労働者募集取締規則(朝鮮総督府令第6号)1918.2.1 総督府

分類コード:I-01-01-001

 

朝鮮以外の土地で職務に従事させるために朝鮮人を求人募集する際、募集する事業主に対して、募集地の警務部長に提出し許可を受けるべき条項、募集に必要な告知事項、悪質な募集の禁止や違反者への罰則などを規定している。
朝鮮総督府令第6号。1918(大正7)年1月29日付官報第1642号登載、同年2月1日施行。

 

著作者:
朝鮮総督府
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大正7年(1918年)1月29日官報 第1642号

 

朝鮮総督府令第六号

労働者募集取締規則左の通り定む

  大正七年一月二十九日   朝鮮総督 伯爵長谷川好道

   労働者募集取締規則

第一条 朝鮮外に於ける事業に従事する労働者を募集せむとする者は左の各号に掲けたる事項を記載したる願書に雇入契約書案を添附し募集地警務部長に願出て許可を受くへし

 一 本籍、住所、職業、氏名及生年月日、法人に在りては名称、業務、主たる事業所所在地、代表者の住所、氏名

 二 労働者の従事すへき事業の種類及場所

 三 男女及労務特別募集人員

 四 募集すへき労働者の年齢の範囲

 五 募集区域及期間

 第二号乃至第五号の事項及雇入契約の乗降を変更せむとするときは亦前項に同し

 募集出願人又は代理人にして朝鮮内に住所を有せさる者は朝鮮内に仮住所を定め警務部長に之を届出つへし之を変更したるとき亦同し

第二条 前条の雇入契約書案には左の事項を記載すへし

 一 労務の種類

 二 雇傭期間

 三 就業時間及休養の方法

 四 賃金及其の支給方法

 五 貯金の方法

 六 労務に関する奨励方法

 七 収容設備

 八 賄料、入浴料、寝具其の他日常生活に要する費用の負担方法

 九 往復旅費の負担方法

 十 傷痍、疾病の場合に於ける医療及其の費用の負担方法

 十一 傷痍、疾病者休業中に於ける賃金及其の支給方法

 十二 傷痍、疾病の為不具と為り又は死亡せし場合に於ける扶助料、慰籍金、弔慰金等及其の支給方法

 十三 傷痍、疾病又は死亡に因り父兄其の他の者の往復に要する旅費の負担方法

第三条 募集者募集従事者を使用せむとするときは願書に其の本籍、住所、職業、氏名、生年月日を記載し警務部長に願出て許可を受くへし

 募集者募集従事者を使用するときは許可証を携帯せしむへし 

第四条 募集者は左の各号を遵守すへし

 一 事実を隠蔽し又は誇大若は虚偽の言動を用ゐて募集を為ささること

 二 十四年未満の者を募集せさること

 三 父母又は之に代はるへき監督者の承諾書を有せさる二十歳未満の者及夫の承諾書を有せさる婦女を募集せさること

 募集従事者は事実を隠蔽し又は誇大若は虚偽の言動を用ゐ募集を為すへからす

第五条 募集者は応募者の本籍、住所、氏名、生年月日を記したる応募者名簿を作り募集地出発前警察署長警察署の事務を取扱ふ憲兵分隊、憲兵分遣所の長を含む以下同しに届出つへし

 前項の場合に於て必要ありと認むるときは警察署長は応募者の民籍謄本若は抄本又は前条第三号の承諾書の提示を命することを得

第六条 募集者応募者は朝鮮外に向け渡航せしめむとするときは乗船地名及出発期日を予定し応募者名簿及募集許可証写を添附し出発三日目乗船地警察署長に届出つへし乗船地又は出発期日を変更したるとき亦同し

 前項の届出を為したる後応募者名簿に記載したる事項に異動を生したるときは出発当日迄に其の旨届出つへし

第七条 募集区域二以上の道に跨るときは第一条又は第三条の願出又は届出は警務総長に之を為すへし

第八条 募集者法令に違反し又は公益上必要ありと認むるときは警務総長又は警務部長は第一条又は第三条の許可を取消すことを得

第九条 警察署長必要ありと認むるとき第一条又は第三条の許可を受けたる者に対し一時募集を差止め其の他募集の取締に関し必要なる命令を為すことを得

第十条 本令の規定に依り警務総長又は警務部長に提出する書類は住所地又は仮住所地を管轄する警察署長を経由すへし

第十一号 左の各号の一に該当する者は二百円以下の罰金又は科料に処す

 一 許可を受けすして自己又は他人の為募集を為したるとき

 二 第三条の許可を受けさる者を募集に従事せしめたるとき

 三 第三条第二項又は第四条に違反したるとき

 四 第五条第一項又は第六条の届出を怠り又は虚偽の届出を為したるとき

 五 第五条第二項及第九条の規定に依る命令に違反したるとき 

第十二条 募集者は募集従事者か其の募集に関し本令又は本令の規定に依る命令に違反したるときは自己の指揮に出てさるのゆえを以て処罰を免るることを得す

第十三条 募集者法人なる場合に於て法人の代表者本令に違反したるときは本令に規定したる罰則は之を法人に適用す

 法人を罰すへき場合に於ては法人の代表者を以て被告人とす

第十四条 本令は移民保護法に依る移民取扱人には之を適用せす

 

   附則

本令は大正七年二月一日より之を施行す

本令施行前募集の認可を受けたる者は本令に依り許可を受けたるものと看做す