇

四〇円以下

二〇

二三・七〇

四九・八五

九・二六

七・四二

九・七七

一〇〇・〇〇

四五円以下

一〇

二二・一三

五一・六一

一一・五四

七・四八

七・二六

一〇〇・〇〇

五〇円以下

九五

一七・八八

四九・〇五

一四・五八

八・七一

九・七八

一〇〇・〇〇

五五円以下

四一

二一・二八

四九・一九

一一・二九

七・七一

一〇・五四

一〇〇・〇〇

六〇円以下

五四

一五・一一

五四・六七

一三・三四

八・〇四

八・八四

一〇〇・〇〇

六五円以下

一八

二二・一六

五〇・三一

九・九三

八・五八

九・〇一

一〇〇・〇〇

七〇円以下

一五

一四・二二

四八・五八

一五・三四

八・四三

一三・五七

一〇〇・〇〇

八〇円以下

二八

一六・三〇

四九・九九

一三・二二

八・七七

一二・七二

一〇〇・〇〇

九〇円以下

二四

二〇・八一

四五・七五

一三・三五

六・五九

一三・五二

一〇〇・〇〇

一〇〇円以下

二七

一三・〇四

四七・三三

一六・七三

八・六一

一四・二八

一〇〇・〇〇

一二〇円以下

二一

一七・七五

四七・四〇

一二・一九

八・三〇

一四・四二

一〇〇・〇〇

一五〇円以下

一七

一四・九〇

四一・三九

一六・七五

九・二八

一七・七〇

一〇〇・〇〇

一五〇円以上

一〇

一〇・六五

五三・二三

一二・二七

一〇・三八

一三・五〇

一〇〇・〇〇

計平均

四〇〇

一七・三七

四八・八九

一三・五四

八・三六

一一・八四

一〇〇・〇〇

 

 表(・)の(・)三一(・・)

月収階級別月支出額内訳比較(独身者)

収入

世帯数

住居費

飲食費

被服費

薪炭灯火費

其他ノ費用

二〇円以下

七九

三・九七

五〇・九二

一二・四二

一・四七

三一・二二

一〇〇・〇〇

二五円以下

四一

六・六八

五六・八二

八・四八

・三五

二七・六六

一〇〇・〇〇

三〇円以下

七〇

七・四九

六一・六九

一〇・〇四

・二八

一〇・五九

一〇〇・〇〇

三五円以下

八八

一〇・二四

五八・五四

一二・八四

・一六

一八・二一

一〇〇・〇〇

四〇円以下

二二五

六・九〇

五八・〇一

一三・二八

・一九

二一・六二

一〇〇・〇〇

四五円以下

二七四

八・二〇

五五・三三

一五・〇三

・二八

一一・一六

一〇〇・〇〇

五〇円以下

五七九

六・一八

五一・七五

一七・八五

・〇七

二四・一四

一〇〇・〇〇

五五円以下

一一〇

九・七八

五一・一三

一五・七四

・七一

二二・六四

一〇〇・〇〇

六〇円以下

九三

七・九一

五四・三八

一四・二四

・二三

二三・二四

一〇〇・〇〇

六五円以下

一二

一四・〇九

四五・二〇

一四・九一

・五四

三五・二五

一〇〇・〇〇

七〇円以下

-

五四・八六

一八・二九

・五七

二六・二九

一〇〇・〇〇

八〇円以下

一〇

一二・〇九

四一・九二

一五・〇八

一・八二

二九・〇九

一〇〇・〇〇

九〇円以下

一一

六・五三

三八・三〇

一六・二六

三・九五

三四・九五

一〇〇・〇〇

一〇〇円以下

六・九三

六四・八〇

四・四七

一・四五

二二・二五

一〇〇・〇〇

一二〇円以下

二三・四三

五八・一四

八・一四

五・八一

四・四七

一〇〇・〇〇

一五〇円以下

-

-

-

-

-

-

-

一五〇円以上

-

-

-

-

-

-

-

計平均

一、六〇〇

七・三〇

五三・七三

一五・五一

〇・三一

二三・一四

一〇〇・〇〇

 

 

3 剰余並に貯金送金

 前述の如く、朝鮮人労働者は労働条件が常に内地人労働者のそれより低いために、その所得が内地人より二割乃至三割、低いけれども、支出方面に可成り節約せられるために内面的生活上に於ては別に之といふ窮乏を見て居ない様子であるが、外面的に彼等を観る時分には、常に襤褸で身を包み、栄養不良らしく血色が悪るく、見るからに痛々しい風態をしてゐるのである。

