【NHK宛】公開質問状(R3.5.12)

真実の歴史を追求する端島島民の会が令和3年5月12日に日本放送協会(NHK)宛に出した公開質問状。

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公開質問状

(情報開示請求の趣旨を含む)

 

   令和3年5月12日

 

東京都渋谷区神南2丁目2番1号

日本放送協会 殿

(日本放送協会総務局法務部内)

弁護士 梅田 康宏 先生

 

質問人 真実の歴史を追求する端島島民の会 

質問人代理人

大阪市中央区今橋四丁目3番6号

淀屋橋NAOビル9階

弁護士法人トラスト&サービス

TEL06-6229-8811

FAX06-6229-1200

弁護士 北浦 一郎

冠省 

 当職(弁護士北浦一郎)は、「真実の歴史を追求する端島島民の会」(以下「島民の会」といいます。)の代理人として、日本放送協会殿(以下「NHK殿」といいます。)に対し、本書(質問状)を呈します。

 

第1 島民の会の「抗議書兼通知書」

 

1 はじめに

 

島民の会は、NHK殿に対して、令和2年(2020年)11月20日付抗議書兼通知書(以下「抗議書」といいます。)で、【A】NHK殿(福岡放送局)制作に係る「追憶の島~ゆれる“歴史継承”~」とする番組(以下「本件番組」といいます。同年10月16日に「実感ドドド!」の放送枠で放映)、並びに、【B】NHK殿制作に係るNHK短編映画「緑なき島」(以下「本件短編映画」といいます。平成27年(2015年)11月以降発売されたDVD「軍艦島よ永遠に~NHKアーカイブスより~」に収録)について、客観的かつ具体的な根拠を示した上、端島炭鉱の坑道内の描写及び映像が事実に反しているとして、厳重に抗議の上、訂正等の措置を求めました

 

2 抗議書の指摘事項及び抗議事項等

 

 抗議書において、【A】本件番組に関し、韓国映画「軍艦島」の数シーン(日本人や日本兵による朝鮮人炭鉱夫に対する過酷な労働の強制や虐待の映像)及びそれらに合致する朝鮮人炭鉱夫(故人)の供述を放映するなど、戦時中の端島炭鉱の労働環境に関し、事実無根の虚構をあたかも真実であるかの如く印象付けようと試みた事実を指摘しました。

 

 次に、【B】本件短編映画の坑内の映像に関し、昭和30年(1955年)当時、<1>安全上(昭和24年施行の鉱山保安法上)、坑内撮影の許可は考えられないこと、<2>ふんどし姿の作業はなかったこと、<3>法令上、ライト無しのヘルメットの使用は有り得なかったこと、<4>入坑前と坑内の各映像を比べると、服装とヘルメットが全く異なること、<5>切羽での採掘道具はピックで、ツルハシではなかったこと、<6>切羽の坑道は傾斜していたこと、<7>切羽の坑道高は1.5m位で(主要坑道の高さはそれ以上)、坑道内を這うことはなかったこと、<8>端島では、法令上、防爆型の特殊な電球が使用され、裸電球は使用されていなかったこと、<9>切羽で発破を行うことはなかったこと、<10>粉炭で炭鉱夫の顔面や着衣は真っ黒になるので、白く綺麗なままは有り得ないこと、<11>作業中の炭鉱夫が腕時計を付けることはなかったこと、これら11項目の当時の端島炭鉱の坑道内では有り得ない映像箇所を根拠に、本件短編映画の坑道内の映像が端島炭鉱の当時の坑道内の映像では有り得ないことを指摘しました。

 

その上で、端島の坑道内の状況に関し、少なくとも上記11項目の説明の付かない虚構が意図的に捏造されていること、それらの事実に反する映像が後に多くの人々に誤った先入観を与え、その結果、戦時中、端島炭鉱の作業現場で、朝鮮人炭鉱夫があたかも奴隷の如く危険な作業を強いられていたかの虚構を印象付ける事態を招いていることを指摘しました。

 

さらに、韓国(釜山)では、本件短編映画が公的な資料館(国立日帝強制動員歴史館)で映像資料として公開されている結果、本件短編映画を素材に、あたかも、端島において、日本兵(戦時中、日本兵は端島に駐屯していません。)が、朝鮮人徴用工を奴隷のように扱い、大量殺人を含む甚だしい人権侵害の虐待を行っていたとして、日本を断罪する反日映画「軍艦島」が制作・上映され、激しい反日感情が扇動されるという事態を招いた事実も指摘しました。

