協和事業 昭和15年 6月号

発行年:1940年(昭和15年)6月1日

発行:中央協和会

移住半島人労働者の訓練状況に就て

国立国会図書館所蔵

前身は『協和事業彙報』。「内鮮一体」という標語に代表される内地在住朝鮮人の内地化、皇民化の運動や事業、協和会の行う事業等に関する周知宣伝や研究について、中央協和会が編集発行した月刊誌。

 この号では、労務動員計画の実施に伴う朝鮮人労働者の移入に対し、これまでの知見や経験に基づいた教育、指導の方策について述べられている。

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移住半島人労働者の訓練状況に就て

             福岡県特高課長 後藤吉五郎

一、緒言

 戦時下内地半島生産力拡充の為特に石炭金属等重要時局産業増産の為昨年度以来募集に依る移住半島人労働者渡来の制度を制定せられ爾来多数の半島人産業戦士は続々として内地に渡来し夫れ〳〵当面重要なる職場に就き御報効の誠を致しつゞあるは、邦家の為欣快に堪へざる処である。従来各種の事情により半島人労働者の内地渡来は相当厳重な制限を附せられてゐたのであるが、戦時下生産力拡充が、極めて喫緊の要事である以上依つて以て生ずる各方面の障碍は関係当局者の積極的努力によつて克服し国家目的達成に邁進すべきであらう。

 福岡県は衆知の如く筑豊粕屋三池の大炭山を抱擁する関係上従来より多数の既住半島人労働者を有する上に今次の募集に依る半島人労働者制度に依り多数の渡来者ありたる次第にして之が指導育成の如何は、本制度の成否を左右する重大意義を有するものあるに鑑み平素より多大の関心を持ちてその任に当りつゝありし処で、恰も本紙編輯部より特に御申越の次第もあり茲に禿筆を費し主として炭坑に於ける移住労働者の一般状況報告を兼ね之れが訓練状況を紹介し各位の御批判と指導鞭撻を戴きたいと思ふ。

 

     二、北九州の炭坑事情

   見せてやりたや北九州の

   山にや石炭街には工場

みなと〳〵に舟が着く

 これは北九州の人々が自慢で歌ふ民謡の一節であるがこの詞の如く北九州の山地々方は筑豊炭田を中心に糟屋三池の炭田を控へさながらの黒ダイヤ王国である。大小数千百の炭山は、炭坑特有のケージとピラミツト型のボタ(硬炭)山で一見それと頷かれ初めて旅行する人を楽しませ戦時下産業の原動力を思はしむると共に炭坑労働に想ひを走らす多くの旅人は、所謂炭坑の監獄部屋を想起して容易に首肯し得ないものを感ずるであらう。然し今日の炭坑事情は近代文化の恩沢に浴して著しく改善せられ、又改善せられつゝありてその点多くは素人の杞憂に過ぎない。私としても炭坑に縁のない処に育ち炭坑と云へば怖きもの怖ろしきものとばかり考へて徒らに人道的感情を昂らせてゐたが、此の地に赴任して以来各方面からの状況を聞き或は各地の炭坑を視察して未だ経験せざる炭坑恐怖心に駆られてゐた事に初めて気付いたのである。賃銀或は福利施設の如き大工場さへも及ばぬ程充備した鉱山も決して尠くない。中小炭山には設備其の他充分の改善が出来てゐない処も時々見受けらるるが、これとても時代の転換と共に急テンポを以て改善の途上にあり、私共としても大に意を注いでゐる処である。従来の如く炭坑と云へば直ちに監獄部屋を連想するが如き一般世人の誤れる炭坑認識は総て事実がこれを払拭するであらう。

 

     三、移住労働者の使命と特異性

 時局下石炭の重要性に就ては先般重要問題化した日発問題により世人の認識を新にした観がある。単的表現を以てすれば、石器炭は産業の食餌であると言へる。吾人が生活して行く上に一日として飯米を欠す事が出来ないが如く重なる工事事業場は何等かの形に於て石炭を食つてゐないものはないと云ふも過言ではない。蒸気動力に依るものは勿論電気動力によるものも大小の差こそあれ石炭を消費せずしてその能力を発揮する事は不可能である。