 斯くの如く、吾々は常に彼等の皮相的生活のみを観て来た関係から、彼等の経済生活の内容が悲惨そのものゝやうに認識されて来たものであつたが本調査に依り、吾々は先づ一驚せざるを得ないのは、即ち彼等が剰余金を有し、貯金又は国許へ送金さへするもの、多いことである。之等剰余金並びに貯金送金等を為してゐる者は、世帯員、独身者共に総数の約六割を占め、過不足のなきものが三割強で、不足を来して居るものが僅か六分にしか該当してゐない状態である。

 

 表(・)の(・)三二(・・)

             剰余並ニ送金貯金調査(世帯員)

職業

剰余金アル者

剰余金ナキ者

合計

送金貯金者

送金者

貯金者

過不足ナキ者

不足スル者

自由労働

五九

六六

三九

四一

一〇七

人夫頭

-

-

-

土工

一六

二六

五〇

二五

二六

七六

土工頭

-

-

倉庫人夫

-

-

荷揚人夫

-

-

荷馬車挽

-

-

工場雑役

-

-

-

砂利採掘

一四

一七

一一

二八

荷物運送

-

-

-

-

-

左官

-

-

-

-

-

工場機関係

-

-

-

-

-

理髪業

-

-

-

-

-

市電運転手

-

-

-

-

-

墓番

-

-

-

-

-

人夫請負

-

自動車運転手

-

-

-

-

-

糞尿汲取

-

-

-

-

-

広告注文取

-

-

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

-

職工

-

-

-

一二

鉄工

-

一〇

一一

一四

印刷工

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

-

製菓職工

-

-

-

-

-

天井板磨工

-

-

-

スレート職工

-

-

-

-

-

ブロマイド職工

-

-

-

-

-

-

硝子職工

-

-

-

寒暖計職工

-

-

-

-

-

ボール画職工

-

-

-

-

-

肥料職工

-

-

-

-

-

金属職工

-

-

-

-

-

アンチモニー職工

-

-

-

-

-

瓦職人

-

-

-

-

-

労働者飯場

二六

一六

四三

-

五〇

行商

-

-

-

露店商人

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

役所工夫

-

-

一五

役所工事人夫

-

-

-

役所衛生人夫

-

-

水道局人夫

-

-

-

-

-

撒水夫

-

-

不明

-

-

-

四八

二九

一八二

二五九

一二九

一二

一四一

四〇〇

一人当平均

-

円 

八・七六

円 

九・四九

-

-

円 

一三・八三

-

-

 

 表(・)の(・)三三(・・)

             剰余並ニ送金貯金調査(独身者)