 

 なお、同様に、【A】本件番組では、生前のソ・ジョンウ(徐正雨)氏が、「端島炭鉱はうつ伏せで掘るしかない狭さで、生きて帰れないと思った」などと、【B】本件短編映画の映像に沿った虚構を供述していますが、斯様な供述映像は、客観的根拠を確認することなく、同人の述べるがままに放映されています。

 

3 抗議書における要求事項等

 

 島民の会は、抗議書で、NHK殿に対し、【B】本件短編映画の坑道内とされる映像に関して、NHK殿が、【1】実際は端島炭鉱の坑道内の映像ではないこと等について、経緯や原因を徹底的に調査の上、調査結果を全て公表すること【2】映像が虚構であったことについて、速やかに、韓国を含む全世界に対し、公に訂正の報道を行い、訂正を周知徹底させること【3】韓国(釜山)の国立日帝強制動員歴史館を含む保有者から、コピー(写し)を残さず、完全に回収すること、並びに、【4】NHK殿が、【B】本件短編映画を起点(情報源)として世界的に拡散した端島に関する虚構(誤解や悪名:【A】本件番組の印象操作を含みます。)に関して、それらの虚構により、戦時中、端島で生活していた元島民ら及びその子孫の全員一人一人が、長期間にわたり、端島で生きた誇りや自尊心を踏み潰され深く傷つけられてきたことについて、元島民ら及びその子孫の全員一人一人に対し、正式に書面で、真摯にかつ丁寧に謝罪した上、適正な慰謝の措置を講じることこれら【1】乃至【4】を要求しました

 

 島民の会及び元島民らは、本書でも、NHK殿に対し、NHK殿が、上記【1】乃至【4】の要求事項を速やかに履行されることを強く要求するものです。

 

第2 抗議書に対するNHK殿の回答等

 

1 NHK殿の回答等

 

 抗議書に対して、NKH殿は、貴職の当職宛令和2年(2020年)12月25日付回答書(以下「貴職の回答書」といいます。)において、「この度、『緑なき島』に関係する資料の確認や、取材・制作に関わった部署の関係者などからの聞き取り、昭和30年代以前に撮影され、保管されていた炭鉱の映像の精査などを行」ったとして、「その結果、『緑なき島』において、ご指摘のような、別の炭鉱で撮影された映像が使用されたという事実は確認され」ず、「『緑なき島』は、当時の長崎市の端島における取材に基づき制作・放送されたものと考えて」いると回答されました。

 

2 NHK殿の回答に対する島民の会及び元島民らの認識(失望)等

 

そもそも、NHK殿が、民間放送局とは異なり、国民の受信料で運営されることから、公平性及び公正性がより厳格に求められる公共放送局であること、換言すれば、社会に与える影響力が極めて強い公共放送局であることは、公知の事実です。

 

島民の会及び元島民らは、そのような社会に与える影響力が極めて強い公共放送局のNHK殿において、抗議書で指摘した【B】本件短編映画に関する上記11項目の映像部分等について、事実に謙虚な姿勢で向き合う真摯な調査や取材等を徹底的に行われた上で、島民の会及び元島民らに対し、客観的な根拠を個別具体的に示され、上記【1】乃至【4】の要求事項の全てを速やかに履行されるなど、誰もが納得のできるご対応、ご回答又はご説明を正々堂々とされるのであろうと期待しておりました。

 

しかし、斯様な高度の公平性、公正性、及び公共性を求められるマスメディアのNHK殿が、何一つ具体的に回答も説明もされず、<ア>資料の確認、<イ>関係者からの事情聴取、及び、<ウ>過去の映像の精査を行った旨のみを抽象的に回答されただけで、適正な取材・制作・放映であったとする結論のみを強弁されました。

要するに、NHK殿は、貴職の回答書で、【B】本件短編映画における上記11項目の不審極まりない映像部分等に関し、何一つ客観的根拠を個別具体的に示されず、NHK殿に非は無いとする抽象的な結論のみを押し付けられたもので、島民の会及び元島民らの上記期待は悉く裏切られました。

 

3 本書の目的

 