 如斯黒ダイヤの名に恥ぢぬ貴重なる石炭―――その採掘に当る炭坑労働者に就ては戦時に直面して初めて産業戦士としての使命を一般より認めらるゝに至つたがその労務需給関係は各産業界に於ける全般的労力払底の為炭坑労働者の著しい減少を来し時局の要求する石炭増産に重大支障を生ずるに至つたのである。かゝる状況に鑑み従来相当抑制し来つた半島労働者の募集による渡来を認められたる所以にして本年度六百万噸増産の為尚多数の渡来が実現されつゝある事は以下に戦時下石炭労働が時局的重要性を有するものであるかを物語るものであり、移住労働者が銃後産業戦士として戦場の皇軍将士にも匹敵すべき重大使命を担へるものなることを銘記すべきである。而して半島労働者は近年半島に於ける内鮮一体運動皇国臣民教養の異常なる昂揚により、その心構へに於て日常生活に於て昔日の比に非ずと雖も衣食住を初め言語人情風俗慣習を著しく異にする関係上処遇其の他労務管理上特別の準備施策を講ずるにあらざれば各種の情弊に堪え兼ね思はざる結果を招来するも計り得ないのである。

 之れを県下に於ける過去の歴史に徴するも明かにして鉱山景気時代には半島人工夫増加するも労務管理等の点に極めて困難性ある為不景気時代ともなれば真先に整理の対象となり今次事変迄は大体各鉱山共整理淘汰の傾向にあり、当時残存半島人は極めて優良なるもののみになつてゐたと云へるのである。その整理時代に各種労働紛争議が続発して産業平和の障碍となり一方失業者対策の必要が痛感せられ又景気不景気如何に拘らず、在住半島人の増加に伴ひ半島人特有の犯罪も増加し内鮮融和乃至協和事業の必要性が加重し来つたと見るべきである。更に半島人労働者の特性として特に留意すべきは怠惰性と移動癖である。従来内地渡航者の多くは内地の好景気に憬れ一攫千金を夢見る出稼意識に捉はれ高賃銀を追ふて全国到る処を転々し面前の生活に窮せざれば殆んど稼働の意思なく徒食するもの多く生産拡充を目標とする労務調整上は勿論治安対策乃至協和事業遂行上極めて困難な事態が発生してゐたのである。従つて今次の移住労働の目的達成の為には、内鮮一体の根本原則に立脚し雇傭主側に処遇其の他に細密の注意を要すると共に、移住者の訓練を通しての皇国臣民としての基礎的教育を施し銃後産業戦士として奉公の誠を致さしむることを目標に教育育成し所期の成果を挙ぐべきである。

 移住労働者の処遇は慎重考慮すべきものあるに鑑み事前厳重なる雇傭条件を附し而も之を履行し得る能力ありと認めらるるものに限り募集雇入れを許容する必要あり半島に於ける応募者人選に際しては現地関係当局の積極的協力を得て身体強健思想健実真に産業戦士としての適格者を撰衡しつゝある為一部例外的に移住に名を借り内地渡航せんとする所謂便乗渡来者を除いては極めて優秀者の渡来を見つゝあるのは幸甚の至りであるが、移住後の素質如何は大半募集人選の良否にて決せらるゝ運命にあり。朝鮮側に於て一段の協力を切望して已まざる処である。

 各雇傭主に於いても協和事業の精神と移住雇傭の責任を理解し内地人或は既住半島人と差別的取扱ひを為すが如き事なき様労務管理上特別の留意を払ひ稼働賃銀の如き渡来当時三ヶ月の訓練期間中は就業時間中二時間を訓練時間に充て熟練坑夫を作業指導に当らせる為め却つて減産となる処もあり、又内地人に比し能率的に劣る点あるにも拘らず、平均一日二円五十銭程度を給与しつゝあり賃銀以外の諸給与に就ても工場等に比し、優遇せらるゝ点ある為実収賃銀は工場に比し遥に優位にあるのである。

 稼働状況につ■見るに能率的には言語不通と未経験なる為一般坑夫に比し七〇%乃至八〇%にして相当低率にあるも三ケ月の訓練を経ば九〇%乃至一〇〇%に及ぶ状況にして就業(入坑)率は渡来当初平均九〇%以上中には九八%乃至一〇〇%を示すもの尠からず日時の経過と共に幾分低下するも、未だ一般坑夫に比し遥に良好にして而も一部逃走者坑内恐怖者を除き旺盛なる労働意慾は既住半島労務者に対比して雲泥の相違あり渡来後三ケ月乃至六ケ月にして熟練坑夫と何等遜色なき向上を示すものとして頗る将来を期待せられてゐる状況である。

 