職業

剰余金アル者

剰余金ナキ者

合計

送金貯金者

送金者

貯金者

過不足ナキ者

不足スル者

鉄工場職工

一三

二〇

鉄網張職工

-

-

-

バリカン職工

-

-

-

ゴム職工

-

-

-

-

職工

-

一一

工場雑役

一一

二〇

一二

一五

三五

木工職

一七

-

一九

-

-

-

十九

売薬行商

-

-

-

電線工夫

-

-

-

-

-

外交員

-

-

-

-

-

電気機械工

-

-

伸銅職工

-

-

-

-

-

製鑵職工

-

-

-

-

綿職工

-

-

-

-

-

バケツ製工

-

-

-

-

-

理髪見習

-

-

-

-

-

洋服裁縫工

-

-

-

-

-

自由労働

六四

五七

一一二

二三三

九六

一三

一〇九

三四二

土工

二三八

一三五

一三八

五一一

一四七

一〇

一五七

六六八

土工頭

-

-

-

-

-

官庁人夫

一三

二三

三二

砂利採掘

五八

六三

七〇

一九一

三二

-

三二

二二三

商店雑役

-

-

-

-

-

弁当配達

-

-

一一

晒職工

-

-

-

-

-

建築用具工

-

-

-

-

-

牧場使用人

-

-

-

-

-

鞄製造工

-

-

-

帽子製造工

-

-

-

-

-

飛行工場職工

-

-

-

-

-

砂糖職

-

-

-

-

-

コツク

-

-

-

-

-

製材職工

-

-

-

-

靴修繕工

-

-

-

-

-

納豆行商

-

二七

-

二七

二九

飴行商

-

-

青物行商

-

-

-

-

-

荷物配達

-

-

-

新聞配達

-

一九

二二

二七

牛乳配達

-

-

-

-

-

自転車職工

-

-

-

-

印刷職工

-

-

-

-

-

製図工

-

-

-

-

-

スリツパ製造工

-

-

-

-

-

石工

-

-

-

-

-

蜜豆行商

-

-

-

-

-

空壜買

-

-

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

自動車ノ運転手並助手

-

-

撒水夫

-

新聞取次店

-

-

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

-

-

玄米パン売り

-

-

-

-

-

左官職手伝

-

-

-

-

-

砂利積込人夫

-

一〇

製管職人

-

-

-

-

-

紙加工職

-

-

-

郵便集配人

-

-

-

-

-

ニツケル工

-

-

-

-

-

パイプ職

-

-

-

-

-

大理石仕上職

-

-

-

-

-

メリヤス職工

-

-

-

-

-

製菓工

-

-

-

-

製氷雇人

-

-

-

-

-

靴下製造工

-

-

-

ネヂ製造工

-

-

-

-

玩具工

-

-

-

-

天井板磨職

-

-

ブリキ工

一三

-

-

一三

-

-

-

一三

鋳物工

一六

-

-

一六

-

一七

鍍金工

一一

-

-

一一-

-

-

-

一一

カマボコ行商

-

-

-

-

-

四七六

三〇四

三九三

一、一七三

三八八

三九

四二七-

一、六〇〇

一人当平均

-

円 

九・四三

円 

七・八五-

-

-

円 

六・八九

-

-

 

 

 

三 教育、宗教、趣味其他に関する調査

1 教育程度

在京朝鮮人労働者に限らず一般に朝鮮人労働者はその大部分が文盲者である。これに依つて見ても、日韓合併前に於ける、李朝の文教方面が如何に頽廃してゐたかゞほゞ窺はれるが、それは別としても全然文字も読めず言語もろくに通じない彼等が内地に来て、内地人労働者と共に働く時に自然知識の程度や、常識の上から落差が現はれて来るのは当然なことで、若し朝鮮人労働者の資格を内地人労働者のそれと一致せしめんとするときには単に労働技術の方面ばかりでなく、彼等が文教の方面に、且つ内地に於ける風俗習慣等に熟することが何より急務であると思ふものである。吾々は彼等の将来のために、彼等が一日も早くこの方面に自覚を持つやうになることを祈るものである。

 本調査に依る在京朝鮮人労働者は、その六七・七五%が国語をよく解するものであり、稍々国語を解する者が八・〇〇%、国語を全く解せざる者が二四・二五%を占めて居り、その教育程度の調査は次表の如くである。

 即ち、世帯員、独身者、両者共普通学校(小学校)卒業者が最高を占め、文盲者が次位を占めて居るが、書堂(寺子屋)で、漢文を学んだ連中も内地に於ては殆んど文盲者と同然であり、言語も解せざる状態であるから、在京朝鮮人の五割以上は新聞の三面記事でさへ読めない階級であると見るべきであらう。

 

 表(・)の(・)三四(・・)

             教育程度調査

 

世帯員(実数)

独身者(実数)

世帯員(比例)

独身者(比例)

文盲者

一二九

五〇二

三二・二五

三一・三八

書堂

二八

八七

七・〇〇

五・四四

普通学校中途退学

一一

二三七

二・七五

一四・七五

普通学校卒業

一八七

六一三

四六・七五

三七・六九

高等普通学校中途退学

一四

一七

三・五〇

一・〇六

高等普通学校卒業

二六

四八

六・五〇

三・〇〇

専門学校中途退学

八六

・五〇

五・三八

専門学校卒業

一〇

・七五

・六三

専門学校在学中

-

-

-

・六三(ママ)

専門学校以上卒業

-

-

-

・〇六(ママ)

四〇〇

一、六〇〇

一〇〇・〇〇

一〇〇・〇〇

 

 

2 宗教関係

 宗教が人間生活にとつて、欠くべからざる必要なものであるとすれば、朝鮮人労働者は必要欠くべからざるものを欠いて生活してゐると謂へるであらう。現に吾々が見て知るが如く彼等の生活が常に無味乾燥であるのはエトランゼとして彼等が感じてゐる旅愁そのものから来る原因と云ふよりも寧しろ彼等の内面的精神生活に芸術に対する理解のなきことゝ、宗教的信仰心が欠けてゐるのが原因で、彼等は常に暗より暗へと行くもので光りを求むることなく、精神生活が漸次退化して行くばかりであるやうに見受けられる。