 以上の経緯を踏まえ、島民の会及び元島民らは、本書で、再度、NHK殿に対し、【A】本件番組における戦時中の端島炭鉱坑道内の労働環境等に関する描写又は印象操作(朝鮮人炭鉱夫に対する虐待や虐殺を含みます。)が事実に反していること、及び、【B】本件短編映画における昭和30年(1955年)当時の端島炭鉱坑道内の労働環境等に関する映像が事実に反していることを主張した上、再度、抗議書に記載された上記【1】乃至【4】の要求事項の速やかなる履行を強く求めると共に、もし、NHK殿が従前の履行拒否のご対応を改められないのであれば、抗議書に関する調査の結果等や本書記載の質問等に対する回答等を含む客観的かつ具体的な根拠資料等の詳細な開示を求め、かつ、NHK殿には上記根拠資料等の開示には応じて頂き、島民の会及び元島民らにおいて、開示を受けた根拠資料等を精緻に分析して再反論を行い、【A】本件番組の描写等及び【B】本件短編映画の映像等が事実に反することを最終的に認めて頂くことを目的としております。

 

 したがいまして、本書においては、専ら、【B】本件短編映画の映像等を問題視しておりますが、抗議書と同様、【A】本件番組の描写等についても、NHK殿に対し、適正な対応等を求めております。

 

第3 抗議書に関するNHK殿の国会答弁

 

NHK殿は、島民の会及び元島民らの主張、指摘及び要求等を記載した抗議書に関し、国会で、以下の答弁をされました。

 

1 令和3年2月25日衆議院予算委員会

 

令和3年(2021年)2月25日、衆議院予算委員会第二分科会で、NHK殿の正籬聡副会長(以下「正籬副会長」といいます。)は、自由民主党の杉田水脈議員の質問に、概要、以下の答弁をされました。

 

 【B】本件短編映画に関し、正籬副会長は、<1>韓国の国立日帝強制動員歴史館が、使用許諾を得ず、NHK殿に使用料を支払っていないこと、及び、<2>島民の会から、端島炭鉱に関する映像部分が事実と異なるとして検証を求められたことについて、<ア>資料の確認、<イ>関係者からの事情聴取、及び、<ウ>昭和30年以前に撮影され、保管されていた140本近い炭鉱の映像の精査など、出来る限りの確認作業を行い、別の映像を持ってきたという事実は確認されなかったことを答弁されましたが、<3>NHK殿の内部調査だけで、外部の第三者の検証を受けていないことは適正かと問い質されると、適正か不適正かを回答されず、答弁を回避されました。

 

そして、【A】本件番組に関し、正籬副会長は、本件番組でインタビューを放映された島民の会所属の石川東氏(父親が端島炭鉱で働き、高校時代まで端島で暮らした元島民:以下「石川氏」といいます。)が、インタビュー取材時に、端島の島内で朝鮮人炭鉱夫やその同居家族らに対する差別は無かったと説明しているのに、放映時には、その部分がカットされた上、インタビュアーが「故郷に負の遺産が伝えられるのは嫌ですか」という一般論を尋ねる体裁で質問し、石川氏が「それははっきり出てくれば嫌だと思いますよね、しかし、僕らはなかったと信じていますから」と述べた部分のみを抽出し、放送したとして、放送後に、石川氏が担当ディレクターに抗議したところ、担当ディレクターが「すみませんでした。」と石川氏に謝罪した件(以下「石川氏の件」といいます。)について、速やかに訂正する意向の有無を問い質されると、<ア>放送に誤りは無かったこと、及び、<イ>石川氏の件で、担当ディレクターが石川氏に謝罪した事実や誤りを認めた事実は無かったことを答弁されました。

 

さらに、正籬副会長は、本件番組で顔と名前を伏せて放映された海上ツアーの女性ガイドのインタビューに関し、放送後、当該女性ガイドの実在が確認できないとして、「やらせ」の疑惑があるとの指摘を受けましたが(以下「やらせ疑惑の件」といいます。)、<ウ>やらせの疑惑を明確に否定する旨を答弁されませんでした。

 

2 令和3年3月16日参議院内閣委員会

 

令和3年(2021年)3月16日、参議院内閣委員会で、正籬副会長は、自由民主党の和田政宗議員の質問に、概要、以下の答弁をされました。

 