      五、移住労働者訓練の状況

 移住労働者訓練の必要性に鑑み彼等をして真に皇国臣民としての基礎的修養を与へ銃後産業戦士として報効の誠を致さしむる根本目標の下に県に於て移住労働者訓練要綱を定め之を各雇傭主をして実施せしめ関係警察署長(矯風会長)は雇傭主の監督指導斡旋の任に当り訓練の完璧を期しつゝあり。

 諸事項を摘記すれば

一、渡来就業後三ケ月は合宿所に収容し規定の訓練を実施すること。

二、訓練は雇傭主に於て行ひ之に要する費用は総て雇傭主の負担とす。

三、移住労働者五十名につき一名の専任指導員を置き合宿所職場を通し一貫したる監督指導を行はしむること。

四、専任指導員は朝鮮語を解し或は朝鮮人に理解を有するものを以て之に充つ。

五、訓練は専任指導員労務関係現場係又は青年学校職員をして当らしむるを原則とす。

六、訓練は休日を除き毎日二時間以上実施すること。

七、訓育事項

 国語

 国語簡単なる算術

 簡単なる国民道徳

 国体観念の養成

 時局認識の徹底

 内地生活への融合

 簡単なる団体教練

 作業上必要なる事項

以上の@@@@@@許可の条件として指示してゐる@各雇傭主は合宿所の設備を為すと共にその一部に教育設備を施し訓練所を開設してゐる次第である、この労働訓練所の具体的内容は各事業場の特殊事情を参酌し最も効果的訓練方法を執つてゐる関係上炭山に依り多少趣を異にするも各教授要目時間割担当教師を定めてゐるその二三の事例を示せば次の通りである。

 訓練要綱(早良鉱業姪浜炭坑)

  一 一般教育方針

   (イ)国民としての教育

     時局認識と国民としての自覚を促す

   (ロ)産業人としての教育

     国家重要産業に協力する産業戦士たることの養成

   (ハ)指導態度

     鉱業所のみの利害関係に囚はれず内鮮一体の具現化に目標を置き常に愛と熱とを以て懇切丁寧に気永に指導すること

  二 学科指導要綱

   (イ)国語教育の目標

   (ロ)皇国臣民たる性格の涵養

   (ハ)@@の@@

   (ニ)@@なる@

   (ホ)団体生活の@

   (ヘ)国語と生活との一体

   (ト)具体的直観的指導

  三 作業上の補導要綱

    国家重要産業に従事する産業戦士たることの意識並に内地人との協同作業に於ける国有林理解融和を図る様指導す。

   (イ)炭車ツルの使用法

   (ロ)炭車運搬法

   (ハ)石炭積込練習

   (ニ)鑿孔助手としての訓練

   (ホ)カツター採炭の訓練

   (ヘ)坑内用品切端準備の訓練

   (ト)発破警戒の訓練

   (チ)保安に関する訓練

四 団体訓練

 (イ)服装の整正

 (ロ)整列の整然

 (ハ)敬礼

 (ニ)動作

 (ホ)不動の姿勢

 (ヘ)速歩行進

 (ト)整頓

 (チ)軍歌

五 日常生活に於ける訓練要目

 (一)国体観念の養成

 (イ)皇室尊崇の観念養成

 (ロ)敬神崇祖の観念の養成

  一、就業前整列したるときの宮城遥拝

   一、皇室に関する絵画写真の尊重談話に於ける言語動作の注意

   一、奉安殿神社仏閣の礼拝

   一、毎日曜日山神社慰魂碑の清掃実施

 (ハ)内地生活同化に必要なる訓練

   一、礼儀規律の尊重

   一、時間尊重観念の養成

   一、風俗習慣其の他衣食住の改善

2、訓練用教科書(例)

   一、国語読本(下級学年用)

   一、愛国青年読本東京目黒書店編輯

   一、炭鉱読本  筑豊鉱業会発行

   一、協和読本  大阪府協和会発行

   一、産業報国新聞 産業報国連盟発行

3、時間割(明治鉱業高田炭坑)

曜日/時間

自午後一時(自午後六時)

至午後二時(至午後七時)

自午後二時(自午後七時)

至午後三時(至午後八時)

作業知識

国語

講話

国語

修身公民

国語

算術

午前中ハ青年学校教練ノ見学午後団体教練

 

 備考 其他課外講話を為し尚毎日就業前三十分間ラヂオ体操及建国体操を実施す

4、担任教師

  各訓練所鉱業所長労務及現場係職員直営青年学校職員私立小学校職員専任指導員其の他矯風会役員

 