 本調査の結果に依ると、表(ヽ)の(ヽ)三五(ヽヽ)が示す如く、世帯員の場合は全数の約八割が宗教に対する信仰を有せず、独身者の場合は八割五分がやはり無宗教の生活をしてゐる状態で、宗教生活を営んでゐる者の中では仏教が一番多い。

 彼等の宗教に対して斯くの如く疎遠なる原因には勿論教会、寺院等に参詣する時間的、経済的余裕もなければ教会寺院等に於ける行事、儀式等の慣習にも不慣れであるのも原因の一つであると思はれるのである。

 

 表(・)の(・)三五(・・)

             信仰状況

教別

世帯員(実数)

独身者(実数)

世帯員(比例)

独身者(比例)

仏教

四九

九四

一二・二五

五・八八

基督教

一五

四二

三・七五

二・六三

儒教

二一

八六

五・二五

五・三八

天道教

三一

一・七五

一・九四

無宗教

二〇八

一、三四七

七七・〇〇

八四・一九

四〇〇

一、六〇〇

一〇〇・〇〇

一〇〇・〇〇

 

 

3 趣味嗜好に関する調査

 趣味嗜好の如きに於ても前二項と同様に、表(ヽ)の(ヽ)三六(ヽヽ)が示すやうに、世帯の場合に於ては全数の六六・〇〇%即ち七割が無趣味生活であり、趣味を有する部に於ては煙草が最高で六・二六%であり、酒と、読書が次位で共に五・〇〇%を占めて居るが、独身者の場合に於ては、総数の六五・八一%、即ち約七割が矢張り無趣味生活者で、前者の煙草が趣味を見(ママ)する部の最高であるのに反し、後者は読書が最高で六・八%であり、煙草が三・二五%で次位を占めてゐる。之に依つて見ても独身者は世帯持ちに比して文教方面に向上する自覚が多いと思はれるのである。

 

 表(・)の(・)三六(・・)

             趣味嗜好に関する調査

 

世帯員(実数)

独身者(実数)

世帯員(比例)

独身者(比例)

煙草

二五

五二

六・二五

三・二五

二〇

四八

五・〇〇

三・〇〇

酒、煙草

一五

三〇

三・七五

一・八八

酒、煙草、活動写真

-

一・〇〇

-

酒、煙草、賭博

-

一・〇〇

-

酒、勝負事

-

〇・二五

-

酒、煙草、勝負事

-

〇・二五

-

読書、酒

-

〇・七五

-

煙草、活動写真

〇・五〇

〇・五〇

煙草、賭博

-

〇・二五

-

活動写真

二九

〇・五〇

一・八一

読書

二〇

一〇九

五・〇〇

六・八一

音楽

一七

四五

四・二五

二・八一

子供養育

-

〇・二五

-

貯金

一一

-

二・七五

-

社会問題

-

〇・二五

-

演説会

-

〇・二五

-

労働

一七

〇・五〇

一・〇六

文芸

〇・五〇

〇・四四

宗教生活

〇・二五

〇・〇六

新聞

-

〇・二五

-

工業化学

二七

〇・二五

一・六九

-

一一

-

〇・六九

運動

-

一六

-

一・〇〇

音楽、読書

-

-

〇・一三

読書、活動写真

-

-

〇・〇六

芝居

-

六〇

-

三・七五

金儲

-

三八

-

二・三八

勝負事

-

-

〇・四四

読書、芝居

-

-

〇・一三

女、酒、活動写真

-

-

〇・〇六

商業

-

-

〇・四四

図案

-

-

〇・〇六

美術

-

-

〇・〇六

運動、絵

-

-

〇・〇六

勉学

-

-

〇・五〇

写真

-

-

〇・〇六

相撲

-

-

〇・〇六

踊り

-

-

〇・〇六

女、酒

-

-

〇・一三

煙草、女

-

-

〇・〇六

酒、煙草、芝居

-

-

〇・〇六

読書、煙草

-

-

〇・一三

音楽、活動写真

-

-

〇・〇六

読書、飲食

-

-

〇・〇六

勝負事、音楽、活動写真

-

-

〇・〇六

大食

-

-

〇・〇六

商工

-

-

〇・一三

将棋

-

-

〇・〇六

園芸

-

-

〇・〇六

社会主義

-

-

〇・〇六

無趣味

二六四

一〇五三

六六・〇〇

六五・八一

四〇〇

一、六〇〇

一〇〇・〇〇

一〇〇・〇〇

 

 