 【B】本件短編映画に関し、正籬副会長は、NHK殿が行った確認作業について、<イ>聴取した関係者が100人を超えたこと、<ウ>昭和30年以前に撮影され、保管されていた約140本の映像に関し、各場面ごとの撮影場所の詳細は記録されていなかったこと等を答弁されました。

 

3 令和3年3月30日参議院総務委員会

 

令和3年(2021年)3月30日、参議院総務委員会で、NHK殿の前田晃伸会長(以下「前田会長」といいます。)は、自由民主党の青山繁晴議員の質問に、概要、以下の答弁をされました。

 

 【B】本件短編映画に関し、前田会長は、<a>元島民らに誠意を以て真摯に対応すること、<b>しかし、元島民らとの直接面談には応じないこと、<c>坑道内の映像が複数残されており、当時の端島炭鉱の坑道内では、撮影は可能で、上半身裸の作業もあったと思われること、<d>取材や制作に直接関わった人から話を聞けていないこと、<e>140本の映像は計30時間であったこと、<f>在庫切れを理由に令和3年(2021年)3月末を以て販売を止めたこと等を答弁されました。

 

第4 NHK殿は、島民の会及び元島民らに対して、情報開示義務を負うこと

 

1 NHK殿の内部規律及び対外的宣言

 

(1) NHK放送ガイドライン2020

 

 NHK殿は、令和2年(2020年)2月28日、放送法に基づき、「NHK放送ガイドライン2020」(以下「ガイドライン」といいます。)を公表され、その第2章の「放送の基本的な姿勢」で、NHK殿の内部規範(規律)として、概要、以下の規範的義務等を定めています。

 

 すなわち、NHK殿は、【1】正確性に関して、(1)事実を正しく把握し、真実に迫る、(2)正確性の欠如を禁止する、(3)番組の狙いを強調するための事実の歪曲を禁止する、(4)事実関係の誤りが判明した場合は速やかに訂正する【2】公平性及び公正性に関して、(5)視聴者への幅広い視点からの情報提供及び(6)社会的弱者の視点を前提として、(7)事実と意見の明確に峻別する、(8)歴史的事件、事柄、事象の意見対立があるものや、学問的見解に対立があるものは、放送前に多角的に検証する、(9)裁判や論争の対象事項は、多角的に問題点を明らかにし、各立場を公平・公正に扱う、上記(1)乃至(9)の規範的義務を課しています。

 そして、【3】人権の尊重については、(10)不当に名誉を傷つけないように、取材や制作のあらゆる過程で細心の注意を払う、(11)放送内容が虚偽である場合の名誉権(個人や団体の社会的な評価を侵害されない権利)侵害(名誉毀損)を警告し、(12)内容が真実であること、又は、取材を尽くし、真実と信じる相当の理由があることを十分に検討し、不当に名誉を傷つけないように注意する、上記(10)乃至(12)の規範的義務を課しています。

 

(2) NHK殿の番組「フェイク・バスターズ『“選挙とフェイクニュース”』」における提言等

 

 NHK殿は、地上波で、令和2年(2020年)12月19日、「フェイク・バスターズ『“選挙とフェイクニュース”』」(以下「フェイク・バスターズ」といいます。)という番組を放映されました。

 

フェイク・バスターズでは、大衆を惑わすフェイク(偽情報)への対処として、概要、<a>事実と意見を峻別すること<b>根拠の確認が必要不可欠であること<c>一個のファクトを過大評価するなど、確証バイアスに陥るリスクを認識すること<d>NHK殿を含むマスメディアが、取材のプロセスを透明化させて、自らファクトチェックを行うなど、自らを改善しなければならないこと等について、肝に銘じるべきであると提言されました。

 

なお、確証バイアスとは、フェイク・バスターズでも紹介されていましたが、認知心理学社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視又は集めようとしない傾向のことで、この傾向は、一般に、人は自分の価値観や信念に一致する情報を探そうとする生来の心理的な傾向を持つためであると説明されます。

 

(3) ガイドラインの規範的義務とフェイク・バスターズの提言の整合性

 