     六、訓練の成績と爾後の教養

 移住労働者渡来当時の教育程度国語解否の状況を見るに、

  教育程度

   中学卒業程度        〇・〇五%

   小学卒業程度        八・九五%

   同 中途退学       一三・〇〇%

   文盲者          七八・〇〇%

  国語解否の程度

   解するもの         一三・二%

   幾分解するもの       一四・三%

   全然解せざるもの      七二・五%

にして其の実情は容易に想像せらるゝ処なるが之等を渡来後三ケ月間前記の如き訓練を施したる結果其の成績を検討するに次の如し。

 1、国語解否の程度

  国語は学科訓練中最も希望する処にして従つて頗る熱心に授業を受け上達も見るべきものあり

  一、作業用語を会得したるもの      八〇%

  一、日常用語を解するに至りたるもの   五〇%

  一、片仮名を解するに至りたるもの    七〇%

にして多大の効果を収めたり

 2、算術解否の程度

 半島人は一般に計算的観念に乏しき為これが理解は容易ならざるが稼働賃金計算の必要上@@の上達を見たる模様にて

  一、賃金勘定書を解するもの

  一、百以下の加減を会得したるもの

  一、九々を会得したるもの

程度なり

 3、国民道徳

 内地の風俗習慣などに相当の理解を持ち得る程度にて相当の効果認めらる。

 4、国体観念把握の程度

 国体の優越尊皇精神皇室の御仁慈等につき教養訓練するも教育程度低き為容易に趣旨の徹底を期し得ざるも宮城遥拝国旗に対する敬礼等形よりの理解は相当の効果認められ又皇大神宮遥拝其他神社参拝は相当の徹底を見たり。

 5、時局認識

 一般的に世界情勢国内情勢に対する関心薄き為容易に理解せざるも今次聖戦の意義と銃後国民特に移住労働者の産業戦士たるの使命に就ては指導係員の熱意ある訓育に依り青年層にありては充分理解したるが如きも年輩者間には功利的観念に捉はれ理解充分ならざるが如し。

 6、内地生活への融合

 合宿所経営に際しては衣食住共内地生活への融合を目標として指導する為当初は相当の不利不便を感じ居たるが如きも日時の経過と共に相当慣れ近隣の内地人とも些したる経緯あるを認めず従来内鮮人差別原因の一たる大蒜の廃止は一般に好感を以て迎へられつゝあり。

 7、簡単なる団体訓練

 由来半島人は其の動作鈍重にして団体教練は最も困難を感じたるものなるが合宿所に於ける規律生活と共に団体訓練の結果起居動作著しく革められ一部を除く外は著しく規律化し団体旅行等の動作にも何等支障を生せざる程度に至れり。

 8、作業上の訓練

 作業上の用語知識技術等急速に進歩し三ケ月にして熟練坑夫に近き能率を挙げ得るに至り災害防止の知識は当初の幼稚なるに比し長足の進歩を為したりと言ひ得べし

 以上訓練の成績を総合するに既住半島人の動態に比して著しき業質の向上を来し既住半島人は勿論内地人に対しても相当刺戟を与へ好影響を齎したるものあるを認めらるゝが三ケ月の訓練終了後希望者は家族を呼寄せ一戸を構へて散宿する事となるを以て終了者と雖も訓練期間中の成果を確保し将来の向上啓発を図る為には渡来家族を含めて雇傭主より適時訓練を施すと共に協和事業団体矯風会独自の指導を強化し徹底するの必要を痛感せらるゝのである。

 

    七、結語

 移住労働者の訓練は戦時下に於ける各種事情より国家的大局的要求により実施せらるべきものになるを以て中には移住者として相当の精神的負担となり為に実施上深甚の考慮を払ふにあらざれば却つて逆効果を来すやも難計いのである。即ち一日の業務終了後極度の疲労をも顧みず恰も軍隊に於けるが如き厳格なる教練を強行するが如き或は職場その他一般処遇方法と全く遊離したる形式的教壇教育を施すが如きは殆んど効果挙がらざると共に却つて不平反感の原因となり又内地生活への同化を急ぐの余り長年に亘る半島の風俗習慣等を無視し衣食住言語娯楽等に多大の不利不便を与へる事は当該事業場に対する親みを失はしめその通癖たる移動性を助長し多数逃亡者を出すが如きことありては所期の目的達成上支障を生ずる事自明の理である。専任指導員其の他指導訓練に当る職員は訓練時間等を利用して座談会懇談会を屡々開催し移住労働者と常に適当なる意見の交換を遂げ訓練のみならず一般問題に関しても傾聴し若し誤れる認識を持つものあらば親切叮嚀に反復説示して之れを是正徹底せしめ飽迄移住者の自覚の上に立脚したる移住労働者の特性に順応したる訓練方策を実施すべきである。