4 郷里の生活と内地の生活との比較

 内地に在住する多くの朝鮮人労働者は、朝鮮より内地の方が生活のため遥かに楽だと云つてゐる。その楽であるとか、苦であるとかと云ふ言葉の根拠は、元より同一範疇に属するものではないが、しかし彼等が祖先代々住み馴れてゐる故郷の懐かしさを忘れて一言に内地が良い、内地が楽だといひ捨てゝ仕舞ふのは、むしろ不思議を感ずるほどであるけれども、彼等が云ふ処の楽と、苦は便利不便の伴ふ意味のことではなくて、専ら経済的に生活が潤沢であるといふ意味に過ぎない。即ち、パンを得るために骨折りが尠いといふ意味に過ぎないのである。

 働きさへすれば想ふまゝの生存費が与へられ、また働くことゝ、生活をするには郷里より、内地の方が遥か良いといふのである。言語、風俗、食物の相違から少々の不便は感じても、生きることに於ては絶対に楽である。これが彼等の云ふ処の内地生活に対する楽であり、住み良いといふ感想なのである。

 本調査に於て調べた処に依つて之を観てもこれは事実であり、即ち表(ヽ)の(ヽ)三七(ヽヽ)世帯員の場合に於ては全数の七四・五〇%が郷里の生活より内地の方が楽である云ひ、更に、表(ヽ)の(ヽ)三八(ヽヽ)独身者の場合に就て之を見ると六二・四四%が矢張りそれである。その理由として聞いた処を参考までに二三挙げて見れば、

  内地は朝鮮より労働賃銀が高いから

  内地は法律が朝鮮より酷くないから

  内地は仕事が多いから

  仕事の暇に勉強が出来るから

と云つたものであり、その苦なる方面は主として

  内地の料理は口に合はないから、

  物価が高いから

  人間が薄情であるから

と云つたやうなものである。

 

 表(・)の(・)三七(・・)

              内地に於ける生活は郷里より楽か苦か(世帯員)

職業別

不明

自由労働

九二

一〇

一〇七

人夫頭

-

土工

五九

一六

  一

-

七六

土工頭

-

-

-

倉庫人夫

-

-

-

荷揚人夫

-

-

荷馬車挽

-

-

工場雑役

-

砂利採掘

一七

二八

荷物運送

-

-

-

左官

-

-

-

工場機関係

-

-

-

理髪業

-

-

-

市電運転手

-

-

-

墓番

-

-

-

人夫請負

-

自動車運転手

-

-

-

糞尿汲取

-

-

-

広告注文取

-

-

-

新聞配達

-

-

-

-

職工

一二

鉄工

-

一三

-

一四

印刷工

-

-

ゴム職工

-

-

製菓職工

-

-

-

天井板磨工

-

-

-

スレート職工

-

-

-

ブロマイド職工

-

-

-

硝子職工

-

-

寒暖計職工

-

-

-

ボール画職工

-

-

-

肥料職工

-

-

-

金属職工

-

-

-

アンチモニー職工

-

-

-

瓦職人

-

-

-

労働者飯場

四五

五〇

行商

-

-

露店商人

-

-

空壜買

-

-

-

役所工夫

-

一五

役所工事人夫

役所衛生人夫

-

-

水道局人夫

-

-

-

撒水夫

-

-

-

不明

-

-

二九八

五五

三七

一〇

四〇〇

百分比

七四・五〇

一三・七五

九・二五

二・五〇

一〇〇・〇〇

 

 表(・)の(・)三八(・・)

              内地に於ける生活は郷里より楽か苦か(独身者)

