大阪毎日新聞神戸版(昭和3年7月26日付)生くる悲哀

Author
    Page 1

炎熱地獄に苦鬪する鮮人勞働者の群がり

 太陽は火を吹く、草も木も屋根も大地も燃ゑる眞っ晝間の炎天の下に、焼け土塊を運ぶ鮮人勞働者の群れが黙々と生を喘ぐのである。場所は、湊川公薗下有馬電鐵地下驛の工事場。深く掘下げた穴の底から汗と泥に汚れた鼠色のシャツ一枚の半裸體の人夫達が一列縦隊をつくり、蟻のやうに危なげな板の掛橋を這ひ上ってくる。背中に背負った土の重みが赤銅色の喉や肩に食ひ込み、汗が雨滴れのやうに足下の焼土に吸ひこまれる。穴の上には、トロツコの幾台が彼らを待ってゐる。背中の上を一ゆすりして、トロツコを充備させるために單調な機械的な彼等の勞働は、日の暮れるまで續けられるのである。炎熱地獄だ。この作業場では、「氷」と染抜いた三色旗が、何と意地惡いまで力强く目立つことだ!