NHK殿は、NHK殿の番組であるフェイク・バスターズで、大衆を惑わすフェイク(偽情報)への対処として、概要、上記の4提言(上記<a>乃至<d>)を宣言(放映)されましたが、上記<a>(事実と意見を峻別すること)はガイドラインの上記(7)に合致し、上記<b>(根拠を確認することが必要不可欠であること)はガイドラインの上記(1)乃至(3)、並びに、(8)乃至(12)に合致又は整合し、上記<c>(一個のファクトを過大評価するなど、確証バイアスに陥る危険性やリスクを認識すること)はガイドラインの上記(3)並びに(5)乃至(9)に合致又は整合し、さらに、上記<d>(報道機関、特に、NHK殿を含むマスメディアが、取材のプロセスを透明化させて、自らファクトチェックを行うなど、自らを改善しなければならないことについて、肝に銘じるべきであること)はガイドラインの上記(1)乃至(12)の全てと合致又は整合しています。

 

 そして、前田会長が国会で答弁されたとおりガイドラインは、第18章の「誠意ある対応」で視聴者からの問い合わせや意見、苦情などには誠意を以てできるだけ迅速に対応するべき規範的義務を定めていますが、この規範的義務は、フェイクバスターズの上記<d>取材(プロセス)の透明化を義務付ける提言に合致するものです。

 

2 抗議書に関し、NHK殿が島民の会及び元島民らに対して負う情報開示義務

 

第一に、【ア】元島民らは、現在、特に韓国や日本国内の一部の反日活動家を含む世界中から、戦時中の端島で朝鮮人炭鉱夫を過酷な労働環境で奴隷の如く差別的に扱い、虐殺や虐待の対象とした日本人やその子孫という、事実に反した悪名や汚名を浴びせられている人権(名誉権)侵害の被害者として、社会的弱者と認められ、ガイドラインの上記(6)に基づき、保護(救済)されるべき対象となります。

 

第二に、【イ】島民の会及び元島民らの名誉権侵害の問題である以上、抗議書記載の少なくとも上記11の項目について、これまで本件短編映画を広く販売されてきたNHK殿は、ガイドライン上記(10)の取材や制作のあらゆる過程で名誉権侵害が生じていないかを、また、同(11)の映像内容が虚偽ではないかを、細心の注意を以て調査及び確認するべき規範的義務、及び、同(12)の映像内容が真実であること、又は、当時、取材が尽くされており、真実と信じる相当の理由が存在したことを十分に調査及び確認をするべき規範的義務を負われていることになります。

 

 第三に、【ウ】韓国及び日本の反日活動家らは、戦時中の端島で、朝鮮人炭鉱夫が、日本人により、過酷な労働環境で奴隷の如く差別的に扱われ、虐殺・虐待されたとする虚構を主張し、他方、島民の会は、一般財団法人産業遺産国民会議(以下「国民会議」といいます。)のホームページで公開されているとおり、上記虚構が耳目を集める度、南ドイツ新聞(2017年5月23日)、大韓民国駐日本大使(同年8月15日)、毎日新聞及び長崎新聞(2019年6月5日)、JTBC(韓国のテレビ局)及び岡まさはる記念長崎平和資料館(同年12月6日)、朝日新聞(2020年7月27日)に対し、斯様な虚構を否定する趣旨の書面等を発信し続けてきたもので、斯様な虚構の肯否は歴史的な事実に関する重大な論争である以上、NHK殿は、ガイドライン上記(3)の番組の狙いを強調するために事実を歪曲したか否か、同(7)の事実と意見を明確に峻別したか、同(8)の多角的な検証を尽くして制作したか、及び、同(9)の多角的な問題点に配慮して、各立場を公平・公正に扱ったかを、調査及び確認をするべき規範的義務を負われていることになります。

 

 第四に、【エ】NHK殿は、NHK殿の著作物である【A】本件番組及び【B】本件短編映画に関し、名誉権侵害を訴える島民の会及び元島民らに対しては、そもそも、前田会長が国会で答弁されたとおり、ガイドラインの上記第18章「誠意ある対応」に基づき、誠意を以て、できるだけ迅速に対応するべき規範的義務を負われています。 

 

第五に、【オ】NHK殿は、NHK殿の番組であるフェイク・バスターズにおいて、上記<d>のとおり、特にNHK殿を含むマスメディアが、取材のプロセスを透明化させて、自らファクトチェックを行うなど、自らを改善しなければならないことについて、肝に銘じるべきであると高らかに宣言(公言)され、つまり、自ら、ガイドラインの上記(1)乃至(12)の全ての規範的義務の完全なる履行及びその履行過程の透明化(つまり、開示義務)を高らかに宣言(公言)されました。

 