職業別

不明

鉄工場職工

-

二〇

鉄網張職工

-

-

-

バリカン職工

-

-

ゴム職工

-

-

-

職工

-

一一

工場雑役

一五

一四

三五

木工職

一七

-

-

十九

売薬行商

-

-

-

電線工夫

-

-

-

外交員

-

-

-

電気機械工

-

-

伸銅職工

-

-

-

製鑵職工

-

-

綿職工

-

-

-

バケツ製工

-

-

-

理髪見習

-

-

-

洋服裁縫工

-

-

-

自由労働

二〇九

八三

四六

三四二

土工

四三四

一九〇

二九

一五

六六八

土工頭

-

-

官庁人夫

二〇

-

三二

砂利採掘

一四一

七九

二二三

商店雑役

-

-

-

弁当配達

一〇

-

-

一一

晒職工

-

-

-

建築用具工

-

-

-

牧場使用人

-

-

-

鞄製造工

-

-

帽子製造工

-

-

-

飛行工場職工

-

-

-

砂糖職

-

-

-

コツク

-

-

-

製材職工

-

-

-

靴修繕工

-

-

-

納豆行商

二一

-

二九

飴行商

-

青物行商

-

-

-

荷物配達

-

-

-

新聞配達

一二

一二

二七

牛乳配達

-

-

-

自転車職工

-

-

-

印刷職工

-

-

-

製図工

-

-

-

スリツパ製造工

-

-

-

石工

-

-

-

蜜豆行商

-

-

-

空壜買

-

-

-

荷揚人夫

-

-

-

自動車ノ運転手並助手

-

撒水夫

-

-

新聞取次店

-

-

-

荷馬車挽

-

-

-

玄米パン売り

-

-

-

左官職手伝

-

-

-

砂利積込人夫

-

一〇

製管職人

一(ママ)

一(ママ)

-

-

二(ママ)

紙加工職

一(ママ)

-

-

-

一(ママ)

郵便集配人

-

-

-

ニツケル工

-

-

-

パイプ職

-

-

-

大理石仕上職

-

-

-

メリヤス職工

-

-

-

製菓工

-

-

-

製氷雇人

-

-

-

靴下製造工

-

-

ネヂ製造工

-

-

-

玩具工

-

-

天井板磨職

-

ブリキ工

一二

-

-

一三

鋳物工

一六

-

-

一七

鍍金工

一一

-

-

-

一一

カマボコ行商

-

-

-

九九九

四五八

一一七

二六

一、六〇〇

百分比

六二・四四

二八・六三

七・三一

一・六三

一〇〇・〇〇

 

 前述の通り郷里の生活より内地の生活の方が楽であるといふ者は絶対多数を占めて居る状態であるけれども、然らば楽であるから一生涯内地に於て暮らすかと聴けば、之は前者とはまるで反対で、殆んど全部が内地に永住する意志を持つてゐないのである。結局、彼等は。楽な生活をしながら金を設けるか若くは一定の職業を見習つて帰国する予定であるのが明である。老後はやはり故郷の山川に親まんとする希望で一杯のやうである。

 本調査に於て内地に永住するか否かに就て調査する処に依ると仍ち左の通りである。

 

 

永住

未定

不明

 

世帯員

二六・五〇

六七・五〇

六・〇〇

-

一〇〇・〇〇

独身者

一四・五〇

七七・〇〇

三・八八

四・六三

一〇〇・〇〇

 

 

5 在京朝鮮人の犯罪方面の考察

 朝鮮人と云へば頭から悪人だと思ひ、惨虐狂暴なる民族だと思ふものも多いやうだが、その実朝鮮人は左程に悪人でもなければ、爆弾ピストルを連想するほどの惨虐、狂暴なる民族ではないのである。むしろ真に朝鮮人を解し、彼等と親交ある人々にあつては異口同音に彼等に淳朴、柔順なる性格と、忍従、敬長の念が厚いのに驚ろくであらう。最近に至つては、之等の事実が一般的に知られて来たやうに見受けられるが之は朝鮮人に取つて幸ひといふよりも内地そのものゝために慶賀すべき事であると信ずる。

 過去に於て吾々は朝鮮人を解せず、且つ朝鮮人と、親交を持たざる故に、屡々大なる誤解を惹起し、徒らな禍を引起すことが多かつた。そのために両民族はその平和的関係に人為的原因に依る故障を多く与へて来たものであるが、今後に於ては吾々は断じて斯る非名誉的な事件を繰返さぬやう努力すべきであらう。

 左に挙げる昭和二年中警視庁管内に於ける朝鮮人の犯罪名と、其件数に依つて観ても之は証明されるもので、全人口の比例に依つて見ると、その件数は内地人の方が遥かに多い率を占めて居る状態である。たゞ彼等が、政治的犯罪と、賭博の犯罪に於て特に多い数字を示してゐるのは、彼等の政治的、民族的、環境と言語風俗の異る周囲に処してゐる理由を以て賭博の如き不純なる勝負事に依り娯楽を得やうとする結果であつて、事の善悪は之を別として寧ろ同情すべきであらう。

 李朝五百年間に於ける暴虐なる特権階級に犬馬の如く支配され、その勢力に屈服したる忍従性に富む民族こそ吾が朝鮮民族ではなかつたか。彼等はその永き歴史の過程に於て、数多き暴虐と、圧政に虐げられて来たけれども、一度も之に反逆の企てを犯して立つことのない従順な人々であることを吾々は知るべきではなかつたか?