 斯くて一時の苦痛も将来の希望により氷解し一定の事業場に安 して皇国臣民としての修養を積みつゝ産業戦士として業務を楽しみ一意専心報効の誠を致さしむる様指導育成することが吾人に与へられたる責務である。

                                              終 り

 

 

募集半島人労働者訓練強化週間

    北海道協和会

 北海道協和会に於いては、今次労務動員計画の実施に伴ふ募集半島人に対する訓練を一層強調徹底せしめ、以て募集の目的達成に勗しむべき計画の下に、今般訓練強化週間を設定し、関係協和会(募集半島人を収容する砿鉱山土建事業主を管轄する警察署管下の協和会にして各府県の支会に当るもの)主催により実施する事となつた。其の内容については他府県の参考ともなる点多かるべきに鑑み、左に実施要綱の大略を示す事とする。

 

    募集半島人労務者訓練強化週間実施要綱

一、趣旨

労務動員計画ノ実施ニ伴フ募集半島人ニ対スル訓練ノ強化徹底ハ募集半島人ヲシテ其ノ目的タル時局産業部面ニ定着セシメ真ニ産業戦士トシテ報効ノ誠ヲ効サシムルハ刻下喫緊ノ要務タルニ鑑ミ茲ニ募集半島人労務者訓練強化週間ヲ設ケ以テ一視同仁ノ聖旨ヲ奉体シ関係者協力ノ上協和事業ノ円滑ナル進展ヲ期セントス

二、主眼事項

本週間ノ実施ハ半島人労務者ヲ対象トシ所定ノ訓練終了者ニ対スル再訓練並ニ訓練期間中ノ者ニ対シ之ガ強化徹底ヲ図リ以テ真ニ産業戦士タル矜持ヲ保持セシメ本事業ノ円満遂行ヲ期セントス

三、期間

 自昭和十五年五月十日  一週間

 至昭和十五年五月十六日

四、主催

 関係協和会

五、実施要項

本週間ノ実施ニ関シテハ左記各項ヲ斟酌シテ各地方ノ実情ニ即シタル実施計画ヲ樹立シ以テ実践上遺憾ナキヲ期スルコト

猶本週間実施ヲ契機トシテ今後永続的ニ協和事業ノ全般ニ亘リ之ガ完璧ヲ期スルコト

 (一)本週間ノ趣旨ノ徹底

週間第一日ニ当リ募集半島人労務者ニ対シテ本施設行事ノ徹底ヲ期スル為左ノ訓話ヲ行フコト

1 時局下ノ国民トシテ滅私奉公産業報国ノ精神ノ涵養

2 産業戦士タル使命ヲ自覚スル美風ノ養成

3 遵法、報効、報恩ノ観念ノ涵養

 (二)当該事業趣旨ノ普及宣伝

1 半島人ヲ対象トスルモノ

講演、講話、紙芝居、映画等適宜選択実施スルコト

2 内地人ヲ対象トスルモノ

前項ニ準ジテ行フ外劇場映画館等ニ於テノ幕合ヲ利用シ本週間ノ趣旨ノ徹底ニ努ムルコト

3 其ノ他地方ノ実情ニ応ジタル普及宣伝ノ方法ヲ講ズルコト

 (三)国体観念ノ養成

1 国体観念ノ養成

2 忠君愛国ノ理解

3 敬神崇祖ノ念ヲ養成

4 宮城遥拝神宮遥拝ノ訓練

5 神社、忠魂碑参拝ノ指導

6 神棚設置ノ理解並ニ実践

7 国旗掲揚、国歌斉唱ノ訓練

8 銃後諸活動ヘノ積極的参加

9 皇国臣民ノ誓詞ノ朗読

 (四)生活改善ノ強化徹底

本問題ハ内鮮協和計画ニ@@@@@@@@@シテ協和事業成績ノ向上ニ伴ヒ幾多ノ問題ヲ派生シ而モ之ガ取扱ニ関シテハ慎重ナル考慮ヲ要スルモノ尠ナカラザルニ鑑ミ左記事項留意ノ上之ガ強化徹底ヲ図ルコト