上記【ア】乃至【オ】のとおり、NHK殿は、島民の会及び元島民らに対し、抗議書記載の上記要求事項【1】に関する詳細な回答(情報開示)を行うべき規範的義務、すなわち、【B】本件短編映画の内、端島炭鉱の坑道内の映像部分が、少なくとも上記11の項目に関し、事実に反していたこと(=当時の端島炭鉱の坑道内を撮影した映像ではないこと)等について、経緯や原因を徹底的に調査の上、NHK殿に有利か不利かを問わず、調査のプロセスを透明化させるべく、調査対象となった全資料(保管映像、事情等を聴取した関係者の供述及びその他の記録資料等の全て)、並びに、調査結果(調査報告書等)の詳細の全てを開示(透明化=公表)するべき規範的義務を負われていることとなります。

 

第5 抗議書に関し、NHK殿が島民の会及び元島民らとの関係では、情報開示義務に違反していると認められること

 

 貴職の回答書、つまり、NHK殿には非が無いとする旨の抽象的な結論のみのA4版1枚足らずのNHK殿の上記回答は、名誉権侵害(名誉毀損)の被害を受けている島民の会及び元島民らとの関係では、NHK殿が公表されている自律規範であるガイドラインの上記の各規範的義務、並びに、NHK殿の番組であるフェイク・バスターズで公言(宣言)されたマスメディアであるNHK殿が負うべき取材(プロセス)等を透明化させるべき規範的義務(情報開示義務)に基づき、NHK殿が、【B】本件短編映画の内、端島炭鉱の坑道内の映像部分が、少なくとも上記11の項目に関し、事実に反していたこと等について、経緯や原因を徹底的に調査の上、NHK殿に有利か不利かを問わず、調査対象となった全資料及び調査結果の詳細の全てを開示(透明化=公表)するべき規範的義務に、明らかに違反されていることとなります。

 

 仮に、万が一、NHK殿が、ガイドラインの上記各規範的義務やフェイク・バスターズの上記各提言について、貴職の回答書の如く、本件には当てはまらない、あるいは、NHK殿の自己査定で違反はないなどとして、情報開示を拒否されるならば、それは、ガイドラインの存在意義を自己否定されたこと、又は、お手盛り適用でガイドラインを有名無実化されたこと、あるいは、NHK殿は、他罰的な報道には異様に執着するけれども、他者の批判や指摘を拒絶し、適正な自己批判や厳正な自己規律の自浄作用が全く機能しないことを公言したに等しく、最早、公共放送におけるフェイク・バスターズでの宣言(大言壮語)と矛盾することは明白であると断じざるを得ません。

 

第6 NHK殿に対する情報開示請求等

 

 島民の会及び元島民らは、NHK殿に対して、再度、NHK殿が島民の会及び元島民らに負う上記の情報開示義務に基づき、すなわち、【B】本件短編映画の内、端島炭鉱の坑道内の映像部分が、少なくとも上記11の項目に関し、事実に反していたこと(=当時の端島炭鉱の坑道内を撮影した映像ではないこと)等について、経緯や原因を徹底的に調査の上、調査のプロセスを透明化させるべく、調査対象となった全資料及び調査結果の詳細の全てを開示(透明化=公表)するべき規範的義務に基づき、以下の情報又は事実等について、NHK殿に有利か不利かを問わず、ありのまま、誠実かつ迅速に、個別具体的な情報又は事実等を開示又は回答することを請求します。

 

(1) 国会でNHK殿が精査したと答弁された、昭和30年以前に撮影され、保管中の140本近い炭鉱の映像(延べ約30時間に及ぶ映像)について、各映像の撮影の日時、場所、撮影者、内容及び対象、並びに、上記11の項目に関係する抜粋写真と共に、上記約140本の映像全部のコピーを開示されたい(島民の会はNHK殿の著作権を侵害しないことを誓約します。)。

 

(2) 戦後直後の昭和22年(1947年)に、株式会社日本映画社が撮影した端島炭鉱の「日本ニュース」の映像(-キャメラ報告-海底の炭鉱 長崎・高島炭鉱)によれば、上記11の項目に関し、一部にツルハシを使用している映像部分はあるものの、炭鉱夫は全員ヘッドライトを装着しており、同映像から8年経過した後、また、昭和24年(1949年)5月の鉱山保安法の施行から6年後となる昭和30年(1955年)に撮影されたとする本件短編映画では、坑道内で誰もヘッドライトを装着していないことは極めて不自然かつ不合理であるところ、本件短編映画の撮影隊の内、誰が、三菱鉱業の誰から、何時、どこで、どのように、端島炭鉱の坑道内に入坑する許可を得て、何時、坑道内のどの場所まで入坑して撮影したのか、具体的に明らかにされたい。

