朝鮮人労働者内地移住に関する方針

分類コード:I-02-01-005

発表年:1939年

 

1939(昭和14)年8月、内地に動員される朝鮮人労務者の募集は、先月に決定された昭和十四年度労務動員実施計画に示された産業・員数に限ること、募集に際しては警察署長の認定を受けること、内地人労務者と同様にできるだけ差別なく取り扱うことなどを指示している。

著作者:
朝鮮総督府
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二、朝鮮人労働者内地移住問題

 本問題に関しては予てより本府と内地関係各省との間に種々折衝中なりしが、今般左記の通方針の決定を見、更に本方針実施に伴う鮮内募集並渡航取扱要綱(左記)を定められ、夫々各道に詳細通牒せられたり。

(一) 朝鮮人労働者内地移住に関する方針(内地朝鮮共通)

一、募集により内地に移住せしむべき朝鮮人労働者の数は、毎年度労務動員計画に示さるゝ数を限度とすること。

二、朝鮮人労働者の内地移住に付ては、所謂縁故雇入に依る移住の該当分の内募集雇入に依り移住を認むること。

三、募集に依る移住朝鮮人労働者は思想堅実、身元確実、身体強健にして、成るべく国語を解し所轄警察署長に於て内地渡航支障なしと認定したる者に限ること。

四、移住朝鮮人労働者の募集主は、乗船地所轄警察署長に朝鮮総督府令労働者募集取締規則に依る応募者名簿を提示し、渡航の査証を受くること。

五、募集に依る移住朝鮮人労働者は、総て之を時局産業(労務動員実施計画に依る産業を謂ふ)に従事せしむること。

六、募集による移住朝鮮人労働者は、産業の種類及性質により無期限移住者と期限附移住者との二種とすること。

七、朝鮮人労働者の処置に付ては、出来得る限り内地人労働者とに間に、差別なからしむると共に、其の福利施設に付ても十分考慮すること。

八、事業の縮小または中止終了等の場合に於ける朝鮮人労働者の措置に付ては、極力内地に於て之が転職の斡旋其の他適当なる対策を講ずると共に、内地人同様帰郷、海外への移住等を奨励すること。

九、所謂縁故雇入に依る労働者の内地移住の取扱は従来通りとすること。

十、本要綱実施の為必要に応じ、内鮮労務調整協議会を設置すること。

 

 

 

(二) 朝鮮人労働者募集並渡航取扱要綱 (朝鮮側)

第一 募集

一、朝鮮人労働者内地移住方針同募集要綱に基く朝鮮人労働者の鮮内募集は、全て大正七年一月府令第六号による労働者募集取締規則に基き事前に総督又は道知事の許可を要するものとす。

二、募集取扱に就ては内地に於ける労務動員の緊急性に鑑み、成るべく迅速に之を取扱ふの要あるに付、左記に依ること。

(一) 同規則第一条に基く所定の願書は、規則第十条に依る所轄警察署長経由の規定に拘らず、直接募集地所轄道知事(募集区域二道以上に跨るときは主なる道知事)に正副五通を提出せしむること。

(二) 道にありては前記願書を受理し、募集区域其の道内に限る場合は願書副本二通を、募集区域二道以上に跨るときは願書正副三通を受理と同時に直ちに本府に提出すること。

三、内地庁府県の募集雇人に関する承認は、庁府県より直接本府に通報ある筈に付、本府及道にありては左記に依り取扱ふことゝす。

(一) 募集区域二道以上に跨るものに就ては、前記二の(二)に依り、道は願書を本府に提出後可成速かに許否に関する意見を追報(願書副本一通を更に添附)し、本府は之が内容を審査し支障なしと認め且内地庁府県より募集雇入を承認する旨の通報ありたるものに付募集許可をなし、其の旨関係道に通牒するものとす。

(二) 募集区域一道内に限るものに就ては、本府は前記内地庁府県の募集雇入承認の通報を直ちに当該道に移牒すべきを以て、道に在りては之が移牒を俟ち許否意見を附し(願書副本一通を更に添付)本府に経伺すること。

四、募集者並募集従事者に対しては、規則の各取締条項を厳守せしむること。

五、労働者は主として旱害地の(京畿・忠南北・全南北・慶南北)罹災民を差当たり募集せしむること。

六、募集者又は募集従事者は募集したる朝鮮人労働者名簿(本籍・住所・職業・氏名・年齢を記載すること)を募集地所轄警察署長に提出し、同署長に於て『思想堅実・身元確実・身体強健にして成るべく国語を解し内地渡航支障なし』と認定したる者に付渡航せしむること。

七、募集者に於て医師に依る身体検査を希望する向に就ては、募集者の費用を以て公医または適当なる医師を指定し、警察官立会の下に之を実施せしむること。

第二 渡航

一、 渡航に就ては集団的に之を行はしめ、募集者又は責任ある代理者をして之を引率せしめ、場合に依りては更に分隊(又は班)を編成し責任者を定め置くこと。

二、応募者の被扶養家族は訓練期間中(渡航後三箇月)は渡航せしめざること。

三、募集者より渡航出発前規則第五条に依る応募者名簿及応募者の輸送方法を記載したる届書各二通を募集地所轄警察署長に提出せしめ、同署長は応募者を調査し認定者以外の者なきや、又は雇人契約事項が出願の際提出せる契約事書案と一致せるや否や、携帯品中危険物品なきや輸送上支障なきや等に付注意すること。

  支障なきときは前記名簿及届書各一通の末尾に募集地所轄警察署長に於て『右の通り相違なき旨』の奥書査証をなし直ちに乗船地所轄警察署長に送付連絡すること。

四、応募者内地に向け渡航せんとするときは、その出発前渡航後の心得別紙(甲)を募集地所轄警察署長に於て厳重注意し置くこと。

五、募集に依る渡航労働者は個人別渡航紹介状を要せざること。

六、応募者の被扶養家族にして、応募者の訓練期間(渡航後三箇月)経過後内地渡航出願に対しては、別紙様式(乙)に依る被扶養家族渡航紹介状を迅速に発給し渡航せしむること。

  右の場合は内地への扶養能力の照会を要せず

七、募集者応募者を内地に向け渡航せしめんとするときは、輸送方法並乗船地名・乗船人員・出発期日・時間を予定し応募者名簿二通及び募集許可写真を添付し、出発期日三日前までに乗船地所轄警察署長に届出をなさしむること。

  乗船地又は出発期日・時間を変更したるとき亦同じ。

八、乗船地所轄警察署長は前項の届出に依り事前に輸送上支障なきや否やを調査し、且渡航に際しては応募者中名簿記載以外の者なきや要警戒人物の混入なきや携帯品中危険物品なきや其の他警察上必要事項を調査し、支障なきときは右名簿中の一通末尾に『右の通り相違なき旨』を奥書査証し、引率責任者に交付し乗船せしむること。

九、募集者中借上船舶に依り応募者を輸送せんとする者は、予め其の船舶に依る輸送方法の詳細を乗船地所轄警察署長に届出しむること。

  乗船地所轄警察署長は、前項の届出に依り輸送に依る支障の有無を事前に充分調査し、支障なきものに付之が輸送を認むること。

第三 通報連絡

労働者の募集及渡航に就ては、鮮内に於ける募集地輸送経過地及乗船地各所轄間と、右各所轄警察署間並に乗船地所轄道及所轄警察署と、内地に於ける下船地、就業地各所轄庁府県及各所轄警察間の連絡を充分ならしむること。