1 日常挨拶ノ訓練

2 隣保相扶観念ノ徹底

3 服装改善、礼儀作法ノ指導

4 宗教観念ノ扶植

5 勤労ノ美風ノ扶植

6 貯蓄ノ奨励

7 冠婚葬祭ノ内地化ノ徹底

8 節酒

9 賭博根絶

10 迷信ニ基ク諸行事ノ禁止

11 諸会合ノ無断欠席ノ禁止

12 時間励行

13 国語使用ノ励行

14 住宅ノ無断改造ノ禁止

 (五)教育奨励ニ関スル事項

1 国語

日常生活ニ必要ノ卑近ナル言語、会話ヲ授ケ進ンデハ片仮名平仮名ヲ授クルコト

   2 修身

国民道徳、国体観念ノ養成、時局ニ対スル認識ヲ指導スルコト

   3 算術

日常生活ニ必ナル計算ヲ習得セシムルコト(加減ヲ主トシ進ンデハ乗除ヲ授ケ応用問題ヲモ合セ授ク)

   4 体操

簡単ナル普通体操ヨリ進ンデハ教練ヲ授ケ且ツ団体的訓練ヲ為スコト

   5 労務

労務上必要ナル事項ニ付指導訓練ヲ為スコト

 (六)公共道徳ノ涵養

社会ノ安寧秩序ヲ維持シ共同ノ福利ヲ増進シテ真ニ共存共栄ノ実ヲ挙ゲシメンニハ各人ガ個々ノ要求ヲ節制シ気侭ナル行動ヲ戒ムルニアリト信ゼラル

依ツテ社会ノ安寧秩序ガ維持セラル事ニヨツテ各人ノ安居楽業生存ノ目的ヲ達シ得ル所以ヲ理解セシムルコト

 (七)衛生思想普及徹底

   1 衛生思想ノ普及

   2 伝染病予防思想ノ普及

   3 住居内外ノ清掃訓練

   4 各種予防注射ノ徹底

   5 日光消毒ノ励行

   6 駆蝿駆鼠ノ奨励

   7 入浴ノ励行

   8 汚服着用禁止

   9 洗面所、洗濯所、浴場、便所等ノ清潔

   10 身体清潔

 (八)情操ノ陶冶

半島人ノ多クハ感受性ニ乏シク半面興奮性附和雷同性ニ富ム傾向アルヲ以テ之ガ教化上左記事項ヲ実施スルコト

   1 読書指導

   2 趣味娯楽ノ改善指導

   3 植木草花等ノ備付及栽培指導

   4 動植物愛護思想ノ涵養

   5 修養映画会ノ開催並ニ観覧ノ指導

   6 内地習俗ノ普及

   7 趣味ノ向上ニ関スル調査研究

 (九)優良人物ノ表彰

主催協和会又ハ事業主ニ於テ左記優良者ノ表彰ヲ行フコト

   1 所定ノ訓練ヲ修メ稼働成績及人物優秀ナル者

   2 所定ノ訓練ヲ修メ協和事業ノ趣旨ニ徹シ中堅幹部トスルニ足ル者

 (十)研究会、懇談会開催

   1 幹事会、指導員会

週間前各協和会ニ於テ幹事会、指導員会ヲ開催シ週間実施事項細目ニ付協議ヲ遂グルコト

   2 協和会ト事業主ノ懇談会

幹事会指導員会ニ於テ協議セル事項ノ実施方策ニ付懇談ヲ遂グルコト

   3 半島人労務者座談会

幹事及指導員ヲ加ヘタル半島人労務者ノ座談会ヲ開催シ、半島人ノ思想ノ動向ヲ察知スルト共ニ思想ノ善導ヲ為スコト

 (十一)修養会慰安会ノ開催

   1 修養会開催

   2 慰安会開催

   3 素人演芸会開催

(六)北海道協和会ニ於ケル実施事項

   1 助成金交付

本週間実施ニ要シタル経費ニ対シ助成金若干ヲ交付ス

(詳細別途通牒)

   1 ポスター配付

半島人合宿所内或ハ常時集合スル場所ニ掲示スル協和事業趣旨普及ノポスターヲ配付ス

(週間前ニ配付ス)

   3 協和事業指導者講習会開催(詳細別途通牒)

   4 映画班派遣

   5 事業主懇談会