 

(3) <ア>資料の確認、<イ>関係者100人以上からの事情聴取、及び、<ウ>過去の140本近い映像の精査を実際に行ったNHK殿の部署名、責任者及び調査担当者の人数及び各人の所属部署名を明らかにされたい。

 

(4) 上記(3)<ア>乃至<ウ>の各精査に関し、各着手日及び各完了日、各計画書及び各工程表、関連の各議事録又は各日報、並びに、途中経過の報告書及び調査報告書、これらの全てについて、NHK殿にとって有利か不利かを問わず、漏れなく、開示されたい。

 

(5) 上記(4)及び上記(3)<ア>資料の確認の精査に関し、確認の対象となった資料の全てについて、NHK殿にとって有利か不利かを問わず、漏れなく、開示されたい。

 

(6) 上記(4)及び上記(3)<イ>100人以上の関係者からの事情聴取に関し、事情聴取の対象となった関係者について、各人の本件短編映画との関係性(各人の具体的氏名は匿名でも構いませんが、各人の年齢、性別及び所属部署等は開示されたい。)、並びに、各人の供述内容(供述書や供述報告書)の全てについて、NHK殿にとって有利か不利かを問わず、漏れなく、開示されたい。

 

(7) 本件短編映画に関する少なくとも上記11の項目に関し、鉱山の専門家や当時の三菱鉱業等の炭鉱技術者等、外部の有識者で構成される調査委員会に、公平、中立かつ公正な調査を委ねることのできない特段の理由があるのか、もし、あれば、開示されたい。

 

(8) フェイク・バスターズのスタジオ出演者全員に対し、貴職の回答書(NHK殿の回答)に関し、調査の過程や詳細等のプロセスを透明化(開示)せず、個別具体的な回答や説明に応じなかったことについて、その是非を問い合わせ、その結果を回答されたい。

 

(9) 【A】本件番組に関し、NHK殿は、石川氏の主張を否認され、ガイドライン違反が無いと断言される具体的な理由及び根拠を開示されたい。

 

(10) 【A】本件番組に関し、NHK殿はやらせ疑惑の件の疑惑を明確に否定されるのか否か、具体的な理由及び根拠を示して、回答されたい(島民の会は、NHK殿の取材源の秘匿を侵害する意図が無いことを誓約します。)。

 

第7 結語

 

以上のとおり、島民の会及び元島民らは、本書で、NHK殿に対し、上記第6.3(1)乃至(10)の全事項についての誠実かつ迅速な開示又は回答を請求します。

 

もし、NHK殿が開示(透明化)又は回答に一部でも応じられない場合、NHK殿は、最早、フェイク(偽情報)を排除して自らの報道に責任を持つ正当なマスメディア(公共放送局)では有り得ず、客観的根拠に基づかず、無責任かつ無制約に自らの見解やフェイク(偽情報)を社会に流布して表現の自由を貪る現代の無法なユーチューバーらと同等ということになります。

 

なお、NHK殿が、開示及び回答に応じられない場合、あるいは、開示又は回答に応じられても、その内容がNHK殿のご主張の根拠として不合理と認められる場合、島民の会及び元島民としては、やむを得ず、【A】本件番組の描写等及び【B】本件短編映画の映像等が事実に反していることの公的な認定を求め、必要な対抗措置を講じることになりますので、付言します。

名誉毀損の法律構成の他に、現在、NHK殿の所為が、刑法上の偽計業務妨害罪(刑法第233条:信用毀損及び業務妨害:「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」)の構成要件に該当する違法行為か否かを検討しております。

 

先ず、島民の会及び元島民らは、これまで、国民会議のホームページ及び上記のとおり、端島炭鉱に関する上記の虚構が報道又は宣伝される都度、2017年5月以降、2020年7月頃まで、間断なく、南ドイツ新聞、大韓民国駐日本大使、毎日新聞及び長崎新聞、JTBC(韓国のテレビ局)及び岡まさはる記念長崎平和資料館、朝日新聞に対し、虚構を否定する趣旨の書面(抗議文等)を発信し続け、「端島の歴史を正確に伝承する活動」を継続してきたもので、この活動は、法的保護に値する継続的な「業務」と認定されます。