 吾々は彼等を善導し、彼等を救済する前に先立ちて彼等の民族性の本質的方面を考察して、その善なる処をば奨美し、且つ世人の永き日の誤解を晴らすために務めなければならないと思ふ。之こそ日鮮両民族に与へられたる融合への近途であり、相互共栄の唯一の途であることを吾々は常に高調するものである。

 

 表(・)の(・)三九(・・)

              在京朝鮮人犯罪状況調

罪名

件数

公務執行妨害

一三

-

一三

失火

-

家宅侵入毀棄

-

家宅侵入

-

文書偽造

-

公文書偽造横領

-

有価証券偽造窃盗横領

-

姦通

-

強姦

-

賭博

四三一

一、二〇三

-

一、二〇三

殺人

-

殺人未遂

-

傷害

七五

九三

-

九三

暴行

一〇

-

一〇

過失傷害

-

傷害致死

-

遺棄

-

窃盗(除掏摸)

五三二

三三三

-

三三三

掏摸

三八

五九

-

五九

窃盗詐欺

-

窃盗横領

-

掏摸贓物故買

-

強盗

-

強盗傷人

-

詐欺

一九

一九

-

一九

恐喝傷害

-

横領

二〇

二二

-

二二

詐欺有価証券偽造

-

贓物寄蔵

-

贓物故買

-

毀棄

-

小      計

一、一六三

一、七九六

一、七九七

警察犯処罰令違反

四五三

四四八

一八

四六六

暴力行為等処罰ニ関スル件違反

一〇

一一

出版法違反

-

医師法違反

-

鉄道警察法違反

-

朝鮮煙草専売局法違反

-

自動車取締令違反

四五

四五

-

四五

自動車取締令施行細則違反

二一

二一

-

二一

自転車取締規則違反

-

道路取締令違反

一五

一五

-

一五

道路取締令施行細則違反

-

交通取締規則違反

-

人力車取締規則違反

一一

一一

-

一一

荷車取締規則違反

-

度量衡取締規則違反

-

小      計

五七三

五七五

一九

五九四

合      計

一、七三六

二、三七一

二〇

二、三九一

昭和二年中警視庁調

 

 

 

調査を了るに際して

 

 前記数項に亘つて論述したる処に依り、吾々は朝鮮人労働者問題の真相と、その原因が那辺に存するかゞほゞ観察されたことゝ思ふ。けれども、吾々のこの調査を通じて得たる常識は、将来に於て、また現在に於て楽観すべき問題ではなくして、この問題は、更に〳〵憂慮に堪へざる状態であることを認識したのである。しかしながら吾々はこの一時実に依つて全般を悲観し、絶望を感じるものでなきは勿論である。憂慮必らずしも、悲観に通ずるものではない。

 吾々は、彼等の生活に就て見た、彼等の労働状態、労働条件、失業率等に就て見た、また彼等の渡航理由に就でも論ずる処が熱田。けれども彼等の対策に就ては根本的に論ずることは今もつて不可能である。何故なら、この問題は静的現象である社会事実ではなく百化千遷、変化極りなく動きつゝある問題であるのみならず、一定区域のみに従つて完全に解決を与へることが不可能である動的社会事実であるからである。

  けれども吾々の観たる、吾々の信ずる彼等に対する根本的対策は、内地の各地に於て彼等の保護救済的事業を盛に起すと同時に、朝鮮内に於ては彼等の渡航を無くする事である。無くすることは、彼等を人為的に、法律的に制限し、阻止し、取締ることを意味するものではなく、自然的に彼等が農村に執着し、生活上の不安と、脅威を感ずることなく、その本業にいそしむやう誘導することである。斯の方法ををいて、他に当面の対策方法はないと信ずるものである。

 曽て、欧米に於ける先進諸国は、やはりその植民地諸民族のため、特にその労働者のために数多き社会上の諸問題を惹起し、内治外交上の平和に支障を来したことは吾々のよく知る処である。今や、吾国に於てもこの問題に当面するに至つた処がある。この危期に際して、たゞ吾々はその解決策に就て諸外国の前轍を踏まざるやう心掛くべきであらうと思ふ。

 吾々は、現在彼等のために考慮せねばならぬ当面の問題が山積してゐるやうに感ずる。即ち、彼等の住宅難に対する問題、職業に対する問題、救療の問題、教育の問題等々数へ尽されぬほどの諸問題が吾々の目前に差迫り横つてゐるのである。