 

次に、【B】本件短編映画の坑道内の映像は、事実に反し、殊更、劣悪で危険な炭鉱作業を誇張又は強調する内容で、それが、韓国映画「軍艦島」に代表されるとおり、徴用工問題に関し、端島炭鉱を根拠とする反日キャンペーンを正当する根拠とされている実態から、「人(一般大衆や視聴者)を欺罔・誘惑し、又は、他人(一般大衆や視聴者)の無知、錯誤を利用」して、「他人の適正な判断を誤らせるに足りる」内容であるとして、「偽計を用いて」は認定されるものと解されます。

 

さらに、【B】本件短編映画は、韓国映画「軍艦島」の題材に利用されるなど、島民の会及び元島民らの上記業務に妨害の結果を生じさせ、また、島民の会のNHK殿への抗議等に関し、韓国の新聞社が島民の会及び元島民らを歴史修正主義者呼ばわりで不当に非難(バッシング)するなど、既に名誉毀損(名誉権侵害)の実害も生じており、NHK殿が、抗議書の受領後、約4ヶ月以上も本件短編映画の販売を継続された以上、「妨害」の継続及び「故意」は認定されるものと解されます。

 

 なお、前田会長の上記の国会答弁では、在庫切れを理由に、本件短編映画の販売を完了したとのことですが、DVDは極めて廉価で複写製造できることから、在庫切れの理由付けは詭弁又は方便の類としか解されず、NHK殿としては、事実上、本件短編映画の坑道内の映像等が、島民の会及び元島民らが抗議書で指摘したとおり、事実に反する虚構であると認識されたものと強く推認され、もし、そうであれば、偽計業務妨害罪の「故意」が認められることとなるので、NHK殿に対して、直ちに、抗議書記載の要求事項【1】乃至【4】の全てを履行されることを強く求める次第です。

 

したがいまして、【B】本件短編映画は、坑道内の映像が虚偽である以上、島民の会及び元島民らとの関係で、名誉毀損に該当するだけではなく、上記のとおり、検討段階ではありますが、刑事上、偽計業務妨害罪(刑法第233条)の構成要件にも該当することから、少なくとも、民事上、不法行為(民法第709条)が成立するものと認識しております。

 

 もし、NHK殿が、上記第6.3(1)乃至(10)の全事項について、誠実に開示及び回答もされない場合、島民の会及び元島民らは、【A】本件番組の描写等及び【B】本件短編映画の映像等が事実に反している虚構であることの認定を求めて、やむを得ず、【A】本件番組については、BPOの申立てを行い、併せて、【B】本件短編映画については、偽計業務妨害罪の刑事告訴も視野に入れ、民事訴訟(不法行為等)又は他の対応等の検討又は準備を鋭意進めて参りますことを予告します。

 

NHK殿におかれましては、令和3年5月21日(金曜日)までに、上記第6.3(1)乃至(10)の全事項について、個別具体的かつ詳細な情報の開示又は質問への回答に応じられるのか否か、その諾否を当職宛の書面で、簡潔にご回答下さい。

 

もし、NHK殿が開示又は回答に応じられるのであれば、同年5月21日(金曜日)までに、当職宛の書面で応諾する旨をご回答の上、同年5月28日(金曜日)を目途に当職必着で、全ての情報の開示及び全ての質問への回答をご完了下さい。

 

他方、NHK殿が、同年5月21日までに、従前の姿勢を改めて、島民の会の抗議及び指摘を受け入れ、抗議書に記載された上記要求事項【1】乃至【4】の全てについて、その履行を書面で表明される場合には、上記の開示及び回答には及びません。

 

本書に関するご質問、ご意見等がある場合には、当職(弁護士北浦一郎)宛に、直接、ご連絡下さい。

 

令和3年5月21日(金曜日)必着で、NHK殿又は貴職から、当職宛に、本書に対するNHK殿の書面(郵便の他、FAXでも結構です。)による回答をお待ちしております。

 

なお、今回は、既に、上記のとおり、前田会長の国会答弁の後でありますから、前回の抗議書のときのような時間稼ぎの目的での回答期限の延期(猶予)を求められても、応じることはありません。

草々