 吾々は内鮮融和の方法により之等生活問題を緩和、解決せんとする努力には敬意を払ふものであるが、目前の近途は之等生活問題の緩和、解決の点に存するものと思ふものである。何故なら彼等は、非融和が原因で内地渡航を企てのではなくして、喰んがため、活んがために現在の境遇に墜つたに過ぎないからである。

 いまや彼等の問題は彼等自身の問題ではなく、社会的一般問題であり、内政的一般問題である。吾々は斯る重大且つ大なる問題の一日も早く解決されんことを衷心よる(ママ)祈る傍ら、本調査がそのために多少なり共寄与する処があれば幸甚である

 

 

 

 

附録

 

在京朝鮮人保護並内鮮融和を目的とする団体及其施設

 

団体名

 

財団法人 相愛会

創立年月日

 

大正十年十二月二十三日

主宰者

 

会長 李起東 副会長 朴春琴

会員数

 

一、〇〇〇名

目的

 

日鮮融和、朝鮮人労働者保護

事業

 

簡易宿泊所、無料診療、職業紹介、日曜学校

支部及出張所

 

城東支部、京浜支部、早稲田出張所、寺島出張所、足立出張所、北部支部

 

 

 

団体名

 

在日本関東朝鮮労働一心会

創立年月日

 

大正十五年一月一日

主宰者

 

金潤秀

会員数

 

八〇〇名

目的

 

朝鮮人労働者の保護

事業

 

職業紹介、無料宿泊、相互扶助

支部

 

全国に数ヶ所の支部あり

 

 

 

団体名

 

力行社

創立年月日

 

大正十三年九月

主宰者

 

姜昌基

会員数

 

五〇名

目的

 

朝鮮人労働者及苦学生の保護

事業

 

宿泊、職業紹介、其他

 

 

 

団体名

 

野方汗愛寮

創立年月日

 

昭和二年九月

主宰者

 

寮長 蓮沼門三 主任 尾形栄造

会員数

 

六〇名

目的

 

日鮮融和、労働者苦学生の保護

事業

 

宿泊、職業紹介、其他

 

 

 

団体名

 

自彊会

創立年月日

 

大正十三年五月二十五日

主宰者

 

理事長 閔奭鉉

会員数

 

一〇〇名

目的

 

朝鮮人育英事業

事業

 

苦学生給費貸費保護、宿泊事業

 

 

 

団体名

 

一善労働会

創立年月日

 

大正十三年八月一日

主宰者

 

崔鍾煥

会員数

 

一〇〇名

目的

 

朝鮮人労働者保護

事業

 

宿泊、職業紹介

 

 

 

団体名

 

黄人社

創立年月日

 

大正十五年七月一日

主宰者

 

李東華

会員数

 

一〇〇名

目的

 

日鮮融和

事業

 

主義目的の宣伝

 

 

 

団体名

 

東昌会

創立年月日

 

大正十五年十二月十五日

主宰者

 

趙東一

会員数

 

二三〇名

目的

 

日鮮融和、労働者保護

事業

 

宿泊、職業紹介

 

 

 

団体名

 

共和団

創立年月日

 

昭和二年

主宰者

 

金瓊権

会員数

 

一五〇名

目的

 

朝鮮人労働者保護

事業

 

宿泊、職業紹介

 

 

 

団体名

 

大同協会

創立年月日

 

昭和三年五月

主宰者

 

副会長 申定湜

会員数

 

三〇〇名

目的

 

朝鮮人労働者保護

事業

 

宿泊 職業紹介

 

 

 

団体名

 

同族共済会

創立年月日

 

昭和三年十月十四日

主宰者

 

朱炳昱

会員数

 

一五〇名

目的

 

朝鮮人労働者保護

事業

 

宿泊、職業紹介、其他

 

   在京朝鮮人労働者十名以上を収容せる人夫部屋数

麹町区

 

 

本所区

一四

神田区

一五

 

 

深川区

八七

日本橋区

 

 

市部計

一九四

京橋区

 

 

荏原郡

五九

芝区

一九

 

 

豊多摩郡

五一

麻布区

 

 

北豊島郡

七九

四谷区

 

 

南足足部(ママ)

赤坂区

 

 

南葛飾郡

五七

牛込区

 

 

南多摩郡

小石川区

一六

 

 

北多摩郡

二八

本郷区

 

 

西多摩郡

一六

下谷区

 

 

郡部計

二九五

浅草区

 

 

 計

四八九